
初めてのバックカントリースキー
例年よりも気温が高めのチュルス村は、私達が到着して以降どんどん雪が重くなってきました。
H「いい雪を求めて明日から車でちょっと遠くに行ってバックカントリースキーしない?」
夫「いいね☆」
と、いつものようにとても過酷なことが、いとも簡単に決められ、翌朝9時前にヘリーはドライバー
さんと迎えにやってきた。
ドライバーさんが「バックカントリーはイイよね〜。好き?」
K「初めてです。」
D「え...大丈夫かな...。ま、ヘリーが一緒なら心配ないか...。」
オイオイオイオイ、ヘリーに誘われて安易にやることにしたけど、ドライバーさんのリアクション
を見ると「バックカントリースキー」ってそんな簡単なことじゃなさそうじゃん(>_<)
どういうこと?!と、最初から不安になったのですが、全くもって簡単じゃありませんでしたッ!!
まず初めて履くスキー。(右側がバックカントリー用、左側が普通のスキー)
ビンディング(スキー靴の締め具)は、「ツアービンディング」と呼ばれ、レバー操作1つで
カカトが浮くようになっていて、上り坂を歩いても膝や足首に負担がかからず歩きやすくなってます。
更に登る際、スキー板の裏に滑り止めのモヘアの「シール」を装着します。留め金で固定して、
粘着面をスキーのソールにピッタリ貼り付けてゆきます。
H「スキーは持ち上げるとしんどいから持ち上げずに前に滑らせること。ストックは体より
後ろめについて体を起こして踵加重で、前傾になると転ぶから気をつけて。じゃ、出発。」
そんな簡単な説明だけで行くんかい...。
車、ゴンドラ、リフトと乗り継いだ後、登山スタート。
しかも目指すはあの山の向こうって...どんだけ登りますのん?
無言で歩くこと1時間弱。
H「ケイコ、あそこまで行って、いい写真が撮れるから♫」
K「あそこって、あそこ?!前も後ろも崖だけど。」
H「大丈夫、スキーは脱いで行けばいいから♫ さー行け!」
K「ヤ...」
H「ポーズ!」
K「ヤーー!怖くてコレしかできましぇーん!」
そして休憩。
昨日へリーがバックカントリースキーはスタミナをかなり使うから途中の休憩で食べる
サンドイッチやバナナ、水は多めに持って来てと言ったので、ホテルの人に相談したところ、
朝食コーナーで自分で作ってもいいし、厨房で用意もできる、と。
という訳で、朝食コーナーで私の好きなカイザーロールを使ってバターたっぷり、ハム&チーズ、
マスタード入りを自分で作りました(^u^)
K「どーぞ、ヘリー」
H「ダンケ」
K「これ、私が作りました。」
H「ふーん。昔さモニカが作ってくれたサンドイッチはすごく美味しくてフルーツやチョコも
あってピクニックセットでとても美味しかった。」
K「・・・。」
私のサンドイッチにはコメント無しで、他の人が作ったサンドイッチを褒めるとはどーゆーこと?!
ムムムよ、ムムム!
ヘリーが下りるコース確認をしている時に、
K「あのさ、ヘリーは私のサンドイッチにご不満みたいだけどハム&チーズは嫌いなのかな?
