マルシェの火曜日
パリに暮らして実感したのが、花がごく当たり前に、生活に息づいている街だということ。そしてその文化を支えているのは、パリの至るところで開かれているマルシェ(屋外市場)の存在なのだということです。
我が家のすぐ近くの大通りにマルシェが立つのは、毎週火曜日と木曜日。火曜日は夫の仕事も休みなので、朝、一緒に買い出しに行くのがささやかな楽しみです。
何度かマルシェに通ううち、たくさんのスタンドが並ぶ中でもお気に入りを見つけました。生産者さんが、採れたてをマルシェに直接持ってくるスタンドには、旬の食材しか並びません。鮮度の良い野菜やフルーツをぐるりと見回して、夕ご飯は何にしようかと相談しながら買い物をします。
形は不揃いですが、だからこそ、無造作にテーブルにゴロンと転がした野菜たちの美しさに、時折はっとすることがあります。そして何より、豊かな土のおかげで味が濃くて、本当に美味しいのです。
ずぼらな私でも簡単にできる、お気に入りの朝食。行きつけのご近所カフェで買う自家製グラノーラに、フロマージュブラン、蜂蜜、それに季節のフルーツをたっぷり加えて。フルーツはもちろん、蜂蜜も、マルシェに出ている蜂蜜専用のスタンドで買っています。
マルシェで夫が食材選びに目を光らせている間、私は花のスタンドで、一週間家に飾るための花を選びます。
花の仕入れに行ったり、大好きなフローリストで買ったりもするけれど、日々の花はこうしてマルシェで買うことも多いです。
ちなみに、フランスでは日本と違って、花は大抵1本ずつではなく、1束ずつ売られています。何本ごとに1束になっているかは花の種類にもよりますが、基本的には、10本で1束。そのため、パリの人たちが日常生活で花を活けるときは、1、2種類の季節の花を、ばさっとシンプルに活けることが多いのです。
サイズ違いでいくつも持っているヴィンテージの薬瓶は、合わせやすくて重宝します。束のうち何本かは、短く切って一輪挿しに活け、家のあちらこちらに飾ります。
毎週マルシェへ足を運び、野菜を買って、フルーツを買って、お肉を買って、花を買う。旬のものが持つ瑞々しいエネルギーに触れ、好きなものを自分の目で選ぶ。パリに暮らす人々には、そんな日常生活のルーティーンが根付いています。そしてそのことが、私にとっては、数々の美術館よりも、美しい街並みよりも大きなパリの魅力、人生の喜びと言えるかもしれません。
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