
ドンのお気に入り☆
スマホデトックス!
使わないアプリを削除、電話帳リストの見直し、そして何より撮りだまった画像を整理していたらビフォーコロナの頃に、ムッシュUさんと度々ご一緒したディナー画像がありました。

ムッシュUさんのことを秘かに私は「ドン」と呼んでいます。
今日はそんなドンのお話をご一緒したレストラン料理画像ともに。
(ビタミン大根とイカのカルパッチョ↓)

ドンは、私の父と同い年。
年齢的には高齢者で、おじいちゃんですが、背筋ピン、眼光キラリ、声は大きく、精気に溢れ、食いしん坊で、いつ会っても元気溌剌。
リタイアして悠々自適な毎日でもOKな立場なのでしょうが、現在もご自身の会社のトップに君臨し、東京の家と湘南の家を行き来しながら忙しくアクティブに過ごされています。
(低温調理のアワビ↓)

とにかく親分気質で気前がよく、せこい話や器が小さい人は大嫌い(っぽい)。
ドンは現在シングルですが、もちろんガールフレンドは複数おります。
男やもめとは思えぬオシャレさんで、プライベートでは冬でも(!)アロハシャツにパナマハットが定番スタイル。
(マグロとホタテ↓)

そんなドンとは、共通の友人の紹介で知り合い、当時の私達の東京自宅と湘南の家の双方がドンの家と近く、現在も親しくさせていただいてます。
ドンから見たら私達は甥っ子、娘夫婦のような感じなのか?!世代は違うのに、いつからか食事のお誘いを受けるようになりました。
料理は和食よりイタリアン、フレンチが好きで、ワインも大好き。
そしてワインは基本的にはレストランには持ち込み。
ドンが「これ!」と言う、その時のお気に入りを持参です。

ご一緒するたびに夫は、
「今回は僕たちにご馳走させてください」
と何度言ってもドンは、
「なに言ってるんだ、ここは私だよっ!!」
と、一度も一瞬たりとも引かないドン。
(スモークサーモン↓)

ある時、いつもご馳走していただいてばかりで申し訳なく、なんとかお返ししなくては!と思い、そこで考えたのが、我が家へのお招きディナー。
ワイン好きのドンのために、泡、白、赤と我が家で用意できる最高最上級のもので「おもてなしワイン会」を催そう!となりました。
(サルシッチャ&サラダ↓)

当日ガールフレンドとやってきたドンの両手には重そうな紙袋がたくさん。
チーズとワインを持ってきたよ〜♬と。
ワインはお土産として受け取り、その夜は、あくまで我が家で用意したものを開けるつもりでいたのですが、テーブルにつくやいなや、
D「奥さん、とりあえずこのワイン開けて」
K「シャンパン冷えてますから、まずは泡で」
D「ダメダメ、これにして」
受け取ったワインは、パイナップルワイン。
あ…確かドンは毎年夏はハワイの別荘で過ごし、友人と共同管理しているヨットでセーリング&フィッシング三昧を楽しんでいるのでした。
そんなハワイお土産ワイン。

K「デザートワイン的に、いただいたチーズと合いそうですね。食後にチーズと一緒でどうですか?」
D「なに言ってるのー。チーズは最初、今から食べるから全部並べて。今朝伊勢丹行って買ってきたんだ。売り場のばーさん(ドンより年下だと思うけど)が色々薦めてきてさー、全部買っちゃったよ」
そのチーズ量、ハンパなし。
ひと口ずつでも食べたら結構な食べ応え。
やばい。このままでは我が家のおもてなしプランが崩壊する…。
夫に「ヘルプ!」なアイコンタクト。
夫「フランスだとチーズは食後にデザートがわりにいただくことも多いんですよー。今日は大したデザートは用意していないので、食後にチーズを楽しみましょう」
D「いや、チーズは最初だよ」
さすがです、ドンは引きません。
言われるままに、白カビ、青カビ、ハード、フレッシュ、ウォッシュと各種チーズを大皿に盛り付け、パイナップルワインで乾杯。
(サマートリュフが香るフォアグラソテーに枝豆フリット載せはヤバく美味しかった↓)

