たいこどんどん

井上ひさし脚本、蜷川幸雄演出の「たいこどんどん」というお芝居を観に「Bunkamura シアターコクーン」
へ行ってきました。


中村橋之助＆古田新太、鈴木京香はじめとする豪華な顔ぶれ。
上演時間は休憩15分を入れて約3時間40分でちょっと長めのお芝居。


緞帳が歌舞伎風。提灯もイイ感じ。
「たいこどんどん」と書かれた電光掲示板に劇中に歌われる歌詞が出て、ちょっとオペラみたいな感じ？


ストーリーは、時は幕末。日本橋は駿河丁越後呉服店前の七つ時。
太鼓もちの桃八が江戸で屈指の薬種問屋鰯屋の跡取息子、若旦那の清之助と待ち合わせをしている。
折からの雷雨。
人々が越後屋の貸し出す番傘をさして行きかう中、蝙蝠傘をさした清之助が現れる。

二人で目指すのは若旦那ぞっこんの女郎・袖ヶ浦がいる品川小菱屋。
そこで出会った薩摩侍と袖ヶ浦がもとで一悶着。二人は海にどぼん
そして二人は漂流するはめに。
拾ってくれた船は秋田へ戻る途中。

二人は江戸に帰ることは出来ず、そのまま途中の釜石の港で下船。
そしてそこから東北、北陸を転々としながら江戸に戻るまで9年にわたる
とんだ苦の道、道の苦の旅をすることに。


薬種問屋の跡取り若旦那「清之助」役は中村橋之助。


悪い人じゃないけど、苦労知らずの世間知らずで、のんびり悠長な薬種問屋のボンボンな感じが
とても似合ってました。
ちょっと甲高い声と身のこなしで現代言葉のとてもわかりやすい歌舞伎を見てるような気分に。


それにお供する「桃八」が古田新太。


古田新太さんは何度か舞台で観ているけれど、テレビで見るより圧倒的に存在感があるし
声の通りが綺麗で、とてもイイ男に見える
その彼がやった桃八は、若旦那はじめいろんな人に騙されたり、イヤな思いもするのに、その人達を
恨みきれない人のいい人間。

「袖ヶ浦」を始め数役を演じたのが鈴木京香。


美しい！着物が似合うし、東北訛りも可愛いかった。
下品なことを言ったりやったりしても全然そう見えない･･･。
やっぱり「美」は最強の武器


とにかく、台詞量が膨大なお芝居でした。
そしてダジャレや韻を踏んだ言いまわしが沢山。
更に下ネタ、てんこ盛り・・・・。
（ここで笑っていいのか？と、しばし迷いました。）



そもそも「太鼓もち」って？
大辞泉によると、
・宴席に出て客の遊びに興を添えることを職業とする男性。男芸者。
・人にへつらって気に入られようとするもの。

このお芝居の中の「太鼓もち」の桃八は、確かに一見軽いし、年中若旦那に向かって
「よっ、色男、日本一！」
と、ヨイショな言動を連発。

でも若旦那に裏切られて散々苦労しても、会えばすぐに許してしまう。
どこまでも尽くす彼に、調子のいい太鼓持ちというより一途な気持ちにジーンとしました。
とにかく二人は大好きな江戸に戻りたい気持ちを強く持って、過酷な旅を続ける訳です。


物語のラスト、9年後に二人が江戸に戻ると江戸は無くなり東京に。
将軍様もいなくなり、自分の家も家族も無くなっている。
泣きごとを言って弱音を吐く若旦那を叱り飛ばしたのは、桃八でした。

どんな風に社会が激変しても根本的なところで何も変わらないものがある。
変わらないのは、その土地が好きでそこに暮らし生きようとする人の気持ち、心意気みたいなものかも？
と、そんなことを感じたお芝居でした。

話が東北に及んだこともあり、東北人の強さや暖かさも感じ、震災のことも思いながら観たので
色々と感じることがありました。


ちょっとパリから・・・
先日ブログに書いたオルセー美術館のマネ展ですが、好評につき7月17日まで延長することになったそうです。