パリ・オペラ座の11年ぶりの『眠れる森の美女』で、待望のプリンスが登場!
パリとバレエとオペラ座と 2025.04.03
パリ・オペラ座バレエ団でルドルフ・ヌレエフ版の『眠れる森の美女』が最後に踊られたのは、2013年12月4日から翌年1月4日までだった。その時のファーストキャストがエレオノーラ・アヴァニャートとマチュー・ガニオ、ゲストキャストとして2回踊ったのがスヴェトラーナ・ザハロワとダヴィッド・ホールバーグという配役。この4名ともすでに引退していることを思うと、時の経過を感じずにはいられない。


トマ・ドキール(プルミエ・ダンスール)も初役でデジレ王子を踊った。パートナーはイネス・マッキントッシュ(写真)とエロイーズ・ブルドン(写真下)の2名。photography: Agathe Poupeney/OnP
3月8日、オペラ・バスティーユで『眠れる森の美女』のファーストシリーズがブルーエン・バティストーニ✕ギヨーム・ディオップでスタートした。ファーストシリーズは4月23日まで続き、6月27日から7月14日までがセカンドシリーズだ。セカンドシリーズでは主役がエトワール4カップルというのに対し、ファーストシリーズはスジェも主役を踊る公演が含まれている。パリ・オペラ座バレエ団の未来を背負うだろう若手に関心を持つバレエ関係者とバレエファン、そしてカンパニーのダンサーたちを劇場に集めたのは、3月14日に踊られたHohyun Kang(カン・ホヤン/プルミエール・ダンスーズ)とLorenzo Lelli(ロレンツォ・レッリ/スジェ)の公演だ。
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美しきプリンセス、カン・ホヤン(プルミエール・ダンスーズ)

ホヤンは『マイヤリング』が初演された際に主役マリー・ヴェッツェラにコリフェながら配役され、確かな技術と演技力でこの大抜擢の期待に見事にこたえた。また『ドン・キホーテ』のキトリ役も鮮やかに踊っている。ウィリアム・フォーサイスの『Blake Works I』ではその細く長い手脚を武器にステージ上で光り輝き、イリ・キリアンの『Gods and Dogs』のインプロビゼーションでは驚くほどの柔軟性を披露したかと思えば、同じキリアンの『Petite Mort』ではテクニックの見事さに加えて彼女独特のほのかな色香を漂わせ......2024年2月の来日公演『マノン』ではニンヌ・セロピアンとともに高級娼婦役を踊って客席を楽しませた彼女。あらゆるタイプの作品で魅力を発揮する万能選手である。『眠れる森の美女』では実に優美でピュアなプリンセスだった。
ロレンツォ同様に彼女もパリ・オペラ座バレエ学校では学んでいない。ソウルの芸術総合学校でバレエを学んだときの教授のひとりがオペラ座バレエ団出身のキム・ヨンゴルで、彼からパリ・オペラ座の入団試験を受けることを勧められたそうだ。そしてロレンツォと同じように彼女も1年間契約団員を務めた後、2018年に正式団員となった。初参加したコンクールでコリフェにあがり、2023年からスジェとして踊り、そして今年、プルミエール・ダンスーズに任命方式で昇級。オペラ座のピラミッドの最高峰まであとちょっと!の美しいダンサーだ。
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堂々たるプリンスデビューを果たしたロレンツォ・レッリ(スジェ)

これまで彼の名前を聞いたことがなかったという人も多いに違いない。もっとも2024年2月の来日ツアーで『白鳥の湖』にコール・ド・バレエで参加した彼はワルツやマズルカで踊ったので、187cmの長身でもあることだし、注目した人もいるだろう。イタリア南部のアブルッツォ州で2003年7月4日に生まれた彼。現在21歳である。彼がバレエを学んだのは、ミラノのスカラ座バレエ学校にて。そこでオペラ座出身のフランス人教師に学んだことから、パリ・オペラ座を目指すようになったそうで、契約団員を1年務めた後、念願叶って2023年に入団した。入団年の最初のコンクールでコリフェに昇級。そのパフォーマンスで披露した正確で美しいテクニックとステージ上での彼の存在感は見る者を魅了するものがあり、今後オペラ座のピラミッドを彼はやすやすと上がってゆくだろうと予測させた。昇級後、早速『ジゼル』で収穫のパ・ド・ドゥに抜擢され、そして今シーズン、コンクールではなく任命方式によりコリフェからスジェに昇級した。

『眠れる森の美女』のデジレ王子は彼が踊りたいと願っていた役のひとつである。入団わずか1年半でその夢を叶えた彼。3月14日、カン・ホヤンを相手にプリンス役を踊り、コンクールで見せた無駄のない美しく力強いテクニックを余すことなく披露する機会に恵まれた。彼がその長い脚を空間にあげると、そこにはエレガンスという文字が見えるほどだった。芸術面を要求される役はこれが初仕事であったので、一度だけのホヤンとの公演では発揮できずに終わった部分も多いだろう。それでもプリンスにふさわしい風貌と優美さあふれる踊りで観客を魅了したことは間違いなく、降板したポール・マルクに代わってエトワールのパク・セウンのパートナーも果たすことになったのだ。これにより彼はエトワールへさらに一歩接近したといえそうだ。
さて、その彼がもうひとつ踊れたらと祈っているのは『ロミオとジュリエット』のロミオ役である。この作品はシーズン2025/26にプログラムされているので、彼のロミオをぜひ見てみたいものだ。長身で整った顔立ちの彼である。今後パリ・オペラ座で踊られるクラシック作品で多くの主役を務めることになるだろうし、その正確でエネルギーあふれるテクニックはとりわけヌレエフ作品で発揮されるはずだ。『ラ・バヤデール』のソロール役も似合いそうだし、少し演技慣れした時には『ドン・キホーテ』のバジル役も魅力的に踊ることだろう。
パリ・オペラ座で次に彼が初役で挑むのはマニュエル・ルグリの『シルヴィア』のエンディミオン役。美しい羊飼いという役柄も彼には似合うに違いない。
『La Belle au bois dormant』(3時間10分)
Opéra Bastille
ファーストシリーズ
会期:開催中〜2025年4月23日
セカンドシリーズ
会期:2025年6月27日〜7月14日
料)15〜160ユーロ
https://www.operadeparis.fr/
editing: Mariko Omura