エトワールのローラ・エケ、10月10日のデフィレでアデュー。

2007年にはマニュエル・ルグリが座長を務めた「ルグリと輝ける仲間たち」で、2016年にはバンジャマン・ペッシュの「エトワール・ガラ」で来日しているLaura Hecquet(ローラ・エケ)。優れたテクニックの持ち主で、長身でクールビューティ系の気品あふれるダンサーである。あいにくとキャリアの後半、怪我に見舞われてステージから遠ざかった期間が長かったので、最近のパリ・オペラ座バレエファンにはなじみが薄いダンサーかもしれない。『ジゼル』のミルタ役、『ラ・バヤデール』のガムザッティ役、『ドン・キホーテ』の街の踊り子役、『イン・ザ・ナイト』の3番目のカップル役は与える印象もダンスもどちらかというと硬質な彼女には、どれもはまり役だったと言っていいだろう。これらを踊った彼女の姿は、観客の心にしっかりと刻まれている。

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エトワール、ローラ・エケ。彼女は1984年4月生まれなので、シーズン2025/26にオペラ座の定年42歳を迎える。1シーズン先倒しのアデューだ。写真は2018年のデフィレから。photography: OnP

ローラは2年間オペラ座のバレエ学校で学び、2002年にカンパニーに入団した。2005年にスジェに上がり将来を嘱望されたものの、プルミエールに上がるまで9年を費やし、その間の1年間は怪我で休んでいる。エトワールに任命されたのはプルミエールに上がった2015年3月23日。オードリック・ブザールを相手に『白鳥の湖』を踊り、エトワールに任命された彼女は、バンジャマン・ミルピエが芸術監督時代に任命した唯一のエトワールだった。

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強い印象を残した『ジゼル』のミルタ役。

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左: 『ドン・キホーテ』。第1幕で登場する踊り子役は実に見ごたえのあるものだった。©️OnP  右: 2021年の『ル・パルク』は内部だけの公演だったのが残念だ。©️Yonathan Kellerman

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ローラン・プティの『若者と死』(写真左 ©️Ann Ray/OnP)、クリスタル・パイトの『Seasons' Canon』(写真右 ©️OnP)などネオクラシック作品やコンテンポラリー作品にも配役され、幅広いジャンルで活躍したダンサーだった。

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『マイヤリング』ではラリッシュ公爵夫人役で女優ぶりを発揮。今シーズンの再演で彼女が見られないのはとても残念だ。©️Ann Ray / OnP

前シーズン、開幕ガラのデフィレでオペラ座にエミリー・コゼットがアデューを告げ、そして5月18日には『ジゼル』でミリアム・ウルド=ブラムがアデュー公演を行った。ローラは、今シーズンの開幕公演『ウイリアム・フォーサイス/ヨハン・インゲル』で行われたデフィレを最後のステージに選んだのだ。今年3月の新シーズンプログラム発表の時には、2018年に初役で踊った『オネーギン』のタチアナ役で来春にアデューの予定だっだが......怪我からの復帰がままならない状態なのかもしれない。

この10月1日のデフィレは来年3月1日に『オネーギン』を踊ってオペラ座を去るマチュー・ガニオにとっては最後のデフィレということもあり、ローラのアデューと相まって観客席の盛り上がりもひときわだった。デフィレの後、ジョゼ・マルティネス芸術監督が花束を持って登場し、アデューでおなじみの金色の紙吹雪が天井から舞い落ちて......。途中、彼女はこの瞬間を忘れまいとするかのように、ステージの上方に閉じた目を向けてしばらく不動のポーズをとっていたのが印象的だった。彼女の胸に去来する思いを観客も分け合った瞬間だったと言える。最後、エトワールのひとりずつにハグをし、彼女はパリ・オペラ座のステージに別れを告げた。

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左: 最近は劇場で渡される公演当日の配役表の表紙に、その日が公演の最後となるダンサーの名前がエトワールに限らず明記されるようになっている。 右: ジョゼ・マルティネス芸術監督から花を受け取ったローラ・エケ。photography: Mariko Omura

editing: Mariko Omura

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