Paris 連載
今週のPARIS
香水ダイアナ・ヴリーランドが誕生した。目下、コレットで独占販売中。
今週のPARIS
1989年、86歳の生涯を閉じた伝説の編集者ダイアナ・ヴリーランド。彼女の遺族が製作した映画『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』で、こんなとてつもない女性が出版界・ファッション界に君臨していたのか! と驚いた人も多いだろう。未経験ながら30代半ばにして『ハーパース・バザー』のエディターにと請われたのは、ダイアナが自分だけのスタイルを築いていたゆえである。子ども時代、時代の美の基準から外れた容貌の彼女に母親から残酷にも"醜い"と言われたのがきっかけとなって、自分のスタイルを持つことになったというから、怪我の功名というか......。ちなみに、1957年のオードリー・ヘップバーン主演の映画『パリの恋人』中、彼女にインスパイアされたモード誌の編集長が登場する。ダイアナは1962年には『ヴォーグ』誌に移り、10年近く編集長を務める、というスーパーキャリアの持ち主だ。彼女亡き後、これほどのカリスマ編集長が生まれることはまず考えられないだろう。

伝説の編集者ダイアナ・ヴリーランド(1903~1989)の世界を再現したコラージュ。
映画『ダイアナ・ヴリーランド』を製作したリサ・インモルディーノ・ヴリーランドは、ダイアナの孫アレクサンダーの妻。この秋、彼女の夫、つまり孫アレクサンダーがずばり「ダイアナ・ヴリーランド」という名前で、彼女に捧げる香水を発表した。5種の香りがあり、どれも来年1月の初頭まで、パリではコレットが独占販売!
アレクサンダー・ヴリーランドによると、ヴォーグ編集部の廊下、晩年の仕事先だったメトロポリタン美術館衣裳部のオフィスなど、彼女がいるところ必ず香りが漂っていたそうだ。香りへの祖母の情熱を今の時代に香水という形で伝えよう、と祖母の名のオード・パルファムを発表することにした。特にこの香り、というような好みはなく、香水やポプリなど香りそのものを愛したダイアナなので、今回の香水5種は彼女が使っていた香りの再構築というのではない。もしも、今彼女が香りを使うなら......という発想のクリエーションである。香りはそれぞれに魅惑に満ちていて個性的。選ぶのが難しい。 流行にとらわれず自分に似合った贅沢な香りが欲しい女性を狂わせる魔力をもった5香といえる。

左から。くすんだオレンジはExtravagance Russe アンバーの深い香り。オレンジ色はAbsolutely Vital バラとウッドの香り。レッドボトルはPerfectly Marvelous ジャスミンの官能的な香り。ピンクがかったパープルはOutrageously vibrant 甘くこっくりとしたフルーティな香り。ヴァイオレット・ボトルはSimply Divine チュベローズの格調高い香り。185ユーロ(100ml)、135ユーロ(50ml)
ダイアナらしさ。孫アレクサンダーはこの香水の創作に際し、それを色と言葉のチョイスに置いた。赤でまとめた部屋、唇にたっぷりのせたルージュなど、ダイアナという名前に密に結びつくのは赤。色はなんでも好きといいつつも、彼女が生涯追求したのはパーフェクトな赤。ファビアン・バロンによるデザインのカラードボトルに、彼女の好みが反映されている。言葉について言えば、ヴリーランド語録ができるほど彼女は名言を残しているのだ。それらは計算された言葉ではなく、口をついて出た彼女の思いである。インドで大勢が明るい服を日常的に着ているのをみて「ピンクはインドの濃紺なのね」といったのは有名だし、また60年代の若者文化を称して「ユースクエイク」という造語を生んだのも彼女である。5種の香水は、さすが彼女を知る孫ならではのネーミング。Perfectly Marvellous(パーフェクトリー マーヴェラス/完璧に素晴らしい)、Extravagance Russe(エクストラヴァガンス リュース/ロシアのとてつもない贅沢) 、Outrageously Vibrant(アウトレイジャースリー ヴァイブラント/ありえないほどゾクゾク)、Absolutely Vital(アプソリュートリー ヴァイタル/絶対的な不可欠な)、Simply Divine(シンプリー ディヴァイン/ただただ神々しい)。それぞれの香りをかぎ、音を延ばしながら名前を発音してみよう。ちょとだけ、神話の女性に近づけたような気分!?
Colette
213, rue Saint Honoré
75001 Paris
http://ja.colette.fr/