「蜜蜂と遠雷」後のコンサート☆
久しぶりにパリ19区にあるPhilharmonie de Paris(フィルハーモニー・ド・パリ)へ。
3年前このコンサートホールがオープンして以来、素晴らしい演奏を比較的リーズナブルに鑑賞できるとあってパリ滞在中は機会を見つけては出かけるようになりました。
(関連記事→https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/philharmonie-de-paris.html)
この時期はホール横の芝生でピクニックをしている人が多いのですが今日は誰もいない、というか芝生に入れないように柵ができ、その中にいたのは羊たち。
この一角は羊飼育でエコな芝刈りとなったようです。
さて、今回はl'Orchestre National du Capitole de Toulouse(トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団)によるコンサート。
プログラムは4曲。
(演奏後、大拍手の中でハグし合う指揮者Tugan Sokhiev氏とBruno Mantovani氏)
1曲目の“Quasi Lento”は若き作曲家Bruno Mantovani氏がトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の依頼で作曲したもので、本邦初公開。
フワーーっと静かにクラリネットの独奏で始まったその様子は、音色は全然違うのに吹き方というか雰囲気が尺八みたい?!
と感じたせいか、その後に私の頭の中に広がったのは枯山水のような庭。
小さく始まった世界はどんどん広がって大陸的に変化していきました。
曲のイメージは外国人から見える、感じる“ZEN”(禅)という感じかな。
時折、全てがの楽器が短く強くジャン!と鳴らされ、その音は「ここで寝るな!」な目覚まし効果も…。
(今回は正面席。改めて「正面」で聴くと楽器の音色がバランスが良く聴こえて良いものだと実感)
2曲目は、セルゲイ・プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」。
プロコフィエフ作品中でも最も有名で人気作品と言われるものですが、私の中では「マサル」がコンクールで弾いた曲だ!!
マサルとは小説「蜜蜂と遠雷(恩田陸 著)」に登場するピアニスト。
この本はMさんに教えていただいたのがきっかけで読んだのですが、若きピアニストたちのコンクールを舞台にしたストーリーで、ピアニストたちの葛藤と成長、そしてピアノ演奏の描写が素晴らしく本の中から音色が溢れ出るてくるようでした♬
クラシック音楽の造詣も浅く、楽譜が読めない私でも楽しめた、読んで本当に良かったと思える1冊。
この本を読んだことで私の中でもクラシック音楽に対する心持ち?みたいないものが変化し始めてるようにも感じていた矢先に、ストーリーの中でマサルが弾いた曲が聴けるは!と嬉しくなりました。
ピアノは1970年生まれのフランス系アメリカ人、Nicholas Angelich(ニコラ・アンゲリッシュ)氏。
ステージに登場するや背が高く大柄なスタイルにちょっとびっくり。
そんなスタイル通りに演奏もダイナミック、ピアノの音が大きく、一音一音が目にくっきりはっきり見えるようでした。
(フィルハーモニー・ド・パリ オフィシャルサイトよりニコラ・アンゲリッシュ氏)
この曲は小説の中のマサルに言わせると、「スターウォーズ」っぽい世界を思わせるもの。
ラリネットの静かな独奏から始まって絃楽器・木管の合奏、そしてピアノ!
ゆったり優しい感じのオーケストラと激しいピアノ。そんな対照的な人物の対話のような飽きない演奏で、最後はピアノがどんどん激しくたたみかけるように響き、終わった瞬間にウワッと毛穴が全部開いた?!と思うほど興奮させられました。
これまでクラシック音楽コンサート鑑賞に来てもどんな風に聴いて理解したらいいのだろう…、鑑賞後はボキャブラも感性も乏しくて語ることもできず、自分の中には何もなく空っぽ?と落ち込むことも度々でした。
でも「蜜蜂と遠雷」読後、音楽の感じ方は自由で人それぞれで正解もなく、そもそも自分は音楽家でも評論家でもないのだから言葉を探さずに自分が育ってきた環境や今現在積み重ねているものの上に広がった世界を素直に感じればいいのかなと。
この本の中で素晴らしい情景をたくさん見せてもらったおかげで私も音楽を聴くと少しずつ風景や思い出や、いつか行ってみたいと憧れるような場所が広がるようになりました。
幕間の後はクロード・ドビュッシーの「海」。
「音楽家にならなければ水夫になっていたかも」という言葉を残すほど海が好きだったというドビュッシー。
ドビュッシーはどこでどんな海を見つめてこの曲を作ったのか? 彼の見た海を見てみたいとも思いました。
大編成のオーケストラで奏でられた演奏はとても華やかでエレガントだったので、いつか豪華客船で3ヶ月くらいの船旅をしてみたい…そんな気持ちにもなりました。
(ダフニスとクロエと言ったらルーヴル美術館の彫刻を思い出します)
最後はモーリス・ラヴェルの「ダフニスとクロエ」。
これはモーリス・ラヴェルがバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を率いるセルゲイ・ディアギレフの依頼を受けて作曲したバレエ音楽。
そもそも「ダフニスとクロエ」は古代ギリシアでロンゴスという人が書いた恋愛物語ですが、バレエ版はちょっとストーリーが原作とは違っているのですが、基本的には恋を知らなかった、その感情をどうしたら良いか悩んだ若い男女が、海賊にさらわれたりとすったもんだの末に恋愛成就するハッピーエンドなラブストーリー。
「ダフニスとクロエ」のストーリーをざっくり知っていたこと、バレエ鑑賞をしたことがあったので私としてはストーリーに伴ってイメージが展開しました。
「蜜蜂と遠雷」の中にこの世界は音楽に満ち溢れていると言った記述があります。
例えば屋根を叩く雨音が馬のギャロップのようなテンポの音楽だったり。
そんな風に思うと確かに生活の至る所に音色があり、音だけでなく美しい色も存在することを感じます。
世の中には悲惨なことや汚い部分もたくさんあるだろうけど、せっかくならたくさんの佳い音色や色彩を感じられる毎日を意識したいと「蜜蜂と遠雷」を読んで、今回のコンサートを聴いて思いました。
ズーーーーズズズ、、、
ってなんだこの音は?!と思って起こされた真夜中。
それは夫のイビキだった。
これも1つの音楽なんだろうか?と思ってみたけれど、やっぱりそうは思えなかった…。
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