カンボジアへの旅といえば、アンコールワット遺跡群に近い、シェムリアップが一般的。でも、首都プノンペンも、日本人はあまり訪れませんが、欧米人は多く訪れる観光地。街の中心部には、歩いて回りたい見どころもいろいろあります。
街歩きの中心となるのは、王宮。1870年に木造で建築された王宮は、1919年にはフランス人建築家によって、現在の黄金の瓦屋根とクメール様式の尖塔を持つ建物に改築。尖塔の上に、観世音菩薩のお顔が鎮座するのが印象的です。
付随する博物館も、ぜひ覗いてみて。歴代の宝物や式服などが展示されています。王宮で行われる儀式には、曜日ごとに色が決められている! というのも面白い。
王宮の北部は、かつてのフランス統治時代に建てられた建物が残るエリア。いまも郵便局として使われている建物は、クリームイエローとスカイブルーが美しく、なかなかにフォトジェニック。昔、銀行として用いられていた建物を改装した、洒落たフランス料理レストランなどもあります。
ちなみに、プノンペンは、アジアのほかの都市に比べても、フランス料理の質の高さで特筆される場所。街には高級フレンチが数カ所あり、在住外国人やカンボジア人富裕層が集っています。


東へと歩くと、トンレサップ川。プノンペンは、メコン川、トンレサップ川、バサック川が交わる地に位置する街。市の中心部に面したトンレサップ川には、地元の人々が涼を求めてやってきます。
サンセットクルーズも、観光客には人気。バンコクのチャオプラヤ川で催行されているクルーズよりも、もっとローカル感たっぷりで、素朴な船遊び気分が楽しめます。


買い物で立ち寄りたいのは、市内最大の市場として、地元民も観光客も集まるセントラル・マーケット。1937年に建てられたドーム型の建物は、個性的なアールデコ様式で、2010年にフランスの援助を受けて改修されたもの。
中心部には、ジュエリーや雑貨など観光客向けの土産ものが売られていますが、 外側は、地元民の生活に寄り添う市場。シンガポールも、バンコクも、すっかりきれいな大都市になっちゃって……という昔からのアジア好きは、ここに来ると「おっ!」と、思うはず。ちょっと雑多な、いかにもアジアらしい、活気と喧騒とに満ちています。
お土産には、カンボジア伝統の綿の手織り布“クロマー”を。巻く、包む、着る、など、カンボジア人の暮らしに深く馴染んだ万能の布は、チェックやストライプが、意外なほど可愛い! 1枚2〜3ドルと手頃なので、まとめて大人買いしたくなります。
値段は交渉制ですが、市場の売り手も、それほどボッてはこないので、心穏やかに買い物ができるのもいいところ。
プノンペン市街には高層ビルが建ち、どんどん都市化が進んでいますが、素朴な暮らしぶりもまだまだ残っていて。もしかしたら、ここ数年が、行きどきかもしれません。

Michiyo Tsubota
旅エディター・ライター
編集・広告プロダクション勤務を経て、フリーランス。女性誌や旅行誌を中心に、旅の記事の企画、取材や執筆を手がける。海外渡航歴は70カ国余り。得意分野は自然豊かなリゾート、伝統文化の色濃く残る街、スパ、温泉など。