
常設展示室☆
読書の際、ハードカバーで読みたいもの、文庫で読みたいもの、デジタルで読みたいものに分かれるのですが、私の場合エッセイや短編集などは文庫です。
それは電車や待ち合いの隙間時間に読むことが多く(読みやすく)持ち運びが楽だから。
という訳で、積ん読コーナーから最近読んだ短編集が原田マハさんの(またまた原田さん本。積んどいたまま読み忘れていた…)『常設展示室』(新潮文庫)。
ネタバレなあらすじは割愛ですが、ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷、実在する6枚の絵画が物語を彩るアート短編小説集です。
それぞれの絵画は有名作品ということもあり、読んでいてイメージが膨らみやすい!
続く人生を思うとちょっと不安になったり、切なくなったりするお話もありましたが、登場人物たちの人生の側にあるアート作品、それに救われることの大きさを思うと思わず涙腺が緩んだり…でした。
ところで「常設展展示室」と聞いて、自分の中にすぐに思い浮かぶいくつかのパリの美術館のあの作品!というものがありますが、コロナになってから行けていないこと、会えないことが本当に残念。
そんな中で先日のブログでも触れてますが、昨年夏に訪れた神奈川県箱根にある『ポーラ美術館』の常設展が好きな“常設展示室”@日本の美術館に仲間入り。
中でも一番のお気に入りは、アンリ・マティス(Henri Matisse)の「The Lute」(リュート)。
色彩コントラストが印象的なマティスの絵は以前から好きだったのですが、この絵に出会うと、葉っぱやアラベスク模様の壁紙・絨毯が鮮やかで、その中にいる女性のドレスにはアルファベットの「K」に見える模様が☆
そんな一枚からはリュートの音色聞こえてきそうで、なんとも言えぬ眩しい幸福感を感じました。
美術館公式サイトの解説によると、
マティスが本作品を制作したのは、1943年に戦火を逃れて南仏ニースのレジナ・ホテルに滞在していたとき。
1941年に腸の疾患で大手術を受けてから、マティスは技法的に負担の少ない切り紙絵の制作をはじめ、この頃「ジャズ」の連作に着手している。
「私はあるときは色彩だけである種の均衡と表現的なリズムを得ようとし、またあるときはただアラベスクだけの力を確かめようと努めてきました」。マティスはこの時期こう告白している。
目の醒めるような朱色の部屋は、黄色が下塗りされているために光を帯びてみえる。
画面中央には生命力みなぎる紫陽花が君臨し、そのかたわらでリュートを爪弾く女性は、室内に遍在する音楽的なリズムに主旋律を与える伴奏者として、生の喜びを謳い上げているようである。
これからも続く人生において様々な喜怒哀楽な出来事が待っているでしょうが、そこに行けば必ず出会える好きな常設アートがあると思うとなんだか心強い。
きっとその時々で湧く感情があって、作品から語りかけてもらうこと、こちらから語ることがあるだろうな〜と。
これからも好きな常設展示室と好きな作品に出会いたいと思った短編集『常設展示室』でした。
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パリの1枚。
籐椅子の座り心地が懐かしい。
*Belle et Bonne Blogは、気ままに更新中。
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