ホラー、ゴシック、スカルのファンも集まる
オルセー美術館に広がるダーク・ファンタジーの世界

Paris 2013.04.24

icon_paris.jpg 大村真理子の今週のPARIS


オルセー美術館といったら、印象派の絵画を思う。そうすると、現在開催中の「L'Ange du bizarre Le romantisme noir, de Goya à Max Ernst(奇妙な天使、ゴヤからマックス・エルンストに至るダーク・ロマンチシズム)展」は、少々異色に感じられるだろう。でもオルセー美術館はルーブル美術館とポンピドゥー・センターの間を結ぶ時代が対象なので、扱う作品は印象派だけに限らないのだ。

130424_paris_01.jpg展覧会のポスターにも使われているカルロス・シュヴァーベの「墓掘り人夫の死」。©Musée d'Orsay,dist.RMN/Patrice Schmidt


これはヨーロッパの18世紀から20世紀に至るヴィジュアルアートにおけるダーク・ロマンチシズムの表現についての初のまとまった展覧会である。タイトルは エドガー・アラン・ポーが1950年に発表した「L' Ange du bizarre」(原題は「the angel of the odd」)からとったもの。日本では「不条理の天使」と訳されている幻想小説だ。珍しいテーマはいつも以上に幅広い層の興味をひくらしく、首にタトゥー、耳にピアスといった人々の姿も来場者の中に見られ、日頃のオルセー美術館とはちょっと雰囲気が異なる。

130424_paris_02.jpg281×225というサイズもあいまって来場者の足を引き止めるのは、ウィリアム・アドルフ・ブグロー作『地獄のダンテとウェルギリウス』(1850)。展覧会の最初のパートで、有名なヨハン・ハインリッヒ・フュスリーの『悪夢』(1781)と人気を二分している。©Musée d'Orsay,dist.RMN/Patrice Schmidt

130424_paris_03.jpg左:ヒッチコックにも影響を与えた画家レオン・スピリアールトの作品も展示。©RMN(Musée d'Orsay)/ Jean-Gilles Berizzi
右:地下鉄駅などに張られている展覧会のポスターは、アルノルト・ベックリン作の「メデューサの盾」(1897)で立体的に迫ってくる。 © RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski


会場に入るやすぐ右手のスクリーンに見られるのは、F.W .ムルナウ監督の「ノスフェラトゥ」(1922)。ごく一部とはいえ、吸血鬼映画の元祖に迎えられるとは! 展覧会は3つの時代に分けられている。人々の心に恐怖を植え付けた革命の時代に始まるこのダーク・ロマンチシズム。まずはその誕生の時代が第一部である(1770~1850年)。次いで象徴主義が生まれる世紀末(1860~1900年)。締めくくりがシュールレアリスムの時代(1920~1940年)である。

展示されている約200点の絵画、彫刻、版画、デッサンなどは、被写体が何にせよ、怪し気、恐ろし気、奇妙......。風景にせよ、女性の姿にせよ、眺めるうち、どことなく不安な気持ちに襲われてくるような作品ばかり。ギュスターブ・モローやムンクはともかく、ボナールやゴーギャンといった作家たちの意外なダーク・ファンタジーの作品も見ることができる。サブタイトルにあるようにゴヤとエルンストの作品は、もちろん多数展示されているので彼らのファンには嬉しいだろう。

130424_paris_04.jpg左:ポール・ゴーギャンによる木炭画『Madame la Mort』© RMN (Musée d'Orsay) / Franck Raux
右:アルフォンス・ミュシャ作『Le Gouffre』(1898年ごろ)© RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski


映画「ドラキュラ」「アッシャー家の崩壊」「レベッカ」など4本の抜粋(合計11分強)を上映するコーナーは、なかなかの人気。「フランケンシュタイン」「アンダルシアの犬」も抜粋を上映していて、会場内にはダークな雰囲気がいっぱい。最後の作品を見終わって会場から出ると、ヴァンパイアでもないのに美術館に差し込む自然光が妙に眩しく感じられるほど見事な会場構成である。

L'Ange du bizarre

Le romantisme noir, de Goya à Max Ernst

6月9日まで開催

Musée d'Orsay

9時30分~18時(木曜 ~21時45分)

Tel:01 40 49 48 14

休)月曜、5月1日

料金 12ユーロ

www.musee-orsay.fr
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