何気にどんなサンドイッチが好きなのか聞いてくれる。」
夫「了解」
夫「ところでヘリーは、どんなサンドイッチが好きなの?」
H「うん!まずパンは絶対黒いパン。漂白したパン、白い小麦粉のパンはダメ。ライ麦パンがベスト。
バターは苦手。マヨネーズやマスタードも塗らない。具はクセのないチーズとハム。」
私の作ったサンドイッチは小麦粉パンにバターたっぷり、マスタード入り、ヨーロッパ人は
臭いチーズが好きだと思ってダイニングにあった一番臭いチーズ3枚重ね。
ヘリーの嫌いなものてんこ盛り。。
ごめんよ、ヘリー...そうとは知らずに。
それなのにダンケの一言を絞り出し、残さずに全部食べてくれたあなたは優しいオトコ♡
K「ヘリー、明日は黒パンでバターなし、プロセスチーズ&地元ハムで作るから!」
H「フィーレン・ダンク!」
こうして翌日(もバックカントリー !)に作った黒パン、バター無し、ハム&チーズサンド。
ヘリーは、美味しい!と言って食べてくれました。
あ、良かったと思ったのも束の間。
すんごい深い雪の中を分け入ってるんですけど...。
3人一緒だと雪崩チックにもろともに崩れ落ちる危険があるので一人ずつスキー板を外して先に投げ、
最後はヘリーが引っぱり上げる。
しかも途中で一番重い夫が雪にハマりずぶずぶ沈むというハプニング勃発。
そうなのだ、こういう新雪の中を泳ぐようにもがくと体重が重いほど沈んで動けなくなる蟻地獄。
なんとか足場を作って脱出。
ようやく3人で抜け出したところには、誰のスキー跡もなく、あるのはスノーラビットの足跡だけ。
真っ白な世界、真っ白な砂漠。この世界独り占め気分。
スキー板からシールを剥がしてようやく滑れる〜!(^^)!
ここまでの苦労を忘れてしばらくその極上の雪質を楽しく滑りました。
ヤッホー♫♫
が、そんな楽しい時間は短い...。恐ろしい谷間に出くわしました。
振り返ってヘリーは真顔で一言「ノー・プロブレム!」
出たよ、ヘリーのノープロ。
この人、危険なところに来た時ほど声高にノー・プロブレムって言うんだよね。
しかも小声で「ちょっとトリッキーだけどね〜」って言ったの、私には聞こえたぞっ、こら!
立ってるだけで精一杯な斜面なんですけど...。
♫タラタタタ〜、タッタタ、ターラ♫
何?何?私の頭の中に突然流れたきたこのイントロ...?
そして始まった、
Revvin' up your engine listen to her howl and roar
Metal under tension begging you to touch and go
Highway to the Danger Zone♫ Right into the Danger Zone♫
映画「トップガン」の主題歌、ケニー・ロギンスのDanger Zoneよ、デンジャ〜ゾォーン!!
上を見上げれば凍りついた滝。
もうどこをどう見ても、どう考えても、これは今までのスキー人生の中で一等怖い斜面で私の思考は
崩壊。
こんなとこ滑れる?岩ゴロゴロ、枝モリモリ、その合間の半分凍ったような硬い雪の上を
滑るって危険過ぎやしませんか?
良かった、ちゃんと旅行保険に入ってて...そんなことも考えつつ、
ひたすら頭の中でグルグル、グルグル、エンドレスに回り続ける
ハイ ウェイ トゥ ザ デンジャゾーン! ライディン トゥ ザ デンジャゾーン!!が止まらない。
スキーも人生も後戻りはできない。
女はこのコース(オトコ?)と決めたら途中でヘンだな...ヤバイかも...と思っても諦めて進む
しかないのようっ...。
場所を選び、右向き、左向きと方向を変えながら横滑りでズルズル、ガリガリな小一時間...。
こうして無事に下りた時は感無量。
ホテル前に戻ってはじめて緊張感から解放され安堵と脱力。
H「ラブリ〜・ケイコッ♡」
夫「ケーコちゃん、お疲れ〜!」
黙れっ、お前達!!
本当にホントに最後の斜面は怖くて、私がこけたら下にいるヘリーも巻き込むし、どんな気持ちで
横滑ってたかわかるんか、こらっ。
こんなに大変なのにもう3日連続のバックカントリースキー...。
今年のスキーはヘビーだな。
おまけのパリは「Falling in Love」をBelle et Bonneで
⇒ http://belleetbonne.blog.fc2.com/blog-entry-878.html
à demain(^.^)/~~
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