ディオールとダンス、より美しくより強く結びつく。

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クリスチャン・ディオールが情熱を傾けたクラシックバレエ。創設者同様に現在のクリエイティブ ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリもまた、この芸術表現に対しておおいなる敬意と愛情を抱いている。パリ・オペラ座バレエ団でエトワールとして在籍中にローマ歌劇場バレエ団の芸術監督に就任したエレオノーラ・アバニャートとの出会いをきっかけに、彼女は『Nuit blanche(白夜)』(2019年)のコスチュームをローマのバレエ団のためにクリエイトした。この作品はパリ・オペラ座バレエ団のセバスチャン・ベルトーの振り付け。ダンサーたちの身体にバラの花が咲いているような衣装はファンタジー、ポエジーがダークグレーやグリーンといったモダンな色合いと組み合わさって、モダニティがあふれていた。

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『Nuit blanche (白夜)』のコスチュームをつけて、後方中央のエレオノーラ・アバニャート、フリーデマン・フォーゲル、セバスチャン・ベルトーを囲むダンサーたち。Dior_Opera de Rome ©Julien Beanhamou

ローマ歌劇場バレエ団との2度目のコラボレーションは、2022年にアンジュラン・プレルジョカージュが創作した『Nuit Romaine(ローマの夜)』のため。エレオノーラが夜の女神役で、フリーデマン・フォーゲルが生命を夜に得る半裸の彫像だった。この作品は国際ダンスデー40周年を記念して在イタリア・フランス大使館であるローマの美しい建築物であるパラッツォ・ファルネーゼを舞台に踊られた映像作品で、プレルジョカージュは監督も務めている。4月26~28日、この作品がパリのパレ・デ・コングレで、舞台作品として初めてローマ歌劇場バレエ団によって踊られた。この公演では''夜''シリーズ第3弾の『Nuit dansée(舞踏の夜)』もパリで初上演。ジョルジオ・マンチーニによるモダンタッチの力強さとクラシックバレエのポエジーが結びついたオーガニックな振り付けで、音楽はフィリップ・グラスのピアノ・コンチェルトが用いられていた。ダンスとクチュールという人間の身体あって成立するふたつのアートが生み出すシナジーが、ステージ上に開花した宵だった。ちなみにジョルジョ・マンチーニは日本で開催された「ル・グラン・ガラ」で踊られた『トリスタンとイゾルデ』、『マリア・カラス~踊る歌声~』の創作者である。

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4月26〜28日にパレ・デ・コングレで行われたローマ歌劇場バレエ団の公演『ローマの夜』『舞踏の夜』より。 © JULIEN BENHAMOU © OPERA ROMA © ELEONORA ABBAGNATO

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プリーツ、レース、シフォン......オートクチュールの素材とサヴォワールフェールを用いた繊細なステージ衣装がディオールのアトリエで製作された。

マリア・グラツィアはパリ・オペラ座のためのコスチュームデザインも行っている。ショーに際して繰り返しコラボレーションした振付家のシャロン・エイアルが、オペラ座のダンサーのために2021年に『Faunes』を創作した時に彼女は男女のダンサーに共通のコスチュームをクリエイト。創作ダンサーのひとりマリオン・バルボーは、''セカンドスキンのようでとても踊りやすいコスチュームだった''と語っていた。

パリ・オペラ座との関係は衣装デザインに留まらず。春夏コレクションで発表したバレリーナシューズ「D-ジョイ」と「ディオール ソンジュ」のための映像に、エトワールのパク・セウンを起用。彼女は最近は『ドン・キホーテ』で弾けるようにキトリを演じて踊り、『ジゼル』では第1幕の若い村娘と第2幕の精霊を見事に踊り分け......オペラ座のエトワールという肩書きにふさわしい活躍が目覚ましい。バレリーナシューズの映像は2本あり、1本目はパールがエレガントなD-ジョイ。履き心地が本物のバレエシューズのよう......と言いながらロン・ドゥ・ジョンブ、タンデュといったテクニックを披露し、ブリゼで締めくくり。もう1本ではソフトでシルキーな素材の''ソンジュ''を履いてデガジェ、デヴロッペ......ステージでは聞くことのできない彼女の韓国語の語り(英語の字幕付き)がチャーミングだ。

ディオールと男性ダンサーとの繋がりもある。1月に発表されたメンズコレクションはパリ・オペラ座で芸術監督を務めたダンサーのルドルフ・ヌレエフがインスピレーション源で、ショーにはジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン、マルク・モローの3人のエトワールが出席した。時計「シフル ルージュ」がコレクション誕生20周年を祝う今年、エレガンスとクチュール的美学のディテールを取り入れた8モデルが発表される。真っ黒なボディに、ムッシュー・ディオールが''生命の色''と表現した赤がリューズと数字の8に! この新生シフル ルージュのための映像ではエトワールのユーゴ・マルシャンが時計を左手首につけて、ステージに出る直前の60秒間のルーティンやステージ上での瞬間を、時間との関わりで語っている。セウン、ユーゴに次いで、これからもディオールとパリ・オペラ座のダンサーとのコラボレーションが続くことを期待しよう。

editing: Mariko Omura

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