速報! ついに? やっと? ギヨーム・ディオップが飛び級でエトワールに。

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23歳のエトワール、この華やかで美しい飛翔 !  ギヨーム・ディオップは ジェルマン・ルーヴェの優雅さ、ユーゴ・マルシャンの力強さを持つだけでなく、さらに愛らしい笑顔という武器も有するダンサーだ。公演「パトリック・デュポンへのオマージュ」での『Etudes』より。photo:Yonathan Kellerman/ Opéra natinal de Paris

2017年3月3日、怪我で降板したマチュー・ガニオに代わって参加した来日ツアー公演の『ラ・シルフィード』で、主役ジェイムズ役を踊ってユーゴ・マルシャンがエトワールに任命された。それから6年が経過し、今年3月11日、今度はそのユーゴに代わって主役を務めたスジェのギヨーム・ディオップがプルミエ・ダンスールの階級を飛び越えてエトワールに任命されたのだ。場所は韓国ツアー中のソウルLGアートセンター。ドロテ・ジルベールを相手に彼は『ジゼル』のアルブレヒト役を初役で踊り、その2度目の公演後のことだった。

韓国ツアーは3月3、4日とテジョンでの公演を終え、8~11日までがソウルでの4公演で、その最終日の出来事である。初日の8日にもギヨームはドロテと踊っていて、この時に任命か?という予測もされていたが、ジョゼ・マルチネス芸術監督は慎重を期してこの晩は決定の確認にあてたのだろうか。なお、10日は降板したポール・マルクに代わりアンドレア・サーリ(スジェ)がレオノール・ボラックを相手にアルブレヒトを踊った。

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3月11日、ソウルのLGアートセンターでドロテ・ジルベールをパートナーに『ジゼル』のアルブレヒト役を踊りエトワールに任命されたギヨーム・ディオップ。本人も任命を感じていたとは思うが、任命の瞬間は涙! photos:Studio AL

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Guillaume Diop(ギヨーム・ディオップ)。2000年パリ生まれ。4歳でダンスを始め、2008年から18区のコンセルヴァトワールでバレエを学び、2012年にオペラ座バレエ学校に入学。2018年にオペラ座バレエ団に入団し、2022年にコリフェ、2023年にスジェに昇級。2021年に将来を嘱望される若いダンサーに与えられるCercle Carpeaux賞、そしてAROP賞を受賞した。

昨年の昇級コンクールの結果、今年1月1日にスジェに上がった彼。コリフェからエトワールという飛び級はありえずとも、プルミエ・ダンスールの段階を飛び越えスジェからエトワールへというのは、過去にマチュー・ガニオ、ジェルマン・ルーヴェの例もあることから、ギヨームの任命もいよいよだろう、というのがパリ・オペラ座バレエ団のファンの間でささやかれていたことである。そして、オペラ・ガルニエの公演『バランシン』で「Ballet Impérial」を踊ったオニール八菜とマルク・モローというふたりのプルミエ・ダンスールを3月2日にエトワールに任命した直後、芸術監督ジョゼ・マルチネスが今度は『ジゼル』でツアー中の韓国へ旅立った!!となり、ギヨームの任命は現実味を帯びていたのだ。

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ギヨームほど短期間でいろいろと話題を振りまいたダンサーは珍しいだろう。2000年生まれの彼は6年間オペラ座バレエ学校で学び、2018年にカンパニーに入団している。2022年にコリフェに上がる前のカドリーユ時代、2021年6月に『ロミオとジュリエット』のロミオの代役だった彼はジェルマン・ルーヴェが怪我をしたことから、レオノール・ボラックを相手に舞台を務めることになったのだ。カドリーユがエトワールの役を踊る!ということで、世間の注目を集めた彼。ストレスを感じさせることなく、フレッシュにロミオを演じて見事大任を果たしたのである。レオノールとは2021年12月に再び『ドン・キホーテ』で組んでいる。これもまだカドリーユの時代のことだ。バジリオ役に予定されていたマチアス・エイマンが降板したことから、代役で入っていたギヨームが公演開始前に正式に配役されて、再びレオノールと踊ったのだ。ふたりは芸術性だけでなく体型的にも良い組み合わせで、華やかな舞台を作り上げた。

