Le Doyenné ―季節ごとに訪れたい、パリ郊外の美しきオーベルジュ
「Le Doyenné(ル・ドワイヨネ)行った?」が合言葉のように、友人同士の話題にのぼっていたのは、昨年のこと。
パリから南へ45キロ、Saint-Vrain地方にあるオーベルジュ、ル・ドワイヨネは、今やパリジェンヌたちの間ですっかり名前が浸透したし、世界からも注目を集めています。
ファッションウィークも落ち着いた、先月初旬。
仕事がひと段落した区切りに、日本から来ていた母と息子を連れ、三世代で、1年ぶりに足を運ぶことにしました。
昨夏訪れた際にはディナーだけで帰ったのですが、今回は初めて宿泊することに。
この重たい木の扉が開いた先に広がる楽園を思うと、胸が高鳴ります。
パリ市内からのアクセスは、車で1時間半ほど。公共交通機関を利用することもできます。それほど遠くない距離であることも、また行きたいと思える理由のひとつ。
到着時には小雨が降っていましたが、部屋ですこし荷解きをしているうちに晴れ間がのぞいてきたので、タイミングを逃さず外へ出ました。
広大な自家菜園にはイチゴ畑もあり、熟しているものと、まだ青いものを見つけあいながら歩きました。
雨に濡れたトケイソウや山牛蒡、そして小菊。特に、野に咲く小菊の美しさには目を見張りました。
普段、市場で見かけてもあまり目に止まることのない花だったのに、こんなにも可憐で、美しく、存在感がある花だったとは。
日常から離れてみると、思いがけない美しさに気がつきます。
倒れたひまわりのコンポジション。自然の流れに身を委ね、生命を全うする姿に、多くのインスピレーションをもらいました。
散歩の後、少し冷えた身体を暖炉で温めながら、夕食の時間までアペロタイム。
すると、スタッフの方が、食事の時間を早めることもできますよと提案してくださいました。予約時には、早めの時間は一杯だったのですが、4歳の息子がいたのでもしよかったらと心配りをしてくださり、本当にありがたかったです。
夜へとむかって、空の色が一刻一刻と変わっていく様を眺める時間は、夢のよう。雲の流れが早く、次々と目の前を通り過ぎていきます。
菜園でとれた野菜たちをはじめ、どのお皿も美しく、躍動感があって、たのしい。
息子用にと用意してくれたメニューがあまりに美味しそうで、「ちょっとママにもちょうだい」とお裾分けしてもらったりもしました。
ゆっくり家族と食卓を囲み、なんということのない会話をしながら、時間をかけて、おいしいものを食べる。その一連の時間がとても貴重で、あたたかなものが身体の芯から広がっていくような、心身が癒されるひとときでした。
食後のカフェは暖炉の前に移動して。
焚火を見ていると、どこからともなく眠気がやってきて、満腹の幸せのままベッドに倒れ込む、この上ない幸せです。
翌朝、ベッドからの眺め。まだ空は曇りだけれど、旅先で目覚める朝が大好き。
ちなみに、旅にはジュエリーポーチとルームシューズが必需品。
ルームシューズは、夏に台湾で購入したもの。海外はスリッパを置いていないホテルも多いので、あると安心です。ジュエリーポーチは、いただいたセザンヌのもの。リングが多いので、無くしてしまわないように。
サイドテーブルにはPlaqのチョコレートがひとつ、添えられていて、嬉しかったです。
軽く身支度を整えたら、そろそろ、お待ちかねの朝食の時間。
廊下には、昨日庭で見た小菊がしつらえられていました。
実は、ル・ドワイヨネは朝食の評判もとても良いので、密かにずっと心待ちにしていました。
ビュッフェ形式で、自家製のパンに、数種類のコンフィチュール、シャルキュトリー、それにグラノーラ、飲み物はケールやりんごのジュース。それだけでも幸福感でいっぱいなのですが、卵大好きの息子のためにゆで卵も追加オーダー。
本当は、フィグとリコッタのタルティーヌも食べたかったのですが、お腹がいっぱいでそこまで行きつかなかったのが、心残り。
ル・ドワイヨネで時間を過ごすと、自然のリズムと共に生活があることを思い出させてもらえるような気がします。
冬はどんな風景、どんなお皿に出会えるのか、季節が変わるたびに訪れたい場所です。
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