恒例のデフィレで開幕したパリ・オペラ座のシーズン2023-24。

9月21日、オープニング・ガラ。

オペラ座の新シーズン2023/24の開幕を告げるオープニング・ガラがガルニエ宮で9月21日に開催された。通常はデニムやスニーカーといったカジュアルなスタイルの来場者も少なくないオペラ座だが、この日はブラックタイとロングドレスというドレスコードに従って誰もが美しく装って来場。星のような煌めきが流れる透明な縦長の白い布の装飾がガルニエ宮の吹き抜けの見事なボリュームを強調し、白いプラント・デコレーションが有名な大階段をはじめ劇場内を飾っていた。フランスの堂々たる文化遺産であるガルニエ宮がさらにエレガントで豪華絢爛に。ガラのスポンサーは前回同様に、パリ・オペラ座のグランドメセナであるChanel(シャネル)、そしてパリ・オペラ座の時計Rolex(ロレックス)だ。映画界、スポーツ界、政界……さまざまな世界のセレブリティたちが観客席を埋め、ガラは恒例のデフィレからスタート!!

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優美な白い装飾が来場者を迎えたオペラ・ガルニエ。シャネルが現在パリ・オペラ座のグランド・メセナである。photos:(左)Virgile Guinard、(右)Mariko Omura

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シャネルのドレスを着たメゾンのアンバサダーを務めるモナコ公国のシャルロット・カシラギ。パリ・オペラ座総裁アレクサンダー・ネーフ(右)とバレエ団芸術監督ジョゼ・マルティネスに囲まれて。パリ・オペラ座とグランドメセナのChanelの関係を象徴するような1カットだ。photo:Virgile Guinard

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ダンスのデフィレ。

学校の生徒とカンパニーの団員が一堂に会し、全員でオペラ・ガルニエのステージ上を行進するダンスのデフィレ。年に一度の催しは、いちどは見る価値のある壮麗な瞬間だ。ステージを歩く順番、さらに衣装もパリ・オペラ座バレエ団のヒエラルキーを顕著に表している。女性を例にとれば、デフィレの最初に登場する学校の女生徒たちは上部がストレッチ素材の白いチュチュ、コール・ド・バレエの女性は上部がシンプルなコルセットタイプとなり、プルミエール・ダンスーズはコルセットに装飾が付き、さらにティアラがプラスされる。エトワールについてはこの数年、シャネルがチュチュとティアラを担当。今回は3月にエトワールに任命されたオニール八菜が今回初めてシャネルのコスチュームでステージを歩き、拍手喝采を浴びた。レヴェランスにも時間をかけ、この瞬間を満喫しているようだった。瞳を輝かせたギヨーム・ディオップそして少々緊張気味のマルク・モローが続いて、と男性の新エトワール2名の登場にも会場は熱い反応を示したのは想像に難くないだろう。なおこの晩、降板中のローラ・エッケと海外公演中のレオノール・ボラックのエトワール2名が不在だった。

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生徒と団員全員がエクトル・ベルリオーズの「トロワの人々」にのせてステージ上を歩く恒例のデフィレ。日頃はステージ裏に隠されているフォワイエ・ドゥ・ラ・ダンスがデフィレでは行進の出発点となるため、観客はシャンデリアとゴールドに輝く壁の美しい空間も堪能できる。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

デフィレの開幕は女子生徒から。その後エトワールまで階級順に女性ダンサーが登場し、その後に男性が続く。1月に昇級したダンサーにとっては歩く順番が少し後になって……という変化を実感できる場なのだ。来年5月にアデュー公演が発表されているエトワールのミリアム・ウルド=ブラムにとっては、これが最後のデフィレとなった。前シーズンでオペラ座でのキャリアを終えたエミリー・コゼットはこのデフィレで大勢の観客を前にアデュー。プルミエ・ダンスールのオードリック・ブザールは自身のインスタグラムでこれが彼の最後のデフィレとなると書いていて……。観客にも感動的なデフィレだが、ダンサーたちにとってもさまざまなことが胸に去来する感慨深いものに違いない。

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エミリー・コゼットは出産後あまりステージに立っていないので若いバレエファンにはなじみが薄いだろう。彼女は2007年5月7日、オペラ・バスティーユで『シンデレラ』の主役を踊りエトワールに任命された。その時のパートナーはマチュー・ガニオ。ガラのデフィレでという今回の例外的なアデューの際もこの任命時を思い出させるように、彼に背を押されてステージ前へと歩んで彼女は観客に挨拶した。ジョゼ・マルティネス芸術監督から花束を受け取り、ほかの女性エトワールたちからの抱擁を受け、おなじみのゴールドの紙吹雪に包まれて彼女はパリ・オペラ座に別れを告げた。

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シャネルによるコスチュームで3人の女性エトワールが踊った創作。

オーレリー・デュポン前監督の構想による女性振り付け家3名の3作品がシーズン開幕公演である。ガラではそれに先立って、デフィレの後に元団員で在籍中にもパリ・オペラ座に作品を振り付けているニコラ・ポールによる創作『Singularités Plurielles』が踊られた。デュポン前監督が目指した“フェミニニティ”を尊重し、マルティネス芸術監督が選んだ創作ダンサーはタイプが異なる女性エトワール3名(アマンディーヌ・アルビッソン、ヴァランティーヌ・コラサント、オニール八菜)だ。振り付けはコンテンポラリーだが彼女たちが履いていたのはトゥシューズ。これは就任当時からクラシックダンスのテクニックを使った創作が欲しいと語っていた芸術監督の希望が反映された作品である。

