おしゃれなパリジェンヌが遺した
ワードローブの物語。

Paris 2013.11.27

icon_paris.jpg 大村真理子の今週のPARIS


モードの都、パリ。いつも市内のどこかの美術館でモード関係の展覧会を見ることができる。カルナヴァレ美術館では「ワードローブの小説、ベル・エポックから30年代にかけてのパリジェンヌの粋」展が、3月16日まで開催されている。これはアリス・アローム(1881~1969)のワードローブの展示である。といっても、フランス人ですらピンとこないこの名前。誰かといえば、1912年から23年にかけて、ヴァンドーム広場のクチュール・メゾン「Chéruit(シェリュイ)」の第一販売員だった女性である。彼女の母はクチュリエ、姉はオートクチュールの元祖といわれるフレデリック・ウォルトのメゾンの第一販売員。モードの世界に生まれ育ったアリスが残したワードローブには、母、姉が着たドレスも多く含まれていた。展示されているドレス類は、アリスという一人の女性の物語を超え、ベル・エポックから1930年代にかけてのパリジェンヌの趣味、装いを雄弁に語るのだ。

131127_paris_01.jpg

(左)1900年に描かれたパリジェンヌが、展覧会のポスター。©DR, photo©Musée Carnavalet/Roger-Viollet (中)第一会場に展示されている20世紀初頭のソワレ。©Stéphane Piera/Galliera/Roger-Viollet (右)アリスと娘。


さまざまなモード展が開催されるパリでも、ファミリーの物語、パリジェンヌの物語、販売員の物語、クチュール・メゾンの物語という面を持つこの展覧会はユニークで面白い。4部構成からなる展覧会にはカルナヴァレ美術館が所蔵する当時の絵画なども展示され、時代の雰囲気を伝えるのに役立っている。

4部構成の展示は、アリスに導かれるように見て回るのがいいだろう。第一部は彼女が家族の影響でオートクチュールの世界に目を開いたころから、彼女の見習い時代にかけて。母親の時代の第二帝政期のドレスから始まり、1900~1912年のアリスのワードローブが展示されている。第二部の焦点は、ヴァンドーム広場、ラペ通りといったオートクチュール・メゾンが集まっていた界隈におけるモード。第三部はアリスのChéruit時代で、ドレスだけでなく、顧客の注文帳など貴重な資料も展示。脇の小部屋には、メゾンの1920年夏のコレション全点のデッサンが並べられている。 最後の第四部はエレガンス溢れる1930年代のモードだ。

131127_paris_02.jpg

(左)雑誌Gazette du Bon Ton に掲載された1912年のウォルトの街着。©Worth Paris 。彼のメゾンはラペ通り7番地にあり、モデルがポーズしているのは近くのヴァンドーム広場だ。©Pierre Brissaud/DR. ©Gazette du Bon Ton/DR. photo©Stéphanie Piera/Galliera/Roger-Viollet (右)ラペ通り3番地にあったクチュールメゾンのパカンから仕事を終えて出てくる職人たち。1902年頃。©Musée Carnavalet/Roger-Viollet


131127_paris_03.jpg

(左)ヴァンドーム広場21番地にあったメゾン・シェリュイ。1910年頃。©Edition du Figaro/DR. photo©G.Agié/DR.複写©Gérard Leyris(右)シェリュイの1921-22年秋冬コレクションのアンサンブル。©Stéphane Piera/Galliera/Roger-Viollet


この展覧会でシェリュイという耳慣れないクチュール・メゾンの存在を知ることになるが、また、アリスも彼女の姉オルタンスも就いていたオートクチュール・メゾンの第一販売員という職業が、なかなかに興味深い。豊かなフランス人ばかりが顧客ではないクチュール界に入るにあたり、アリスは21歳のとき数ヶ月ロンドンに滞在し英語を学んだしっかり者。 パリ市内の有名な帽子店で流行の帽子をあつらえ、カルティエでも買い物をし、そして時代に先駆けて水着も着れば、パジャマスタイルも取り入れて......というように、モード好きで、趣味が良く、クオリティへのこだわりを持つアリスは、クチュールを誂える客が第一販売員として頼りにするにうってつけの女性だったようだ。仕事を辞めた1930年代は、彼女自身がランバンの顧客となり、さまざまな夜会にも招待を受けている。なお展覧会の最後の小部屋では、クチュール・メゾンが毎年11月25日に催したサント・カトリーヌ祭の衣装や、造花の数々を展示。それほど大きくない会場だが、見応えはたっぷり。

131127_paris_04.jpg

(左)1935年、スカートにステッチを施したランバンのドレス。©Patrimoine Lanvin photo©Stéphanie Piera/Galliera/Roger-Viollet (右)ランバンで誂えたドレスを着たアリスの写真。


131127_paris_05.jpg

(左)ランバンの1934-35年のソワレ「Sèvres」。©Patrimoine Lanvin (右)会場には、左のドレスの胸当てとカフスが展示されている。


Roman d'une garde-robe, le chic d'une parisienne de la belle époque aux années 30
会期:開催中~2014年3月16日
Musée Carnavalet 
23, rue de Sévigné
75003 Paris
Tel:01 44 59 58 58
開場:10:00~18:00
休)月、祝
入場料 8ユーロ
Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
和菓子
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.