わくわくするパリ・オペラ座のシーズン24/25。ガラと10公演そしてエトワール2名のアデュー。

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3月20日、シーズン24/25のプログラムが発表された。ポスターに用いられているのはオペラ『マノン』のワンシーン。オペラについてはネーフ総裁が、バレエについては芸術監督ジョゼ・マルティネスが内容を発表した。シーズン24/25の詳細はhttps://www.operadeparis.fr/info/saison-2425にて。photos: Mariko Omura

3月20日、パリ・オペラ座の新シーズン2024/25のオペラとバレエ作品が総裁アレクサンドル・ネーフとバレエ団芸術監督ジョゼ・マルティネスによって発表された。「愛し続けよう、踊り続けよう、歌い続けよう」というシーズンのスローガン、そして明るいオレンジ色のシーズンカラーとともに発表されたバレエのプログラムは、新作を含め次のとおりだ。クラシック作品、ネオクラシック作品、コンテンポラリー作品がバランスよく組み込まれた喜ばしいシーズンと言えそうだ。なおレパートリー入りする6作品は、3作がクリエイション、既存作が3つで、その1つは学校公演においてだ。過去に創作された作品をベースに新創作という試みが2作品ある。マルティネス芸術監督はプログラム構成に際してのベースは、「カンパニーの歴史へのオマージュであると同時に、また現在のセレブレーション、未来へ向ける視線」ということだと語った。なおこのシーズン中、イタリアおよび日本へのツアーの可能性があるそうだがまだ未定である。

デフィレに始まるシーズン開幕ガラ(オペラ・ガルニエ)は10月1日に行われる。合計で来シーズンはバレエが183公演。短期滞在でも複数の演目が見られる時期がいくつかある。プログラムとにらめっこして、次のパリ旅行を考えてみてはどうだろう。

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ガラは10月1日。デフィレの女性エトワールのコスチュームはルサージュによる刺繍が施された胴着、そしてチュチュ、ティアラだ。

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「William Forsythe /Johan Inger」

10月4日~11月3日/オペラ・ガルニエ/13公演

ウイリアム・フォーサイスの『Rearray 』と『Blake Works 1』、ヨハン・インゲル『Impasse』の3作品が踊られる。『Rearray』は2011年にシルヴィ・ギエムとニコラ・ル・リッシュにロンドンで振り付けられた作品をベースに、今日のダンサーに合わせて創作されるという珍しいものだ。創作ダンサーはリュドミラ・パリエロとタケル・コスト。『Blake Works 1』は2016年にオペラ座バレエ団のためにクリエイトされた。オペラ・ガルニエだけでなく海外ツアーも含め何回も踊られていて、ステージに立つのをダンサーたちが楽しみにしている作品のひとつである。インゲルが振付と舞台芸術を担当の『Impasse』はレパートリー入りする作品だ。なお10月1日のガラではデフィレに続いて踊られるのがこの3作品。そしてガラだけのお楽しみというイメージが強いデフィレが、この「ウィリアム・フォーサス/ヨハン・インゲル」の10月4日、9日、10日の公演の冒頭で行われる。公演のチケット料金は10〜115ユーロだが、デフィレのある3公演は10〜170ユーロ。

ケネス・マクミラン『Mayerling』

10月29日~11月16日/オペラ・ガルニエ/14公演

2月の来日ツアーで踊られた『マノン』を創作したケネス・マクミランによる、もうひとつのドラマティック・バレエ『マイヤリング』が再演される。この作品はシーズン2019/20に踊られる予定が新型コロナ感染症の影響で劇場閉鎖となり、パリ・オペラ座のレパートリー入りは2022年10月となった。この時に主役ルドルフに配役されたのはステファン・ビュリオン、マチュー・ガニオ、ユーゴ・マルシャン、ポール・マルク。あいにくと公演途中でマチュー・ガニオとジェルマン・ルーヴェが怪我をしたため、代役だったフロリアン・マニュネがかなりの数の舞台をこなすことになった。ステファンもフロリアンも引退している。男性ダンサーにとって技術的、体力的、精神的にハードなルドルフ役に誰が新たに配されるのだろうか。2022年の公演においてはジェルマン・ルーヴェは年末公演の『コンタクトホーフ』の稽古ゆえに『マイヤリング』は踊れなかったのだが、今回は? マルティネス監督によると5配役で踊られるそうだ。

