オペラ座に誕生した3つめの舞台とは?
パリとバレエとオペラ座と 2015.12.03
パリ・オペラ座のガルニエ宮がオープンしたのは19世紀(1875年)。現在、ここは主にバレエの公演に使われている。20世紀(1982年)、フランス革命200周年記念にオープンしたパリ・オペラ座バスチーユの劇場は主にオペラの公演に。この2つの劇場に加え、2015年9月に3番目の舞台「La 3e Scène(ラ・トロワジエム・セーヌ)」が誕生した。といっても、オペラ座のサイト内、インターネットで鑑賞するバーチャル・ステージだ。従ってガルニエやバスチーユと違い、世界のどこにいても鑑賞可能。サイトは英語とフランス語のチョイスがあり、作品によっては字幕付き!
La 3e Scène で見られるのは、オペラ座からの注文を受けてアーティストたちがクリエートしたオペラ座のバレエ、音楽、劇場にまつわる映像や写真。ちなみにアーティストの選択は、ADのディミトリ・シャンブラが担当している。作品は完成すると順次サイトにアップされてゆく。11月末時点では20作品がインターネット上で鑑賞でき、12月末までには3本が追加される予定だという。写真家、イラストレーター、映画監督、アーティストなど作家はジャンルも国籍もさまざま。そして作品の内容、長さも実にまちまちである。我々は気分や好みに応じて、あるいは好奇心に導かれるまま、インデックス上の作品をクリックすればいいのだ。オペラ座のダンサーが出演している作品も少なくない。例えば、芸術監督バンジャマン・ミルピエによるエトワール・ダンサー紹介のフィルム。ジェイコブ・サットンの映像では、将来を嘱望される若手ダンサーのジェルマン・ルーヴェと八菜・オニールが優雅にガルニエ宮のグラン・フォワイエと屋根上でパドドゥを踊る。グレン・キーンは、長い手足を持つ愛らしいマリオン・バルボーの踊る姿をデッサンし、そこからネフタリというチャーミングな妖精が生まれるアニメーションフィルムを製作......ヴァラエティ豊かなので、オペラ座ファンに限らず、誰もが何かしらお気に入りの作品に出合えるに違いない。
左:Jacob Sutton作『Ascension』、右:Rebecca Zlotwski作『09/06/2015』
左:Loren Denis作『O comme Opéra』、右:Glen Keane作『Nephtali』
https://www.operadeparis.fr/3e-scene
さて、中でもインパクトの強い作品といったら、LAをベースに活動する写真家のアレックス・プラガーによる10分弱の「La grande sortie」だろうか(彼女は過去にもバレエをテーマにした映画「赤い靴」にインスパイアされたアートフィルムを製作している)。1月23日までデパートのギャラリー・ラファイエットの2階のアートスペースGalerie des Galeriesでは、彼女の作品展が開催中である。横幅3メートルという巨大な写真を展示する奥のスペースでも、この「La Grande Sortie」を鑑賞することができる。真っ暗な劇場的空間なので、自宅のコンピューターでは得られない圧倒的迫力!! プラガーはヒッチコックの作品に大きな影響を受けているという。彼が愛した女優グレース・ケリーに似たクールビューティーと誉れの高いエトワール、エミリー・コゼットをこの「La Grande Sortie」の主役に起用したのもそれゆえだろうか。作品ではその彼女がカール・パケットをパートナーにバスチーユの舞台で「ジゼル」を踊るのだが、やがて......。パフォーマンス中のダンサーの心身分離に興味を持ったアレックスによるこの映像。内容は見てのお楽しみ!
左上:アレックス・プラガー。photo:Jeff Vespa ©2013 右上と下段:彼女による「La grande sortie」より。https://www.operadeparis.fr/3e-scene/la-grande-sortie
http://www.galeriedesgaleries.com