Comme d'habitude 〜パリ・東京行ったり来たりblog〜

ある馬の物語☆

☆東京ブログ☆

世田谷パブリックシアターで上演中の音楽劇『ある馬の物語を観劇してきました。

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原作は、あの(!)ロシアの文豪トルストイの小説『ホルストメール』。

恥ずかしながら、、私はロシア文学にこれまでほとんど触れることなく大人になってしまいました。

小学生の頃、図書館にあったそれらの本は、暗そうで重そうで寒そう。

どうにも読む気になれず、夏休みの読書感想文などは超適当に済ませました…。

そんな私だったのに「音楽劇・ある馬の物語」観劇後、大きな衝撃を受け、鑑賞後からしばらく思うこと、考えることが続いています。

★【メイン画像】『ある馬の物語』チラシ①_成河s copy.jpg

というのも、鑑賞したこの日はラッキーなことに終演後にロシア文学者で世田谷文学館館長の亀山郁夫先生、世田谷パブリックシアター芸術監督の白井晃さん、主演の成河さんのポストトークを拝聴することができ、3人のお話が面白く、とても興味深く、本作のその奥、本質をもっと考えてみたくなったのです。

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復習をするように公演プログラムを読み返しては、ふむふむ、それだよね〜!そういうこと?と思わず蛍光ペンを引いてしまったり。

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また席も舞台正面2列目という贅沢な席だったので、俳優さんたちの動き、息遣いが手に取るような圧倒的臨場感での鑑賞で、すっかりその世界に引き込まれてしまいました。

舞台そのものが低くく、客席と隔たりがほとんどないことも本作の演出、舞台構成のポイントだそう。

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さて本作は、トルストイの中編小説「ホルストメール」(1886 年刊行)をソ連・ロシアの演出家で劇作家、作曲家、作家のマルク・ゾロフスキー氏が脚色、作曲し、1975年にボリショイドラマ劇場で初演されたものを更に現代的な「白井晃版」としてアップデートした台本での上演。

主人公は馬。

まだら模様に生まれついたばかりに不遇な運命をたどる主役の馬ホルストメール役を成河さん。

(主演の成河さんの他に主なキャストのポスターもインパクト大!)

その馬の中に潜む才能を見出す公爵役・別所哲也さん。

『ある馬の物語』チラシ②_別所哲也s copy.jpg

ホルストメールと対照的な美しさと若さが眩しい牡馬(人間の男性役と2役)を小西遼生さん。

『ある馬の物語』チラシ③_小西遼生s copy.jpg ファムファタールな牝馬(人間の女性役と2役)に音月桂さん。

『ある馬の物語』チラシ④_音月桂s copy.jpg

ストーリー的にはとてもシンプルなので、原作小説もこのお芝居も一瞬サラリを読める、観れる作品のように感じるのですが、その細部が実に深く大事な要素満載。

「私のもの」「自分のもの」という人間の所有欲を客観的に見て、再認識するお芝居でもあるし、人間のエゴを感じるお芝居。

馬の目線を通じて人間の愚かさが垣間見れます。

人間と馬とを対比させ、人間のあくなき所有欲に焦点をあてながら「この世に生を受けて生きる意味とは?」という普遍的なテーマをストイックに問いかけてくる作品。

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舞台は工事現場っぽい足場の組まれた空間。

そこに木管、サックスの音色がとてもよく合い、音楽劇として菅4本の音色が語ることも多かったです。

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ロシア文学に馴染みがなかった私には、ポストトークでの亀山先生の話が興味深く、もっと色々なお話を聴きたい!と前のめり。

亀山先生によると、原作小説の「ホルストメール」は、「歩幅の広い馬」という意味なのですが、実はこの「ホルスト」にはスペルが少し違うものの「独身の」「去勢された」という意味があると。

且つ非常に似た響きの言葉の「フルイスト」という言葉に「鞭」という意味があり、「ホルストメール」とは「鞭打たれる虚勢馬」となり、物語のプロットそのものを体現していると言えるそう。

この話の中でとにかくホルストメール は鞭を打たれるのです。

どれほど苦痛を強いられてもホルストメール は、嘆くこともなく、むしろそこに永遠の愛を夢みるわけで(マゾヒズム的なことではなく)それは支配者と被支配者の絶対的愛の関係。

これがロシアでの支配、被支配の根本原理となっている、と。

その原理、関係はすんなり理解できないと感じる一方で、いや待てよ、ちょっとわかるかも?!と感じる部分も。抗えない権力者の下で、ものすごく痛い辛い経験を耐えているとき、またその後の達成感や充足感、どんな場面であれ自分の能力をいかんなく発揮できていると感じるアドレナリン放出の瞬間、というのが大なり小なりあるのでは…。

亀山先生が語ったイワン雷帝が登場してからの現代に至るまでの絶対的権力を持つ独裁者による歴史はまさに今、ロシアとウクライナの問題にも繋がり、関わるこというお話でした。

その長い歴史で培われたとも言えそうな世界は、西側の人たちになかなか理解できない事情、心情があることを少し知れたように思います。

泥沼化しそうなウクライナ戦争を思うと、このお芝居はすごいタイミングでの問題提起にも思われ、私にとっては大変有意義でした。

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そしてすぐに興味が広がる私としては、子供の頃は近寄れなかったトルストイが急に気になりだした!

彼の言葉の中には、人間はいかに生きるべきか?という問いかけが無数に散りばめれているとか。

この歳になってようやく…な気分ですが、大人の夏休み読書課題として、トルストイ作品に向かい合ってみようと思うのです。

<info>
ある馬の物語 オフィシャルサイト(世田谷パブリックシアター)
 

*****おまけのNY*****

自宅用お土産。

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プレッツエルが一番気に入った♡

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KEICO

新潟県の老舗旅館に生まれ育つ。
上京、進学、就職、まさかの出逢い?で結婚し2004年渡仏。
現在は夫と共にパリ・東京を行ったり来たりな生活中☆
そんな毎日からのグルメ・ファッション・カルチャー・バカンスなどの話題を中心にブログ更新致します。

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