衣装はシャネルが担当。アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールはこの作品のために2種の衣装をデザインした。ひとつは2023年の春夏コレクションからのインスピレーションによる胸元にサテンの黒いリボンをあしらったピンク色のボディウエアで、黒い背景とステージ上に置かれ彼女たちがマニッシュなポーズで座る赤い肘掛け椅子とコントラストを生み出していた。フェミニニティとマスキュリニティを遊ぶという創作に合わせ、ふたつ目は2019/20秋冬コレクションの1ルックだったツイードのスーツをアレンジしたマニッシュなダブルのスーツ。黒いサテンのラペルは共通だが3名の白黒のツイードは微妙に織りが異なっていた。ピンクのトゥシューズで踊られるぱきぱきとした振付の伴奏はピアノと4種の管楽器による生演奏。“ハンサム・ウーマン”3名が踊った、8分と短いが見ごたえのある小品だった。

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ニコラ・ポール創作『Singularités Plurielles』より。©Chanel

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リハーサルより。素晴らしい仕立てのツイードのマニッシュなスーツとピンクのトゥシューズがコントラストをなす。©Chanel

創作『Singularités Plurielles』、シャネルのコスチュームについてヴァランティーヌ・コラサント、オニール八菜が語る。©Chanel

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女性の振り付け家による3作品。

その後20分の幕間の後、シーズン開幕公演のトリプルビルが踊られた。マリオン・モタンの創作『The Last Call』は強い印象を残す複数のタブローが続く青春ロックオペラといった感じだ。ラテックスのコスチュームをつけたダンサーたちが色鮮やかな照明の中で激しく床上を動き回る30分。それに次ぐもうひとつの創作はシェー・シンの『Horizon』で、こちらは軽く透ける素材の衣装とオーガニックな振り付けである。アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」を思わせる緩やかな音楽にのせ、スモークが満たす空間でダンサーが踊る浮遊感あふれる30分。正反対ともいえる2創作がパリ・オペラ座のレパートリーに加わったのだ。どちらもコール・ド・バレエの中でもコンテンポラリー系で力を発揮するダンサーたちが創作に参加したのだが、この創作それぞれにふさわしいダンサーが選ばれているキャスティングが見事である。

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マリオン・モタン創作『The Last Call』。アレクサンドル・ボカラ(コリフェ /写真右)が“生”、アクセル・イボ(スジェ)が“死”を踊り、コール・ド・バレエの中でも強い個性が持ち味のダンサーたちが彼らを囲む。photos:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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シェー・シン『Horizon』。オペラ座のコンテンポラリー作品に欠かせない恐るべき身体能力の持ち主ルー・マルコー=ドゥアール(写真左)を含むコール・ド・バレエ9名が踊る。photos:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

締めくくりはクリスタル・パイトの『The Seasons' Canon』。2016年に彼女がオペラ座のために初めて創作した作品で、初演の晩にスタンディングオベーションを巻き起こした傑作である。54名という大勢のダンサーを有効に使った見事な構想による作品は、このガラ公演でも再びスタンディングオベーション!!

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群れをなす人間の身体が最大限に振り付けに取り込まれ、公演のたびに劇場内に大きな感動を巻き起こす『The Seasons’ Canon』。photo:Juliien Benhamou/ Opéra national de Paris

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スーペとアフターパーティ。

公演後はパリ・オペラ座のオペラとバレエの演目のメセナであるTaittinger(テタンジェ)のシャンパンサービスから始まったグラン・フォワイエでの夜食(スーペ)。料理とサービスが任されたのは高級ケータリングのSaint Clair(サン・クレール)で、デザートを含め4名のシェフによるクラシックをベースにしたコンテンポラリーな味わいが招待客を喜ばせた。夜食が終わる頃には地下から音楽が響き始め、アフターパーティのスタートだ。ブルーの照明でダンスホールと化したロトンド・デザボネは若いダンサーたちやガラの招待客が入り混じって踊り……エネルギッシュに新シーズンが開幕した。

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スーペに参加するエトワールたちと芸術監督が大階段でカメラマンのフラッシュを浴びた。女性たちはエミリー・コゼットを除き全員がシャネル。男性陣はジュエリーでおしゃれを楽しんだ様子で、ジェルマン・ルーヴェはクラシックな蝶ネクタイにシャルロット・シェネのチェーンという組み合わせだった。際立っていたのはArturo Obegeroの服にAlan Crocettiのジュエリーをつけた新エトワールのギヨーム・ディオップ! photo:Mariko Omura

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左: ディナーテーブルがセットされたグラン・フォワイエ内。 右: アフターパーティの会場は地下のロトンド・デザボネ。photos:(左)Virgile Guinard、(右)Mariko Omura

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オペラ・ガルニエに輝きを添えたシャネルが似合うセレブリティたち。

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シャネルのアンバサダーのCharlotte Casiraghi(シャルロット・カシラギ)。2022/23メティエダール・コレクションより。photo:François Goizé

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アンバサダーで女優のMarine Vacth(マリーヌ・ヴァクト)。2019/20秋冬クチュールコレクションより。©Chanel

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歌手HollySizことCécile Cassel(セシル・カッセル)。2023/24秋冬プレタポルテコレクションより。©Chanel

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アンバサダーのAlma Jodorowsky(アルマ・ジョドロフスキー)。2020年春夏オートクチュールより。©Chanel

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女優Joana Preiss(ジョアナ・プライス/左)は2023/24秋冬コレクション、女優Elodie Bouchez(エロディー・ブーシェ/右)は2023/24秋冬プレコレクションより。photo:François Goizé

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シャネルのアンバサダーのひとり、女優Rebecca Marder(レベッカ・マルダー)。2022/23秋冬クチュールコレクションより。©Chanel

editing: Mariko Omura

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