花で紡ぐパリの日常。

ミモザを訪ねて、南仏イエールへ。(3)

イエールを足がかりに、南仏の小さな島や村を探訪した旅でしたが、もちろん市内にも魅力的なスポットが沢山ありました。
最終日前夜になぜか突然カメラの電源が入らなくなるという悲劇に見舞われながらも、携帯で、たくさん写真におさめてきました。

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中心地から坂を登っていくと、旧市街に入っていきます。午前中、静かな街の中では観光客よりも猫を多く見かけました。その度に、猫が大好きな息子は「にゃーにゃー」と指差しては果敢に猫に近づいていき、撫でようとするのですが、ふわりふわりとかわされて完全に猫に遊ばれ続けていました。

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猫が小道へ入れば息子もそれに続いて入ってゆき、どこまでも猫を追う息子を追い、たっぷり回り道しながら目指したのは、坂の頂上付近にあるヴィラ・ノアイユ。モダニズム建築の先駆けとして歴史的記念物にも指定されています。当時のヴィラのオーナー、ノアイユ夫妻はアーティストの支援を行なっており、ジャン・コクトーやダリ、マン・レイなどがここで創作活動を行なっていたそうです。
今もコクトーの作品が数多くここで常設展示されていると聞き、コクトーが好きなので是非訪れたいと思ったのでした。
また、このヴィラについてさらに調べると、『サイコロ城の秘密』という1929年のマン・レイの映像作品がここで撮られたものだと知りました。私は大学時代、シュルレアリスムを学んでいた中でこの映像作品を授業で見たことがあり、(多くのシュルレアリスム作品と同様、)「なんじゃこりゃ」と思ったものの、覆面男たちがサイコロをふる怪しげな映像とともに、映っていた建築のこともぼんやりと記憶に残っていました。

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ヴィラ・ノアイユの入り口にあったアイリスの絵。これを描いたのと同じと思しき画家の絵は、中庭のベンチにもいくつか描かれていました。伸び伸びとした色彩と筆跡が、この南仏の寛容さと明るさ、生命力を感じさせて、心が和みました。

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しかしながら、実はその日、なんとヴィラ・ノアイユは新しい展示の準備中とのことで中に入ることができず、一階のミュージアムショップしか営業していませんでした。コクトーの展示を見ることができなかったのは残念でしたが、中庭は自由に歩くことができ、ベンチで家族三人、ムシャムシャおやつを食べながら、丘の上からイエールの旧市街を見下ろしてゆっくりと過ごしました。

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キュビズム様式の庭や、舟のような形をした建築、そして十字架の形に壁がくり抜かれ、そこから光がさして、まるで教会のような雰囲気の漂う場所・・・。面白い場所がたくさんあり、庭を散策するだけでも楽しかったです。

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それからまた少しだけ丘を登り、城壁跡から再びイエールをのぞみました。

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イエールを訪れたのはまだ薄曇りのグレイッシュな日が続く頃でしたが、数日間の南仏滞在中に眩しいほどの太陽光を浴びて、すっかりエネルギーを充電できました。
パリからしばし離れ、豊かな自然に心を動かし、また、パリよりもゆっくりとしたペースで物事が進み、人にもゆとりがある暮らしにも癒されます。
今回のバカンスでは、花修行時代に一人で来たミモザの里や、十代から夢中になった『気狂いピエロ』のロケ地の島、大学時代小さな教室で見た映像のヴィラ・ノアイユなど、どこも初めて訪れるのに再会したような気持ちになる、思い出の点と点が繋がってゆく旅でした。

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守屋百合香

フラワースタイリスト
パリのフローリストでの研修、インテリアショップ勤務を経て、独立。東京とパリを行き来しながら活動する。パリコレ装花をはじめとした空間装飾、撮影やショーピースのスタイリング、オンラインショップ、レッスン、コラム執筆などを行う。
Instagram:@maisonlouparis
www.maisonlouparis.com

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