
蝙蝠の安さん☆歌舞伎 でチャップリン
今年最後の歌舞伎観劇は、国立劇場。
演目は、「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」と「蝙蝠の安さん」。
「盛綱陣屋」(もりつなじんや)は、今年三月歌舞伎でも観劇したので記憶に新しいところ。
同じ演目も役者さんが変われば当然印象も違うので、「○○がやる○○役がいいわねよぇ」と何度繰り返しみても面白いのが歌舞伎。
(関連ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/post-995.html)
そして今回、思いの外楽しく、最後は心をキュッと掴まれジワジワと感動したのが「蝙蝠の安さん」(コウモリのヤスさん)。
チャップリン生誕130年記念に松本幸四郎さんが挑んだ、トーキー映画の名作『街の灯』(City Lights)を原作とした歌舞伎です。
あのチャップリンを歌舞伎に?!と最初はその意外性に驚いたものの、 この作品は昭和6年に初演されていたと知り、更にびっくり。
最近でこそ人気漫画の「ワンピース」や「風の谷ナウシカ」が歌舞伎化されて話題になっているのだと思っていましたが、昭和初期、戦前からそのように国も設定も違う世界のものが歌舞伎にアレンジされていたこと、その開放性、柔軟性に改めて感心。
またこの日は後援会からのご招待観劇だったので筋書きをいただき、真ん中4列目からの鑑賞でエンジョイ。
おやつに買った最中アイスを食べながらざっくり筋書きを読みこむ。
さて、「蝙蝠の安さん」(コウモリのヤスさん)の舞台設定は江戸時代の両国。
原作映画の冒頭シーンの記念碑の除幕式を大仏の開眼供養の場面に、キャバレーを上総屋奥座敷の芸者遊びに、ボクシングは賭け相撲にするなどして原作から忠実に翻案された作品は、違和感なし。
ちなみにチャップリン自身は、「街の灯」の公開直後の世界旅行の際に日本にも立ち寄り、約20日間も滞在したしたそう。
その際に浮世絵や歌舞伎などが好きになり、その後は4回も来日し日本の伝統文化を愛したそうです。
(以下2枚の画像は筋書きより)
ざっくりなあらすじは、
その日暮らしの生活を送る蝙蝠の安さんは、盲目の花売り娘・お花に出会って一目惚れ。
裕福な商人・上総屋新兵衛は、妻に先立たれて絶望し、酒に酔って身投げしようとするのを安さんに止められる。
その出来事で安さんを気に入り、友人として家に迎え入れます。
が、新兵衛には、酔いが醒めると酔っていた時の記憶を失う悪い癖が。
安さんは、お花の目の治療費のために新兵衛からお金をもらうが、成り行きから泥棒と勘違いされてしまい…。
お花は安さんの工面したお金で目が治りますが、安さんは逮捕されてしまいます。
そしてある日、ある時、偶然再会する二人。
でも二人が交わした言葉は…。
原作のラストシーンは「世界で最も悲しい3枚字幕」と呼ばれる感動的ラストシーンと言われていますが、本作の安さんとお花の心と心で交わす心情もジーンと切なく涙を誘いました。
原作は貧しい生活を送る母娘と一方で大富豪が不自由なく暮らす様から格差社会を描いた社会批判、笑いと涙、美しく悲しい愛の物語を盛り込んだチャップリン映画の全ての要素が詰まった最高傑作と言われているそう。それを今回歌舞伎で日本的に感じることができ、私にとってはまた違った歌舞伎の魅力に触れる経験でした。
観劇後、国立劇場の裏から出ると美しい紅葉が。
舞台の紅葉シーンに重なるな〜と思いながら心温まる余韻に浸りながらの帰り道でした。
生きていれば色々なことがあるけれど、辛い中でも、嬉しいこと、ありがたいこと、美しいこともたくさんあると思えた十二月歌舞伎でした。
***おまけのパリ***
最近は寒い季節でも食べるようになってしまったタルト・トロペジェンヌ♡
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