
国芳と国貞☆お江戸ポップカルチャー
只今東京・渋谷、"Bunkamura ザ・ミュージアム"で開催中の
「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 私の国貞」展へ行ってきました。
国芳と言えば、昨年秋にパリのプティ・パレ美術館(Petit Palais, Musée des Beaux-Arts
de la Ville de Paris)で観た「国芳展」も記憶に新しいところ。
そう、この展覧会ですっかり国芳の描くダイナミックな浮世絵が好きになってしまった
のでした♡
その国芳を、しかも兄弟子の国貞と一緒に鑑賞できるということで楽しみに出かけた本展は、
充実の日本美術コレクションで有名なボストン美術館が所蔵する14,000枚を超える
国芳、国貞の浮世絵から厳選された名品をご紹介するというもの。
ボストン美術館開館以来初の大規模な国芳・国貞展で、これらの作品は一度貸出しされると
5年間は公開されなくなるため、本展は大変貴重な機会。
歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」
「浮世絵」は、人々が生きる「浮き世」=「現世の文化や生活」をテーマにした絵画。
幕末に浮世絵界を席巻したのが歌川豊国率いる歌川一門。
中でも歌川国芳と歌川国貞は兄弟弟子として、ライバルとして君臨したツートップ☆
歴史や伝記のヒーローを描き、奇抜なアイディアと大胆なデザインの国芳。
粋でいなせ、彼の描く男気溢れるキャラクターを前に江戸の男たちは、
「お気に入りのメンバー」=「推しメン」の話題で盛り上がったそう。
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」
人気作家が書いた荒唐無稽な冒険物語の世界を描いた国芳。
冒険などそう簡単にできない人々が夢中で読むふけった物語を、視覚で大画面で表現
した迫力の浮世絵は見る人を一瞬で冒険奇譚の中へ引き込んだに違いない...!
歌川国芳「水瓶砕名誉顕図」
「武者絵の国芳」と評判になっただけあって、戦う男を描かせたら国芳の右に出るものなし!
化け物退治、スリリングな死闘場面は躍動感に溢れている。
目ヂカラのある男性を多く描いている国芳ですが、彼自身の顔は、おもいきり平たい
顔族で「ヒラヒラ」と呼ばれていたそう...。
自画像では自分の顔をハッキリ描いたものはほとんどなく、後ろ姿や傘で顔を隠して
描いてます。
歌川国芳 「初雪の戯遊」
更に国芳と言えば愛猫家としても有名(=^・^=)
常に5、6匹の猫を飼っていて仕事中にも懐に1、2匹を抱いていたそうで、自宅には猫用
の仏壇もあっという逸話も。
国芳の描く猫には、可愛らしさと面白さがいっぱい。
歌川国貞「当世三十弐相 よくうれ相」
一方、歌川国貞は美人画、役者絵で一世を風靡した浮世絵師☆
国貞が描く女性は今で喩えると女優、モデル、アイドル、セレブたち。
ファッションやメイク、ヘアスタイルなど世の中の流行を敏感に捉えた絵は、当時の
女子たちの憧れそのもの。
ファッション雑誌を見る感覚で親しまれたそう。
歌川国貞「見立邯鄲」
たくさんの遊女を描いた国貞の浮世絵は、艶かしく、色っぽい表情を浮かべるだけでなく
打ち掛けの柄や装飾品に至るまで緻密に色鮮やかに描き出している。
幕末の吉原で、高級遊女である花魁を揚げて遊べるのは富裕層。
庶民にとっては高嶺の花の彼女たちの花魁道中を人混みの中に垣間見るくらい。
江戸っ子たちはそんな彼女たちを国貞の浮世絵で見ては、「いい女だね〜」と
いっそうの憧れを募らせながら見たのでしょう。
歌川国貞 「御誂三段ぼかし 浮世伊之助」三代目岩井粂三郎、「葉歌乃新」初代河原崎権十郎、「野晒語助」四代目市川小團次、「夢乃市郎兵衛」五代目坂東彦三郎、「紅の甚三」二代目澤村訥升、「提婆乃仁三」初代中村福助
役者絵は現代のブロマイド。
「役者絵の国貞」と評された国貞は、揃いの浴衣を着る各人を、それぞれの特徴を捉えて
描いている。
本展では最後のコーナーのみ撮影可。
その中で私が一番好きだったのは、藍色が美しかった国貞の藍摺遊女の5枚。
「藍摺」とは当時西洋から輸入された化学顔料「ベロ藍(プルシャンブルー)」の濃淡と
ほんの少しの紅などで表現された作品で、色を摺り重ねる技術の発展により、精巧で
豪華な多色刷りの錦絵が誕生したそう。
本当にとても綺麗な藍色でした!
こうして観てくると国貞の作品には風景がほとんどないことにも気づきます。
彼は人物を描くことには優れていたそうですが、風景は得意ではなかったそうです。
なのでその弱点を補うかのように名所絵の名手・歌川広重と組んだ作品を多く残して
いることを知りました。
歌川国貞「見立三十六歌撰之内 在原業平朝臣 清玄」八代目市川團十郎
江戸末期に人気を二分した国芳、国貞の二人を交互に鑑賞するとその違いもハッキリ。
実際この二人はまるで気が合わなかったと伝わっています。
裕福な家庭に生まれた国貞は国芳より11歳年上で入門当初から非凡な筆力は認められ、
すぐにデビューしたちまちヒット連発の売れっ子浮世絵師に。
苦労しながら学び、ようやくデビュー。
それでもしばらく鳴かず飛ばずの苦渋の日々。
ようやく「通俗水滸伝豪傑百八人之一人」の成功でスターダムを駆け上がり、国貞と
肩を並べる存在に。
でもそんな風にのし上がってきた国芳を国貞は煙たがっていたし、逆に国芳は先生
呼ばわりされてご満悦で大御所然としてる国貞とは全く肌が合わねーな、と思っていたそう。
歌川国貞 「大当狂言ノ内 八百屋お七」 五代目岩井半四郎
画風もキャリアも違えば、性格もまるで違っていたという二人。
国芳は礼儀礼譲を好まないチャキチャキな江戸っ子、職人肌の仕事師という感じ
だったのに対して柔和で温順、人柄が良く、常に上品で身なりも良かったと言われる国貞。
そんな二人に共通しているのは、二人の作品はどちらもとっつきやすい面白さがあり、
現代アートに通じる日本のポップカルチャーの先駆者ということ。
ポップな楽しい展覧会でした。
おまけのパリは、「ストライキです...」をBelle et Bonneで☆
⇒ http://belleetbonne.blog.fc2.com/blog-entry-991.html
à demain(^.^)/~~
<info>
Bunkamura ザ・ミュージアム
*「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 私の国貞」展は2016年6月5日まで
東京都渋谷区道玄坂2丁目24−1
03-3477-9252
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