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ケネス・マクミラン『マイヤリング』より。

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ピエール・ラコット『Paquita』

12月5日~1月4日/オペラ・バスティーユ/23公演

オペラ座バレエ団のためにピエール・ラコットが『パキータ』を創作した2001年の公演では、マニュエル・ルグリやジョゼ・マルティネスが主役ルシアン・デルヴィリィに配役されていた。その後海外ツアーも含め、ほぼ毎シーズンのように踊られていたが......今回は2015年のコペンハーゲンツアー以来の公演だ。オペラ・ガルニエではなく、初めてオペラ・バスティーユでの公演ということなので舞台芸術などが新しくなるのだろうか? なおこの公演でパリ・オペラ座は2023年4月に亡くなった創作家ピエール・ラコットにオマージュを捧げる。

アレクサンダー・エクマン『Play』

12月7日~1月4日/オペラ・ガルニエ/23公演

遊び心あふれる『プレイ』はガルニエ宮のステージを高さは目一杯、かつ観客席まで活用してエクマンが2017年にバレエ団のために創作した、タイトルどおりに遊び心いっぱいの作品だ。現在活躍が続くキャロリーヌ・オスモン(スジェ)だが、この創作時にエクマンによってその個性が発見され、作品にも生かされている。新型コロナ感染症に伴う劇場閉鎖ゆえ2020年初夏に予定されていた再演は、2021年9月に実現された。約40名のダンサーが踊る中、創作と再演時のメインダンサーはマリオン・バルボー(プルミエール・ダンスーズ)とシモン・ル・ボルニュ(スジェ)だったが、現在2名ともサバティカル期間が続いている様子なのでこのふたりに誰かが代わるのだろうか......。なお、12月31日の大晦日をパリ・オペラ座バレエで!と考えている人はこの『プレイ』で。チケットは特別料金で40〜260ユーロ。

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『プレイ』より。写真上はマリオン・バルボーとシモン・ル・ボルニュ。下はキャロリーヌ・オスモン。photos: Ann Ray/ Opéra national de Paris

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ジョン・クランコ『Onéguine』

2月8日~3月4日/オペラ・ガルニエ/18公演

2009年にマニュエル・ルグリのアデュー公演があり、レパートリー入りしたのが『オネーギン』。このシーズンの配役はオネーギン役は彼に加え、ニコラ・ル・リッシュ、ジョゼ・マルティネス、エルヴェ・モロー、そしてタチアナ役はイザベル・シャラヴォラ、オーレリー・デュポン、ドロテ・ジルベール、クレールマリ・オスタ......懐かしい名前のオンパレードである。その公演期間中、イザベル・シャラヴォラとレンスキーを踊ったマチアス・エイマンの2名が4月16日にエトワールに任命された。2020年の来日ツアーで踊られたが、パリの最後の公演は2018年に遡り、ローラ・エケがタチアナ役を初演で踊ったのがこのシリーズだ。そのローラ、そしてレパートリー入りに際しては怪我で参加できず2011年の再演時に初役で踊ったマチュー・ガニオの2名のエトワールが2025年にこの作品でアデュー公演を行う。

ルドルフ・ヌレエフ『La belle au bois dormant』

3月8日~4月23日、6月27日~7月14日/オペラ・バスチーユ/30公演

1997年にヌレエフが再創作した『眠れる森の美女』の全幕が最後に踊られたのは、2013年の12月と10年以上も前のことだ。昨年12月2日に開催された『くるみ割り人形』の公開リハーサルに続いたQ&Aタイムに、踊りたい作品は?と質問されたポール・マルクがこの作品名を挙げ、さらにシーズン24/25のプログラムに入っていることをリーク。喜び余ってのことだろう。多くのダンサーたちが夢見るプリンス役、オーロラ姫役。配役の発表を楽しみに待とう。

なおひとつのバレエにしては公演数が多いが、シーズン中に間を空けて2シリーズあることからだ。これには、若い世代にヌレエフ作品を踊らせる機会であり、新しい才能を観客が発見する機会となるというマルティネス芸術監督の意図がある。

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ルドルフ・ヌレエフ 版『眠れる森の美女』photo: Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

