パリの夏、ピンク色のコラージュ。
誰しも皆、人生を謳歌せよと言わんばかりに美しい、パリの夏。
瞬きする間も逃すまいとおさめた写真で溢れかえるカメラロールから、心ときめいたピンク色の写真たちを紡ぎながら、パリ(とコペンハーゲン)の八月を振り返ってみました。
レストラン「Le doyenné(ル・ドワイヨネ)」で、花の咲く広い庭を眺めながらのアペリティフタイム。床と、この日の洋服、そしてレストランの菜園で採れたさくらんぼのソーダがリンクしていました。食事が始まる前から、高揚感で胸がいっぱいになっていました。
素敵な女性への誕生日ブーケをご依頼いただき、凛と美しく優しい彼女をイメージして、旬のカラーやグラミネ、紫陽花を束ねました。よく見ると、紫陽花も、カラーのピンクが移ったかのように、ほんのりと染まっています。
こちらはパリではないのですが、コペンハーゲンの街を散歩中に通りがかったインテリアショップ。
モダンなオブジェやインテリアが、空間をたっぷり使って飾られていました。全体で見ると決して可愛らしい雰囲気には振っていないのですが、このピンクの分量、効かせ方が心憎いです。コペンハーゲンには、色使いや空間づくりのインスピレーションがそこかしこに転がっていました。
野に咲く、山牛蒡の葉。山牛蒡の茎はフューシャピンクで、熟すと黒くなる実とのカラーコントラストが魅力的な植物です。葉はグリーンのことが多いのですが、たまに見つける、こんな色付いた葉が大好物。
安藤忠雄氏が建築したことでも知られる現代アートの美術館、’Avant l'orage'は、パリに数ある美術館の中でも私のお気に入りのひとつ。“L’avant orage”(嵐のまえ)と題したエクスポジションを巡った時間は、嵐と静寂、光と影、ふたつの間の、曖昧で不穏な境界線の世界を旅したようでした。
旬を迎えるダリア。フランスのダリアは、日本で一般的に出回るものよりも花が大きく、子どもの顔並みのサイズのものも。絵画のような花弁の一枚一枚が繊細かつドラマティックで、圧倒的な存在感を放っています。ランジス市場で見るたび、思わず立ち止まって手を伸ばさずにはいられません。初秋まで、まだまだ楽しみたいです。
パティシエの夫と連日通った、サン・マルタン運河近くのアイスクリームショップ。
写真を見ているだけでも、ネクタリン(桃の仲間)のソルベの爽やかな甘さが口の中に広がります。2つ頼んだスクープのうち、上のスクープは息子がまるっと道路に落としてしまったのもまた、夏の思い出です。
コペンハーゲンで訪れた、ルイジアナ近代美術館のパンフレット。同じくこの夏に行ったフィレンツェで買ったマーブル紙の日記帳と、絵の中のブルーとイエローがつながって。
印象的に、時に気付かぬうちに。淡く、時に鮮やかに。この夏を彩ってくれた、ピンク色のかけらたち。一つ一つは、波が連れ去り、指の隙間からこぼれ落ちる砂つぶほどに小さなものだとしても、それらの色の重なりが、誰もに平等に訪れる今年の夏を、その人だけの、一度きりの特別な夏にしてくれ得るもの。
次第に重なっていく色、色を楽しんで生きていけたらと思いながら、短い夏が去りゆくのを惜しんでいます。
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