パリの子ども事情

パリの習い事 ― バレエ事情

今年の9月からパリの子ども達の生活が大きく変わりました。
今までは学校のお休みが土、日、水曜日。
それが、9月から水曜日の午前中に授業が始りました。

ちょっと複雑な時間割の始まりに、親たちはかなり神経を使っていました。
月、火、木、金曜日8:30~16:30の授業が、火、金曜日は15:30までと短縮。
でも、学童保育は月、火、木、金曜日が今まで通り16:30~18:00。
ということは火、金曜日の15:30から学童保育の始まる16:30までの1時間はどうするのか?
というのが、夏休み前の大きな話題でした。

蓋を開けてみると、楽しいアトリエがたくさん用意されていて子どもたちは大満足。
たとえば、積み木のようなKAPLA、コーラス、立体を造るアトリエ、演劇......など。
放課後や休みの日の習い事のような内容です。

そう、フランスには進学塾のようなものがほとんどありません。
学校の勉強をしっかりしていれば、大学まで塾無しでも行けるシステムになっています。
しかも給食代以外はお金が全くかからない。
給食代も親の収入によって8段階に分けてあるので、家計に響かないように考慮されています。
どんな家庭環境の子ども達も平等に教育を受け、進学していけるのです。


では、放課後やお休みの日に子ども達はどんな習い事をしているのでしょうか?
「個性を伸ばすなにか」というのが習い事の選ぶ基準になっていると感じます。
移民文化なので、両親の母国の言葉を習う「補習校」などに通う子どももたくさんいますが、これも塾とはちょっと違う。

みんなの和を極端に乱さない、人の話を聞いて理解出来るようになる幼稚園年中組が習い事スタートの目安なのだそう。
それ以前は赤ちゃんの習い事の枠で、ママンと一緒に! という形になります。


女の子にはダントツでバレエが人気です。
男の子はカポエイラ(ダンスと格闘技が一緒になったブラジルの腿法)や柔道です。

我が長女も次女も最初の習い事はバレエでした。
そして、長男は何もやりたいことがなく何となく小学校1年生が過ぎてしまいました。
ところが去年9月(2年生)に「『ロシュフォールの恋人たち』の最初にみんなで広場で踊るやつ、あれがやりたい」
というのです。クラシックバレエだったのか。
男の子がいるバレエスクール!?
そうなってくると、本気のバレエスクールしかない。
友達のお嬢さんが通っているところにたしか男の子が数人いるはず。
さっそくアポイントを取って見学に行きました。

これが、彼にとって運命的な出合いになるのです。

terpsichore という、パリの2大プライベートスクール。
ジャックリーヌ先生率いる、親子3代で子どもから大人まで教えているのです。
厳しく、でも子ども達からとっても信頼されている先生。
積極的にコンクールへ送り出す。

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長男はバレエを始めて1年とちょっと。
でも、経験を積むために南仏グラースのインターナショナルコンクールへ出場しました。

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フランスで行われるコンクールで、最も難関と言われています。
それでもアットホームなバックステージ。

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広い会場では、出場者の親族が見守っています。

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小さい子ども達が大きな舞台で踊り出す。
これだけでも感動。

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踊り終わった後に拍手をしたいけど、コンクールではNG行為。
審査の妨げになるからだそう。

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踊り終わって客席で結果を待つ女の子達。
そして、リラックス。

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名前が呼び出されたら舞台へ上がります。
男の子の出場は、女の子に比べると20分の1。
バレエの本場フランスでも、男の子は貴重なので、お月謝が女の子の半分だったりします。

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授賞式が終わると舞台のあちこちで記念撮影開始。
みんなキラキラしています。

我が長男は予選通過ならず。
予想通りの結果です。
この舞台で踊ったことは、すごい財産になったと思います。
ジャックリーヌ先生の指導の元に、ますますやる気を出しています。


バレエ、ピアノ、バイオリン、フェンシング、演劇......など、専門の道を目指す子ども達を支える学校がパリにはあります。
彼らは毎日の練習が必要で、普通の学校へ16:30まで通いながらはとても難しい。
普通科の子供達の体育、美術、音楽、(中学生なら)第2外国語の授業を省いて、その分を専門分野の練習時間に当てるというシステムです。
小学校4年生から入学出来ます。
しかもそれが公立校で、フランスがきちんとそんな子ども達を積極的にサポートしているというのが素晴らしいと思います。
表現者が国レベルで守られているのです。

世界最大難関のローザンヌ・バレエコンクールに2014年はフランスから3名出場が決定しました。
リヨンとパリのコンセルヴァトワールから各1名。
そして、パリのプライベートスクール terpsichore からDianeちゃん。
長男は踊ることが大好きで通っているけれど、世界レベルのダンサーの卵達に囲まれたレッスン環境、ジャクリーヌ先生との出合いは素晴らしいものだと思う。

松永麻衣子

パリ在住ジャーナリスト

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