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「Sharon Eyal / Mats EK」

3月27日~4月18日/オペラ・ガルニエ/17公演

シャロン・エイアルの『OCD LOVE』は彼女の既存作がこのシーズンのために再創作されてレパートリー入りする。マルティネス芸術監督はエイアルにオペラ座のために彼女が創作し、2021年に初演された『Faunes』の再演を提案したところ、彼女からポワントでの創作の希望を告げられた。エイアルにとって初のポワント作は、彼女が2015年に創作した『OCD LOVE』をベースにすることになったそうだ。

マッツ・エクの『アパルトマン』も『パキータ』同様に約10年ぶりに踊られる。ニコラ・ル・リッシュは2014年7月9日のアデュー公演を自身が組み立てたガラ形式で行っていて、最後の締めは彼による『ボレロ』で、途中、シルヴィ・ギエムと『アパルトマン』からドアのパ・ド・ドゥを踊っている。テレビ、掃除機、ソファ......全作品が踊られた最後は2012年3月。この時同様に音楽は今回もステージ上でFleshquartet(フレッシュカルテット)によるライブだ。

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マッツ・エクの『アパルトマン』より。

「Ecole de danse」

4月24日~4月29日/オペラ・ガルニエ/4公演

学校公演で踊られるのはプラテル校長の希望が叶いレパートリー入りするAntony Tudorの『Continuo』、そしてオーギュスト・ブルノンヴィルの『ナポリ』とモーリス・ベジャールの『7つのギリシャの踊り』の3作品。なお生徒によるガルニエ宮のステージ上でのデモンストレーションは、12月15日、21日、22日に行われる。

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マニュエル・ルグリ『Sylvia』

5月8日~6月4日/オペラ・ガルニエ/19公演

オペラ座で踊られる『シルヴィア』にはジョン・ノイマイヤーの創作があり、その全編が踊られたのは2005年3月と20年も前のことだ。『シルヴィア』はそのほか1876年創作のルイ・メランテ版、それをベースにしたライセット・ダルソンヴァルが再創作した版もオペラ座のレパートリーにある。新シーズン、マニュエル・ルグリ版がレパートリーに加わる。マルティネス監督はルドルフ・ヌレエフの教えを継続し、エコール・フランセーズを守るルグリのこの版を選んだそうだ。

「Hofesh Shechter」

6月10日~7月14日/オペラ・ガルニエ/20公演

パリにも多くのファンを持つイスラエル出身の振付け家ホフェッシュ・シェクターは、常に振付および音楽を担当している。2022年にフランスで公開されたセドリック・クラピッシュ監督の『En corps(邦題『ダンサー イン Paris』)では、本人役で映画出演も果たした。この作品ではプルミエール・ダンスーズのマリオン・バルボーが女優デビューをし、その好演はセザール映画賞の新人女優にノミネートという結果をもたらした。パリ・オペラ座で彼の作品が初めて踊られたのは2018年で、10名弱の女性ダンサーによる『The art of not Looking Back』の公演に際して観客に耳栓が配られたエピソードがある。2022年3月には『Uprising』と『In your rooms』の2作品がレパートリー入りした「ホフェッシュ・シェクターのソワレ」が行われた。新シーズンの創作は、彼が自身のカンパニーではなく他所のカンパニーに長編を振り付ける初の作品となる。過去の仕事を介して彼がオペラ座で知る約15名のダンサーに創作されるそうだ。

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なおプログラム中、『眠れる森の美女』『マイヤリング』『オネーギン』の再演およびホフェッシュ・シェクターによる創作は前芸術監督オーレリー・デュポンが在任中にすでに決めていたものだそうだ。彼女が辞任を発表したのは2022年6月である。振付家への創作依頼や音楽家のスケジュール確保などかなり前から予約が必要な要素があり、プログラムの組み立ては一朝一夕でできるものではなくシーズン開始の2年半前から始まっていたことがこのことからよくわかるだろう。マルティネス芸術監督による100パーセントのプログラムは2025/26から。パリ・オペラ座におけるコンテンポラリー作品として彼がどういった振付家の作品をプログラムするかが興味深いが、これはあと1年先のお楽しみだ。

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こけら落としが1875年1月だったオペラ・ガルニエ。2025年はその150周年を祝う。そのプログラムとして1月24日にガラ、5月11日にコンサートが行われる。photo: Mariko OMURA

Opera de Paris
www.operadeparis.fr
バレエ公演チケット料金
オペラ・ガルニエ(12月31日を除く) 10〜170ユーロ
オペラ・バスティーユ 15〜170ユーロ

editing: Mariko Omura

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