夏に訪れたい、日本の山と高原のリゾート3軒。
ホテルへBon Voyage 2019.08.01
1. 土佐の原風景とおいしい食事に癒やされる。
オーベルジュ土佐山
土佐山/高知県
山間に建つ瀟洒なオーベルジュ。自然の情景を壊さぬよう木造りの建てものはシンプル&スタイリッシュ。
高知市内から宿までは車でわずか30分ほど。周囲はすでに美しい山と清流に囲まれた土佐山地域に入ります。その支部にある中川と呼ばれる集落の活性化を目指し、地元の人々が集い10年以上もの集落経営構想を経て、1998年7月、地域活性化に挑もうと、ここ「オーベルジュ土佐山」の開業となりました。
オーベルジュ土佐山はいくつかの建物にわかれており、ここは中心となる建物の間に造られた水場の空間。
あふれんばかりの自然に囲まれ、そっと佇むモダンなオーベルジュ。おいしく新鮮な山の幸、川の恵み、そしてもちろん高知の海の恵みも食卓に並ぶ、豊かな食事のオーベルジュとして20年以上も高い支持を受けています。遠くからの旅行者や観光客のほかに、地元の人々や近くの地域の人も訪れ、すっかり人気のオーベルジュとして成長し存在感が出ています。
4棟のヴィラ(離れ)が川沿いに点在。内装はモダンでゆったりとした贅沢な客室。テラスでは川の流れや山の緑との一体感に癒される。
ヴィラのベッドルームは贅沢な別荘のような造り。
土佐山付近の林野率は90%といいますから、まさに山に抱かれる宿です。そして、県下三大鍾乳洞「菖蒲洞」など、周囲には見どころも多く、とりわけ平成の名水百選に選ばれた清流・鏡川の源流域に位置することから、空気と水のおいしさは訪れる人々を癒やしています。
豊富な野菜はいずれも地元産。新鮮な食材で作る料理もおいしい。
極上の鰹は料理長秘伝の藁焼き手法で仕上げ、土佐の天日塩とともにいただく贅沢な一品。
また、「オーベルジュ土佐山内」には、天然温泉である土佐山温泉が湧き出ており、日帰り温泉も楽しめます。リラクゼーション施設とともにゆったりと寛ぐ休暇を満喫できることが魅力です。
客室は全16室。清流に面したホテル棟の客室が12室、ヴィラ棟4室もこの流れに面したテラス付きの離れです。全室にテレビがないことから、せせらぎの音や小鳥の囀り、温泉三昧、山の散策など、里山の自然と戯れてみてはいかがでしょう。また、日常とは違うお喋りに花を咲かせるのもいいかもしれません。しかし圧倒的な魅力は、誰もが納得の食事が提供される「土佐流のおもてなし」にあります。料理長が腕を振るう料理は、土佐ならではの旬をたっぷりと食すこだわり料理の数々。都心から高知の山奥へ旅をするのも、豊かな食文化や美しい自然に包まれるオーベルジュの魅力に誘われるからなのです。
「オーベルジュ土佐山」の天然温泉。露天風呂も併設。
高知県高知市土佐山東川661
tel:088-850-6911
www.orienthotel.jp/tosayama/concept
客室数:16室(ホテル棟、ヴィラ棟)
施設:温泉、ダイニング、リラクゼーション施設、ショップ、ほか
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2. カミツレが優しく香る、日本初のビオホテル。
カミツレの宿 八寿恵荘
池田町/長野県
緩やかな坂に建つホテルの前景。隣接して別棟にカミツレ研究所がある。
名峰が連なる北アルプス山麓の安曇野地域。その田園地帯に隣接する池田町の小高い山間に、日本初のビオ(BIO)ホテルジャパン認証を取得した小さなホテルがあります。その名は「カミツレの宿 八寿恵荘」。2015年5月15日に全面改装によってリニューアルオープンし、厳しいビオ認証のガイドラインをクリアして日本初の「ビオホテルジャパン認証」となりました。建築、内装、食事、入浴剤などすべてにビオ基準を満たし、風呂は、ロングセラーを誇る自社製品の入浴剤「華密恋」(100%カミツレエキス)をたっぷりと使った「華密恋の湯」が用意されています。
