オペラ座のシャネル、ガラ、そしてユーゴ・マルシャン その3 『Danser』ユーゴ・マルシャンが綴る19年のダンス人生。

エトワールのユーゴ・マルシャンとジャーナリストのキャロリーヌ・ドゥ・ボディナとのコラボレーションによる『Danser』が、2月初旬に出版された。“踊る”というタイトルだが、ダンスを仕事に選んだ9歳からいまにいたる生きる姿、心の成長を224ページに一人称で綴った読み応えのある一冊だ。

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2月3日に出版されたArthaud社刊『Danser』(19、90ユーロ)。

今年28歳になるユーゴ。生物学的には若者だけれど、ダンスと歩み始めてすでに19年。192cmと群を抜いて長身の彼が回転し、飛翔し……。舞台空間を押し広げるように彼が踊ると、そのステージに引きずり込まれて観客は我知らずに座席から腰を浮かす。かつてのエトワール、ニコラ・ル・リッシュのような王者の風格を醸し出すユーゴだが、3年がかりで完成させたこの一冊には、9歳でバレエを選んだ彼がパーフェクションを追求するがゆえに直面する疑問、落胆、涙、恐れ、不安、パニックなども率直に語られている。

学校に入った13歳の時にすでに175cm。大柄でダンサーの基準から外れる身体を持つ彼は、そんな自分をカリメロにたとえていた。醜いアヒルの子。その子が、強い精神力で自分との戦いを繰り返し、粘り強く努力に努力を重ねて白鳥に……彼がエトワールダンサーになるとわかっていても、この先彼はどうなるのだろうとまるで小説のようにドキドキさせる読み物だ。

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昨年10月、パリ・オペラ座で観客を前に彼が最後に踊った公演『Etoiles de l’Opéra』より。ハンス・ファン・マーネンの『トロワ・グノシエンヌ』(左)をエトワールのリュドミラ・パリエロと、ジェローム・ロビンスの『Suite of Dances』をチェロの伴奏で踊った。photos:Svetlana Loboff/ Opéra nationnal de Paris

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“ダンスの兄弟”であるエトワール、ジェルマン・ルーヴェとの学校時代からの友好的コンペティション、前芸術監督バンジャマン・ミルピエからの信頼で得られた自信と成長、芸術面で多くを分かち合えるドロテ・ジルベールとの強い舞台体験、『椿姫』を踊れなくなった裏事情……こうした具体的なエピソードを交えながら、学校とカンパニーの日常、仕組みなどについても説明し、ダンスやパリ・オペラ座に通じている読者だけでなく、その世界にはあまり詳しくない読者も興味が持てるように意識してこの本は書かれている。

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バンジャマン・ミルピエ創作の『Clear,Loud, Bright, Forward 』。ユーゴをはじめ、ミルピエが抜擢したコール・ド・バレエのダンサーたちに創作された2015年の作品だ。photo:Ann Ray/ Opéra national de Paris

オペラ座のピラミッドを一段ずつ着々と登り、来日公演中『ラ・シルフィード』を踊って東京文化会館でエトワールに任命されたのは2017年3月。24歳で最高峰に達した彼の物語は読み物として充実し、また、職業は何にせよ彼のように若くして選んだ道を歩む人には励みとなるに違いない。オペラ座での定年42歳までの彼のこれからの14年もまた、本にまとめてほしいものだ。

彼のダンスを自宅で鑑賞したい人のために、最後にうれしい情報を。オペラ座のデジタルプラットフォーム「l’Opéra chez soi」では、『ラ・バイヤデール』第三幕のリハーサルで踊る彼を無料で視聴できる。さらに彼が踊るPérez創作のコンテンポラリー作品『Males Dancers』を含む公演『Soirée Thierrée/Shechter/ Pérez/Pite』は7.90ユーロでレンタルでき、これは30日間有効。

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2020年春の来日公演で『オネーギン』では、ドロテ・ジルベールをパートナーに深い感動を呼ぶ舞台を作り上げた。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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