花で紡ぐパリの非日常
例年であれば、今頃はパリで、ファッションウィークを駆け抜けているころ。毎シーズン、ファッションウィーク中はパリに世界中からモードの関係者が集まり、「非日常」の日々が訪れます。
展示会の装花をしつつ、コレクションを見せていただいたり、デザイナーさんたちとお話しさせていただいたり。
熱量を身近に感じるからこそ毎回緊張もするけれど、彼らの創造力に触れて刺激をもらうのは、私にとってファッションウィークの大きな楽しみになっています。
セーヌ川の中洲に位置するサン=ルイ島にある、ショールーム。既に何シーズンか装花を担当させていただいているのですが、仕事を無事に済ませ、左岸から右岸へ、橋を渡るときの安堵感と達成感、充実感は、何度繰り返しても初めてのように新鮮。
空はより青く、セーヌ川はより美しく、目に飛び込んでくるように感じます。
日頃お世話になっているブランドのショーを見に行かせていただく機会もありますが、築き上げられた世界観に圧倒されると同時に、約15分のショーのために注ぎ込まれたであろう膨大な時間とエネルギーを想像すると、帰り道はいつも胸が熱くなりました。写真はアニエス・ベーのショーで。ラスト、アニエス御本人の登場に会場も沸き立ちました。御年77歳(当時)とのことでしたが、投げキッスしながら楽しそうにランウェイを闊歩する姿、格好良かったです。
業種は違えど、花仕事も同じように、99パーセントは人目にも触れない、地道な裏方作業です。でもその積み重ねが、表に見えるたった1パーセントを輝かせるのだと、改めて背筋が伸びる思いがします。
オートクチュールの展示会に花を届けるために、プラザ・アテネのスイートルームへ足を踏み入れることも。非日常と日常を行き来する賑やかな日々を駆け抜けながら、ファッションウィークはあっという間に過ぎてしまいます。
今年は、オンラインでのプレゼンテーション中心へと大きく方向転換されました。この先も表現の方法は変わってゆくかもしれませんが、美しいクリエイションとその奥にみなぎる人々の熱量からは、いつも変わらず、刺激を受け続けています。
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