ホテルの周囲に広がる無農薬のカミツレのファーム。5月から6月、周囲はカミツレの香りに包まれ、10万本といわれるカミツレの収穫が始まる。
現経営者のご祖母様の名である「八寿恵」から命名されたというクラシカルな名は、横文字の多い現代において、いまはかえって新鮮に映ります。また、名前3文字のすべてが幸福や幸運に繋がる意味があることが、運命的にこの宿をビオに導いたのかもしれません。
1階にあるツインルームは一部屋のみの洋室仕様。
2階に揃う和室。シンプルだが眺めのいい和室は居心地もいい。
「らうんじ」に造られた薪ストーブ。右がゆったりとした「だいにんぐ」。
カミツレとは、カモミールの日本名です。「カミツレの宿 八寿恵荘」では、カミツレをコンセプトに掲げる側面から、多彩なゲストがここに集い、知り合い、健康に楽しく過ごしてほしいと提案しています。日本では、江戸時代からこのカミツレの薬効が知られ、愛用されてきたといいますが、まだまだ知らない人も多いものの、広く知れわたる日も近いような気がします。
宿の周辺には10万本ものカミツレが育つ畑が広がり、有機JAS認定の8,000坪におよぶカミツレ自社農園を所有しています。ホテルは、その広大な畑に囲まれており、まさに5月から6月のカミツレの花が満開の時期には、イベントも開かれ、穏やかで新鮮なカミツレの香りに包まれる桃源郷のような様相になるのです。私たちにとって最も幸せな人生は、真摯であること、健康であること、人と人との穏やかで優しい関係の構築にあり、この宿ではそうした謙虚な志をもとに、スタッフ一同がゲストを迎えてくれています。
ビオの食事は安心安全なだけではなくおいしい。洋食をベースにした独自の八寿恵荘キュイジーヌは大好評。
ホテル内で用いる野菜は、丁寧な作業のもとに生産されるこの畑で採れる無農薬野菜が中心。
客室は全7室。カミツレ畑を見に来る人、予約制のヘルシーなランチをグループで食べに来る人、もちろん宿の詳細を知ってやってくるリピーターも多くいます。近年では外国人グループも多く、食事の魅力を堪能したり、北アルプス付近の散策を楽しんだりと目的はさまざまなようです。お部屋に置かれたフレッシュハーブのカモミールティーのおいしいこと……! ビオの料理も安心、琥珀色のカミツレのお風呂もハーブの薬効力が効能を発揮しています。
カミツレエキスを豊富に含んだ「華密恋の湯」は入浴後もポカポカ、湯冷めしにくく、疲れもすっきり。
19年3月、「八寿恵荘」を運営する会社SouGoは、「ヘルスツーリズム大賞」団体部門・奨励賞を受賞。さらに、昨年の12月から本社ビル(東京都)や長野事業所・八寿恵荘の電力使用において、再生可能エネルギー電力を順次導入。昨年は「第6回 グッドライフアワード」環境大臣賞優秀賞も受賞しており、ホテルとしての内部充実に取り組んでいる姿は、簡単ではない努力の賜物でしょう。そして今度は、30年に向け、SDGs達成に取り組み、社会貢献を掲げています。
エントランス近くのレセプションに隣接したショップでは、華密恋ブランドの入浴剤や化粧品、お茶など自社製品のほか、ビオに対応した自然派の製品も並ぶ。
長野県北安曇郡池田町広津4098
tel:0261-62-9119
http://yasuesou.com
客室数:8室
施設:だいにんぐ、きっちん、らうんじ、華密恋の湯、ふれあいの間、
ツリーハウス、カミツレの畑、カミツレ研究所(隣接)
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3. 華やかな物語が紡がれる、軽井沢のクラシックホテル。
万平ホテル
軽井沢/長野県
格式を感じる瀟洒なリゾートホテルのエントランス前景。
