晴れた日は、モンマルトル博物館の庭でのんびり過ごす。
Paris 2016.08.31
パリで一番チャーミングなミュージアム!! こんなうたい文句のポスターを地下鉄駅に掲げて誘うのは、モンマルトル博物館だ。ここには緑に恵まれたジャルダン・ルノワールという名前の庭もある。画家ルノワールは1876年から1年間、博物館のある場所に暮らし、モンマルトルを題材にしたさまざまな名画を残した。その中の一点『ブランコ』(1876)は、この庭で描かれたものだ。地面に固定されているものの、庭のブランコは観光客たちが絵画のモデルのように上に立ってポーズをとる撮影ポイントとなっている。庭を下って行くと、モンマルトルの葡萄畑も含め、素晴らしい景色を見ることができる。


モンマルトル博物館のジャルダン・ルノワール。©Jean-Pierre Delagarde


ゆったりとした時間を過ごしたくなる静かで緑豊かな庭。ティールーム「ルノワール」では、クロックムッシュやサラダなどのランチが取れる。水曜から日曜の営業で、開店は12時。photos:Mariko OMURA
19世紀後半、パリ改造により整備されたパリの中心部。ごちゃついた小道は姿を消し、貧しいアーティストたちには住みにくい場所となった。彼らは家賃の安いモンマルトルの丘に移り、そこにキャバレーが生まれ、芸術家たちが海外からも集まるようになって……。複数の建物からなるモンマルトル博物館。訪問の第一歩は、モンマルトルの歴史を見せるフィルムから始まる(上映中は入室禁止なので、パスする入場者も少なくないが)。上映されている小さな部屋があるのは、かつてルノワールのアトリエがあった場所の建物だそうだ。現在、博物館のある12番地の建物に暮らしたさまざまな芸術家の中には、シュザンヌ・ヴァラドン、息子のモーリス・ユトリロも。敷地内の2つ目の建物では、彼らの住まいとアトリエを再現して見せている。


左:シュザンヌ・ヴァラドンの部屋。彼女の作品は常設展にて展示されている。 右:息子ユトリロのアトリエ。photos:Mariko OMURA
庭に面した建物内では、9月25日まで『モンマルトルのアーティスト : 1870-1910 スタンランからサティまで』と題した企画展が開催中だ。スタンランの名前は知らなくても、彼が描いたキャバレー「シャ・ノワール」の黒猫は有名。こうした作品を含む160点を展示し、モンマルトルが芸術家たちの地となった過程を時代順に展覧会は見せている。この建物の入り口の案内板には、ゴッホによる「タンギー爺さん」のコピーと共に解説が。それによると、ピカソ、セザンヌ、ゴッホなどが出入りした画材商の彼が暮らしていたのが、その建物内の管理人部屋だったということだ。
常設展の会場は、庭から階段を降りたところにある。ロートレック、モディリアーニ、ルノワールたちの絵画だけでなく、「ラパン・アジル」「シャ・ノワール」といったキャバレーなどの歴史も織り込んだ展示で見所がいっぱい。庭を楽しむことも考えると、盛りだくさんのモンマルトル博物館は時間に余裕のあるときに行くのがよいだろう。
博物館を出たら、左手に坂を登って行こう。6番地に、エリック・サティが暮らしたと表示されている建物が目に入るはずだ。


左:『モンマルトルのアーティスト』で展示されているAntoine de La Rochefoucauldによるエリック・サティのポートレート。©Fonds Erik Satie-Service interministériel des Archives de France/IMEC©Fondation - Archives Erik Satie ,Paris 右:常設展で見られるシャ・ノワール劇場のプログラムのカバー画の数々。


常設展より。モンマルトルがまだパリ市外だった時代、現在のモンスニ通りとマルカデ通りの角にあったクリニャンクール陶器工場では、ルイ16世の弟の庇護のもと、日常使いの食器や高級装飾品が製造されていた。1767年から1799年までと短期間の存在だったが、その貴重な仕事を常設展で見ることができる。photos:Mariko OMURA


左:モンマルトル博物館。観光列車も前を通る! 右:コルト通り6番地、サティが暮らした建物がある。photos:Mariko OMURA
12-14, rue Cortot
75018 Paris
Tel. 01 49 25 89 39
開館:10:00~18:00(夏は~19:00)
休)なし
入館料:9,50ユーロ
réalisation:MARIKO OMURA