パリ・オペラ座とシャネル、フレンチエレガンスの出合い。

シャネルがデザインした衣装で、ガラ公演の創作『Word for Word』が踊られた

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10月1日、オペラ・ガルニエでChanel(Grand mécène de l'opéra national de Paris)、Rolex(Montre de l'Opéra national de Paris)の協力を得て行われたパリ・オペラ座バレエ団のシーズン開幕ガラ。このために創作されたMy'kal Stromileの『Word for Word』はシャネルのデザインによるコスチュームで踊られた。photography: ©️Philippe Servent

10月1日にガルニエ宮で開催されたAROPが主催するパリ・オペラ座バレエ団のシーズン開幕ガラ。この晩のために、マイカル・ストロマイによって『Word for Word』が創作された。配役されたダンサーはヴァランティーヌ・コラサント(エトワール)、オニール八菜(エトワール)、ギヨーム・ディオップ(エトワール)、ジャック・ガツォット(プルミエダンスール)、ルーベン・シモン(コリフェ )の5名。ヴァランティーヌとギヨームのパ・ド・ドゥがあり、八菜とジャックのパ・ド・ドゥがあり、そこにルーベンが加わってのパ・ド・トリオがあって、という12分の作品である。 機械的なサウンドにいつしかピアノが参加し、メロディーや和音を奏でてゆく音楽に乗せて、5名がクラシックのテクニックを鮮やかに駆使してステージ狭しと踊って会場を沸かせた。

マイカルにとって、これはパリ・オペラ座のための初創作である。彼をジョゼ・マルティネス芸術監督に推薦したのは、ウィリアム・フォーサイスだそうだ。ジョゼの意向を受けて、マイカルが作り上げたのはクラシックの技術を取り入れた現代作品。彼はそれについて、「これはバレエそのものについてのバレエ。芸術形式が世代を超えて忠実に受け継がれ、同時に常に再解釈されている様子を探ったものです。この作品は過去と現在、技術と芸術性、そして静的な形式と生きた進化する言語としてのバレエという概念そのものの間で対話を引き起こすことを目的としています」と語っている。

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『Word for Word』。左からジャック・ガツォット、オニール八菜、ギヨーム・ディオップ、ヴァランティーヌ・コラサント、ルーベン・シモン。photography: ©️Philippe Servent
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創作者マイカル・ストロマイは、デフィレで開かれる舞台奥のフォワイエ・ドゥ・ラ・ダンスのクラシックな美しさも作品に取り込んだ。photography: ©️Philippe Servent

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ここ数年、ガラの公演だけで踊られる特別な作品のコスチュームをデザインするのは、パリ・オペラ座バレエ団のグラン・メセナを務めるシャネルだ。2018年には当時の芸術監督オーレリー・デュポンとマリインスキー劇場のディアナ・ヴィシュネヴァがオハッド・ハナリンの『ボレロ』のパ・ド・ドゥを、カール・ラガーフェルドがデザインしたシンプルな黒のコスチュームで踊ったのが始まり。その翌年のガラでは6名の女性ダンサーたちが、それぞれが異なる花をあしらったロマンティックチュチュをゆらめかせてセルジュ・リファールの作品『ヴァリアッション』を踊った。2020/21年の開幕ガラでは『グラン・パ・クラシック』を踊るヴァランティーヌ・コラサントとユーゴ・マルシャンのために、星が煌めくブルーのコスチュームがデザインされた。昨年のニコラ・ポールの『Singuralités plurielles』では3名の女性エトワールのコスチュームは、ツイード素材のパンツスーツとピンク色のドレスだった。

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シーズン2020/21年の開幕ガラは、2021年1月に行われた。この晩に踊られたオベールの『グラン・パ・クラシック』のためにシャネルがデザインした衣装を着けたヴァランティーヌ・コラサント。photography: Olivier Saillant/ ©️Chanel
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2023/24年シーズン開幕ガラのために創作されたニコラ・ポールの『Singularités plurielles』より。photography: Julien Benhamou/ OnP