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2021年6月、主役を踊ったのがオペラ座ダンサーの階級最下位カドリーユのギヨームだったことが話題を呼んだ『ロミオとジュリエット』。この配役はエトワールに求められる資質、スター性を彼に見いだしていた当時の芸術監督オーレリー・デュポンの英断である。彼女の信頼が彼に自信をもたらし、またパートナーのレオノール・ボラックも彼の芸術性を引き出すのにひと役買って、彼はこの晩大任を果たしたのだ。Agathe Poupeney/ Opéra national de Paris

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2021年12月、レオノール・ボラックと『ドン・キホーテ』。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

カドリーユながら、エトワールにとっても難易度の高いヌレエフ作品で主役を踊った彼。入団5年でこの実績は恐るべきものだ。男性エトワールの絶対数が不足していることもあり、彼のエトワール任命への期待はこの頃から高まる一方に。昨年1月1日にコリフェとなり、4月に急遽『ラ・バヤデール』のソロル役をドロテ・ジルベール(ニキヤ)、ビアンカ・スクダモア(ガムザッティ)を相手に踊ることになった。もっともこれは準備時間が少なかったこともあり、彼のスター性や優れたテクニックだけでは役に十分な厚みが出せなかったようだが。そして昨年末はオペラ・バスティーユで『白鳥の湖』の主役を、ユーゴ・マルシャンに代わってドロテ・ジルベールと踊っている。スジェ以前にこれほど配役に恵まれたダンサーが過去にいただろうか。

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2022年12月、ドロテ・ジルベールと『白鳥の湖』。Yonathan Kellerman/ Opéra national de Paris

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『白鳥の湖』より。優れたテクニックの持ち主であるだけでなく、彼は芸術性も豊かに役を演じる。photos:Yonathan Keller<

こうした華やかな話題の主となる前からも、カドリーユのダンサーということではない話題で彼の名前を記憶した人もいる。というのも、パリ・オペラ座バレエ団の中で有色のダンサーであるレティツィア・ガロニ、ジャック・ガツォット、アワ・ジョアネ、イザック・ロペス=ゴメス、そして彼の5名は2020年12月、日刊紙「Le Monde」の雑誌「M」で、パリ・オペラ座におけるダイバーシティ問題を提起したからだ。また最近ではディオール メンズ コレクションのショー会場に現れたり、モード雑誌でモデルを務めたりで、ファッション界からも注目されている。

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左: 2023年1月1日にスジェとなった彼の初舞台が『Etudes』。エトワールのヴァランティーヌ・コラサント、ポール・マルクとともに素晴らしいステージを築いた。 右: 公演『パトリック・デュポンへのオマージュ』では、第2キャストで『Vaslaw』のソロを踊った。ちなみに第1キャストはプルミエ・ダンスールのオードリック・ブザールだった。photos:Yonathan Kellerman/ Opéra natinal de Paris

5月にオペラ・バスティーユで公演のある『モーリス・ベジャールの夕べ』では、彼が『le Chant du compagnon errant(さすらう若者の歌)』を3月2日に任命されたマルク・モローと踊るという、新エトワールの組み合わせが見られる晩がある。マルク・モローはコンテンポラリー作品にも配役されるダンサーだが、ギヨーム・ディオップが踊ったのはこれまでほどんどがクラシック作品。オペラ座バレエ団のレパートリーには男性のデュオ作品は多くなく、今後このふたりの組み合わせはこれを逃すと当分ないかもしれない。また、今シーズン、この後オペラ座で踊られるのは『マノン』である。ギヨームは主人公デ・グリュー役を踊るのだろうか……。23歳の春、「夢はオペラ座のエトワール・ダンサーになること」と何かのインタビューで語っていたギヨームの夢が叶えられた。先輩のプルミエ・ダンスールを差し置いての飛び級任命を果たした彼が、新しい芸術監督ジョゼ・マルチネスのもと、どのようなキャリアをこれから築いてゆくのかが楽しみだ。

editing: Mariko Omura

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