甘っ!
いきなりこの甘さは、ちょっと辛いかも…。
なんとかしろ、夫!と再びアイコンタクト。
夫「予定していたおつまみはなし、チーズとパイナップルワインでアペロに」
K「コピー…」(了)
と、小声でやり取りしていると、、
D「お、これを忘れるところだった。奥さんっ、これもチーズと一緒に」
ドサっと渡されたのは、バゲット、カンパーニュ、ナッツ&ドライフルーツ入りなどのパン色々。
D「チーズを載せて食べよう!」
K「どれも美味しそうなパンですね〜。でも最初にたくさんパンを食べちゃうとお腹いっぱいなりますよ。簡単なものばかりですが今日はお料理もちょこちょこ用意しているので…」
D「俺の好きなパン屋のものなんだけど、最近人気で予約しないと買えねーの。全く面倒くさい世の中だ」
・・・。ドン、私の話聞いてない。。
前菜は、パリソワスープと鯛のカルパッチョでしたが、続く料理も考慮して量は用意していたものの半分量に。そして、
夫「ドン、これにはちょっといい感じのブルゴーニュの白を用意しました」
と言った瞬間、ドンが袋の中から
「はい、次はこれ」と。
え、、、それはまたパイナップルワイン。
ただよくよく見ると最初のものよりやや色が濃いめ?
もしかしてもっと甘いの???
K「いやいや、ドン!そのワインは後で楽しませていただきますが、今日は日頃のお返しをしたく、うちのワインを楽しんでいただきたいんですけど~」
D「奥さん、そんな気を遣わなくていいから。ご主人、これ早く開けて」
K(開けるな、夫!!)(アイコンタクト)
D「俺が開けよう」
スポッ。
予想通り更に甘いパイナップルワインでした。
前菜の後、ウニのカッペリーニを出し、メイン料理は和牛ステーキ。
(海老しんじょうを添えたブイヤベース↓)

ドンは、お肉好き。
夫「メインはお肉なんで、ここはグラス1杯だけでも赤ワイン合わせの方がいいかと。ボルドーの飲み頃を用意したので、まずドンがテイスティングを」
D「もったいないよ。そんないいワインは二人で楽しみなさい」
K(って、、まさか…)
ごそごそ。
ドンは3本目のワインを袋から取り出しました。
それがまさかのまたまた(!)なパイナップルワイン…!
しかもオレンジがかって最初の2本とはまた違う。
K「ドン!お肉には赤でいきましょう!」
夫「このボルドーはドンと楽しみたいと思っていたんです!」
K「飲み頃です!!」
夫「是非!」
間髪いれず畳み掛けるように言葉が続く中で、夫とは伊達に夫婦やってねーなと思えた瞬間。
なのに、、、

D「俺のワインでいいよ、グラス変えるの面倒でしょ。洗い物も増えるしさ」
K「全然大丈夫です。グラスなんていくらでもありますから!!」
D「いいって、これで♬」
スポッ。
開けられてしまった…。
もう完全にワインおもてなしプラン崩壊。
パイナップルワインは思った以上にアルコール度数は高めで、気がつけば目がぐるぐる回る気分で酔いが回ってきました。
なんとか最後のコーヒーとチョコレートを出すまで頑張りました。
(葛餅ときな粉アイスのデザート↓)

そろそろおひらきとなった頃、ドンが「これお土産ね」と、最後に紙袋から取りだしたのは、ダメ押し的なパイナップルワイン…。
ドンは、好きになったらしばらくまっしぐら、とことん!な男。
だからこそ非凡なのかもしれませんが、あの日コントのように繰り返し出されたパイナップルワインは、あの時のドンの一番のお気に入りだったのでしょう。
と、このエピソードだけでは、ドンはただ圧の強いオジサンな印象になりますが、ドンは義理人情に厚く、面倒見がよく、ご近所さんたちが信頼を寄せる名士でもあります。
パワフル&アクティブにたくさんの経験を重ねてきた人生だからこそ話題は豊富で、武勇伝チックなお話も面白いのです。
聞けばかなりお坊っちゃま育ちですが、「オレなんてさ〜」とちょっと悪ぶった風に話すところは可愛い。
また、〇〇さんが倒れた、病気だと聞けば、手にたくさんの荷物を持ってお見舞いに行き、友人が長らく身内の介護などをしていると聞けば、気晴らしに!とレストランに連れて行ったり、自宅に招いています。
以前私の家族に不幸があった時も、そのことは随分時間も経ってから少しお話しただけなのに、ものすごく辛そうな顔をして「それは急なことで本当に悲しかったね。気持ちしっかり持ってね!」と言い、数日後に立派な大きな漆の箱に入った、嗅いだこともない素晴らしい香りのお線香が届きました。

ドン自身もお一人なので寂しいところがあるのかもしれませんが、親兄弟や近しい友人に話すと愚痴になったり、角が立つようなことも程よい距離感がある相手だとパーッぶちまけて気分転換になることがあるように思います。
ちょっと話を聞いてもらって、美味しい料理やお酒を飲むだけでリフレッシュできるものだから。
ドンを見ていると、いつか私もおばあちゃんになったらドンのように周りの人と気楽に助け合える良い関係が築けるシニアでありたいと憧れます。
思いやり、義理と人情に溢れたおばあちゃんに…♡
(チョコレートケーキ&ヘーゼルナッツのアイスクリーム↓)

コロナになってからは、なかなかご一緒できず寂しく思っていますが、先日セラーの整理をしていたら、あの日ドンからいただいたパイナップルワインを発見。

という訳で、今夜は炭酸で割ってライム果汁をちょっと絞り、更にココナッツリキュール少々でワインカクテルでアペロに美味しくいただきました。
コロナが収束したらまたドンは、新しく見つけたレストランに連れって行ってくれると仰っているので楽しみにしています。
その頃のドンのお気に入りはなんだろう!?

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パリの1枚。
よく撮る場所ですが、マグリットの絵みたいな瞬間でした。

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