今季に創設されたジュニア・バレエのメセナもシャネルが務め、バレエ団とメゾンの関係は年を経るごとに、より緊密になってゆく。そんな中で、パリ・オペラ座とシャネルとの対話から『Word for Word』のためのコスチュームが生まれた。女性2名は、繊細で淡く上品なピンク色のチュチュで、モチーフがエンボス加工されたシルク・ジャカードはこの衣装のために開発された素材だ。カメリア、ロゴの背中合わせのCC、チェーンの控えめなモチーフが照明の光に浮き上がる布地である。チュチュはチュールの上に重ねられた複数層のサテンオーガンジーのふんわりと軽やかなギャザーがチャーミング。胴着はビュスティエ風ではなく珍しいホルターネックスタイルで、前と後ろのオートクチュールのアトリエで編まれた同系色のブレードがあしらわれている。クラシックでもあり、コンテンポラリーとも言える。男性3名はシャネルジャケットを想起させる黒いツイードのジレに黒のタイツを合わせるコスチュームだ。ジレのツイードのブレードが、ポケットに見えるトロンプルイユの遊びがある。男性は黒、女性はデリケートなピンク色。これはコスチュームにコントラストを求めたマイカルの希望だった。彼は衣装について次のように語っている。「この衣装は伝統と革新の探求の延長上にある重要な要素です。シャネルとのコラボレーションによって、クラシックバレエの時代を超えた優雅さと、現代的で進歩的な美学を融合することができました。コスチュームが振り付けと同時に、バレエの豊かな歴史に敬意を表しつつ、その限界を押し広げるものにしたかったのです」と。

次の開幕ガラでは、どのような作品が創作され、どのようなコスチュームがシャネルによってデザインされるのだろうか、と早くも気になってくる。

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上: チュチュはチュールの重なりではなく、サテンオーガンジーが波打つように用いられてボリュームを出している。 下: チュチュの背中の透かし模様入りゴールドのジュエリーボタンは、男性のジレにも用いられている。photography: ©️Philippe Servent
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ツイード素材のジレには、ポケットが4つついているようなトロンプルイユが。photography: Agathe Poupeney / OnP

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シャネルを纏ったパリ・オペラ座エトワールたちの輝き

ガラの宵、会場に姿を見せた女性エトワールたちの多くがシャネルで選んだフルコーディネートだった。最近シャネルのアンバサダーに就任したオニール八菜を包んでいたのは、なかなか大胆なシースルーのドレスで、出産直後でデフィレには参加しなかったアマンディーヌ・アルビッソンは、ファンタジーツイードのシャネルのジャケットにパンツを合わせて会場で観客となって公演を鑑賞。レオノール・ボラックとパク・セウンはカメリアをモチーフにした柔らかな素材のフェミニンなドレスがよく似合っていた。それぞれが自分の個性に合うコーディネートで、記念すべき一夜をエンジョイしたのだ。エレガンスで知られるパリ・オペラ座のダンスのスタイル。その優れた踊り手であるエトワールたちこそ、シャネルというメゾンの最高のセレブリティではないだろうか。

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上: オニール八菜。彼女が着ているのはシャネルの2024年春夏プレタコレクションのルック64である、刺繍付きのシルクオーガンジードレス。 photography: ©️Chanel  下: ジェルマン・ルーヴェと。 photography: François Goizé ©️Chanel
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ユーゴ・マルシャンとポーズをとるドロテ・ジルベール。彼女はシャネルの2024年春夏コレクションからメタリックに輝くコットンジャージーのジャケットとパンツをチョイス。 photography: François Goizé ©️Chanel
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レオノール・ボラック(左)はシャネルの黒とシルヴァーのモスリンドレス。パク・セウンは白、黒、シルバーで刺繍が施されたウールのドレスで。ふたりとも靴、バッグももちろんシャネルでまとめて。photography: ©️Chanel
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上: ヴァランティーヌ・コラサント。シャネルの秋冬プレタコレクション2024/25から黒とシルバーの玉虫ジャージーのジャンプスーツで。photography: ©️Chanel 右: アマンディーヌ・アルビッソン。シャネルのファンタジー・ツイードのジャケットと黒のシルクパンツを合わせて。photography: ©️Chanel
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上: 10月10日のガラで、42歳より1年早くアデューをするローラ・エケ。シャネルの2024年春夏プレタコレクションのギピュール刺繍のドレスで。photography: ©️Chanel 右: 最新エトワールのブルーエン・バティストーニが着ているのは、シャネルの刺繍を施した黒のチュールドレスだ。photography: ©️Chanel

パリ国立オペラ座の主要な支援メゾンのシャネルがサポートするオープニングガラ。オニール八菜がガラとコスチュームを語る。

editing: Mariko Omura

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