瀟洒な佇まいの「万平ホテル」は、軽井沢の緑のトンネルを抜けて、最奥の静かなロケーションにあります。周囲は森に隠れる憧れの別荘地。プライベート感に満ちた環境の中で、長い歴史を刻んできたホテルです。
もとは、1764年に創業した旅籠「亀屋」から誕生ストーリーが始まります。現在の「万平ホテル」となったのは、1894年(明治27年)のこと。その後は1945年(昭和20年)から7年間も米国に接収されていたといいます。
重厚感のあるロビーは昔から変わらない趣。
ホテル内で最も話題作りが多い場所とされるバー。バーマンとの会話を楽しむゲストが多く訪れる。
また有名な話として、第1回の東京オリンピック時には馬術競技のプレス関係者の宿舎として利用されたり、1976年からの4年間は、ビートルズのジョン・レノンが亡くなる前年まで、毎年このホテルで休暇を過ごしていたという華やいだエピソードも。老舗の高級ホテルには、語り尽くせぬストーリーが隠れています。すでに時代は令和に入り、明治、大正、昭和、平成という長い歴史を積み重ねてきました。
アルプス館の客室のひとつ。1936年(昭和11年)築のホテルを代表する和洋折衷クラシックツインルーム。猫足バスタブも。
ライティングデスクの備わる書斎タイプの部屋。
2019年の夏、名門クラシックホテルは開業125年目を迎えます。若者にも人気が高い理由は、もちろん軽井沢の高級避暑地の趣に惹かれることもありますが、肩に力の入らない、気取りのない温かなもてなしが知られているからでしょう。年齢層はさまざまで、たとえばバーではバーマンとの会話を楽しみに来るハードユーザーがいたり、おいしい朝食のオムレツ目的に来る女性たちや、結婚式を挙げた記念日に毎年訪れるカップルなど、クラシックホテルらしい穏やかな空気感に包まれています。
4名まで利用可能なファミリータイプのコテージスイートはプライベート感たっぷり。
客室は、和洋折衷の「アルプス館」がホテルのアイコン的な存在でもあり、猫足のバスタブ、床の間や床柱が印象的です。ほかに、01年夏にリニューアルされた「ウスイ館」、スタンダードタイプの「アタゴ館」、家族で楽しめる「別館」、「コテージスイート」などタイプの異なる客室が揃っています。
メインダイニングルームでの食事は伝統的なフランス料理のほかに、中華料理、日本料理、カフェ、バーがあります。メインダイニングルームに入ったら、貴重な格天井や、壁のステンドグラス、アンティークのシャンデリアなど、いまでは造ることさえ難しい匠の技を、どうぞお見逃しなきよう……。
昭和11年築、本館のメインダイニングルームは芸術性も伝統的意匠も圧巻。
写真はアメリカンブレックファースト。ふわふわでおいしい朝食のオムレツは、多くのゲストがリクエストする古くから人気の定番メニュー。
メインダイニングでは、伝統のレシピを採り入れたフレンチが基本。「虹鱒のムニエル」も人気の高い定番メニュー。
軽井沢らしい瀟洒なホテルでのひと夏の休暇。憧れのホテルに長逗留をすれば、顔見知りになったベテランのホテルマンやバーマンからさまざまなホテルストーリーが聞けるかもしれません。また、周辺観光も、グルメ散策も、軽井沢でなら飽きることなく、何日あっても休暇は足りそうにありません。
ジョン・レノン・ファミリーも利用していたことで知られるカフェテラス。緑に包まれるデッキでのティータイムで、軽井沢らしさを満喫。
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
tel:0267-42-1234
http://mampei.co.jp/
客室数:109室
施設:レストラン、バー、カフェ、ウェディングサロン、ショップ、ほか
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Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com