バンコクのマンダリン オリエンタル バンコクを訪れたことがある人なら、ホテルのすぐ横に立つ建物に、ふと気を留めたことがあるのでは? そう、ちょっと廃墟がかったミステリアスな雰囲気の、クラシカルな美しい建物です。
看板を見ると、将来的にはこの建物はホテルになる模様…‥‥。でもいまなら、この建物の内部に入ることができます。それは、ここ、かつての「ザ・イースト・アジアティック・カンパニー」の建物が、『バンコク・アート・ビエンナーレ』のメイン会場のひとつとして一般公開されているから!
「ザ・イースト・アジアティック・カンパニー」は、1870年代、チュラロンコン王の元で働いていたデンマーク人の船長ハンス・ニール・アンデルセンが、1884年に創業した貿易会社。目の前のチャオプラヤ川を利用して、タイとヨーロッパなどを結ぶ貿易を行っていました。アーチが特徴的なヴェネツィア風建築は、イタリア人建築家たちが手がけたもの。
この建物が利用されるのは27年ぶりにして、一般に公開されるのは初めてだとか。入場は無料。入り口は、マンダリン オリエンタル バンコクの敷地内に展示された金色に輝く犬のアートオブジェのすぐ向い側です。
Auré le(France)“LostDog Ma Long” 2018
木造の階段を上って、2階が会場。まずは古い建物がシルバーのスチールやテープで覆い尽くされた、フューチャリスティックなインスタレーションが広がります! 微妙に角度がついた床を歩いていると、まったく異なる時空間へと投げ出されたような気分に。
Lee Bul(Korea)“Diluvium” 2012/2016/2018
Andrew Stahl (United Kingdom)”City Flow” 2018
「ザ・イースト・アジアティック・カンパニー」の会場内には、バンコクのシンボルでもあるチャオプラヤ川からインスパイアされた作品、タイ産のチーク材などを用いたインスタレーション、戦争と愛をテーマにした作品など全11点が展示されています。大きな窓を持つ古い建物の風情に、それぞれの作品がミックスマッチして、とてもユニークな空間になっています。
Sara Favriau(France)“Nothing is led comparable” 2018
Kota Sangkhae (Thailand) “Companion Hands” 2018
川沿いに建物の正面に行くと、チャオプラヤ川沿いには、プールをテーマにした作品が屹立します。川の向こう側、Oの字を思わせる作品の中にすっぽりと収まるように見えるのは、ザ ペニンシュラ バンコク。実はこの作品は、当初ザ ペニンシュラ バンコクの敷地内に設置される予定だったのだとか。
Elmgreen&Dragset(Denmark/Norway)“Zero” 2018
時間があれば、すぐ近くにある船着き場から、ホテルの専用ボートでザ ペニンシュラ バンコクを訪れてみて。実は、ホテルのロビー内にも数点のアート作品が展示されています。ザ ペニンシュラ バンコクは、『バンコク・アート・ビエンナーレ』のスポンサーとなっています。
ロビーでは上を眺めると、ボタンを押すと羽を動かして音を出す、ユニークな木のエンジェルたちが。日本でもおなじみの通称タムくん、Wisit Ponnnimitさんの短いアニメ作品も!
Heri Dono (Indonesia)“The Female Angels” 2013
Wisit Ponnnimit(Thai)“Mamuang for BAB 2018”2018
『バンコク・アート・ビエンナーレ』期間中は、「ザ・イースト・アジアティック・カンパニー」をはじめ、バンコク・アート・アンド・カルチャーセンター(BACC)、サイアム・パラゴン、セントラル・エンバシー、ワット・アルンなど、バンコク各地の有名スポットや観光地に、タイ人アーティストを中心に世界33カ国75名のアーティストの作品が展示されています。
開催は2019年2月3日まで。この時期、ふらりとバンコクの街を歩いていると、思わぬアーティストの作品に出合えます。奈良美智さんや草間彌生さんの作品も、バンコクの街のどこかに展示されていますよ!

Michiyo Tsubota
旅エディター・ライター
編集・広告プロダクション勤務を経て、フリーランス。女性誌や旅行誌を中心に、旅の記事の企画、取材や執筆を手がける。海外渡航歴は70カ国余り。得意分野は自然豊かなリゾート、伝統文化の色濃く残る街、スパ、温泉など。