ホテル インディゴ シンガポール カトン
シンガポール
プラナカン文化を体現した、シンガポールのホテル。
ホテルへBon Voyage 2019.08.30
東南アジアのシンガポールでは、華人、マレー系、インド系、ユーラシア系、プラナカンなど、多様な民族の国家として、国民は多文化を受け入れながら暮らしています。数えきれないほどシンガポールを訪れているにもかかわらず、国名である「シンガポール」がサンスクリット語で「シンハ(獅子)」を語源としていることは、勉強が足りず、5、6年前に知ったことでした。
さてそのシンガポールで特異な文化をいまに継承しているのが、プラナカンと呼ばれる人々です。プラナカンとは、15世紀後半にマレー半島に移住した中国人と、マレー系の女性との間に生まれた子どもの子孫・末裔たちを指しています。
彼らは中国に戻らず、マレー半島に居住。シンガポールにおいて欧州文化と融合し、自分たち独自のプラナカン文化を形成してきました。今回ご紹介するのは、IHG(インターコンチネンタル ホテルズグループ)が展開するブティックホテル「ホテル インディゴ シンガポール カトン」。人気ブランド「インディゴ」を通して、プラナカン文化をホテルに表現しました。
ホテルの正面。手前のクラシカルな建物内はレストラン&バー「Baba Chews & Bar」とライブラリー。ここがシンガポールの保存建築物である「ジョー・チャット旧警察署」。
環境を意識して造られた壁の緑が、暑いシンガポールでは癒やしの場。
まさにプラナカン文化の残るカトンエリア、文化遺産の多いジョー・チャット地区に立つ「ホテル インディゴ シンガポール カトン」。2016年7月5日に開業したインディゴは、その土地の文化を踏襲しながらも斬新なデザインを施し、カジュアルでパーソナルなサービスをモットーとしています。いままでに、パリと香港のインディゴにも泊まりましたが、パリでは隣接のガルニエ宮(オペラ座)の演目やスターなどカルチャーをテーマとしていて、香港では昔といまの香港の魅力が館内にたっぷり詰めこまれているなど、それぞれ地元ならではの特徴が明快で、伝統的な食文化やアートを追求した造りもおもしろく、すっかりインディゴのファンになっています。
ここシンガポールでは、ホテル内の随所に、プラナカン伝統の意匠がデザインされ、パステルカラーをふんだんに使ったカラフルな家具調度品や、壁の模様、ランプなどがビビッドで、明るくキュートなホテルが出来上がっています。
華やかな絵柄や色合い、家具などはプラナカン伝統文化を踏襲。
おもしろい気付きもありました。客室はすべてが細長く、幅の広い部屋はありません。これはプラナカンハウスと呼ばれる伝統様式とのことで、奥へ奥へと延びる細長い客室は、日本の京町家を彷彿とさせます。
プラナカンを意識しながらも現代的でキュートなデザインの客室。
珍しく窓に面した洗面キャビネット。その裏側にシャワールームがある。
バスタブのある客室も、水回りは窓際に。どの部屋でもベッドやリネン類には上質感がある。
そして、ホテルの一部であるレストラン&バー「Baba Chews & Bar」の建物部分は、シンガポールの保存建築物「ジョー・チャット旧警察署」が使われています。
保存建築物のため、内装の天井や床、窓など多くの部分を元のまま残して改装されたレストラン。ここは中華料理、シンガポール料理、インド料理、そしてマラッカ海峡の伝統料理など、カジュアルなメニューを提供するオールディダイニングであり、もちろん、プラナカン料理も楽しめます。
このライブラリー空間を通ってレストランへ。ライブラリーが旧警察署の保存建築と客室棟の新しい建物を繋げる空間。
ミーティングルームもカジュアルな設えとカラフルな色合いが特徴。
レストラン&バー「Baba Chews & Bar」のバー部分。レストランが最もプラナカン文化を現代風にアレンジした場所で、華やかな色合いや派手な飾りが印象的。ダイナミックな料理を目当てに、宿泊客のみならず外からも多くの客が集まる人気レストラン。
プラナカンの子孫たちは、男性をババ(Baba)、女性をニョニャ(Nyonya)と呼び、それにちなんでレストラン名が付けられました。最もうれしかったのは、料理のおいしさはもちろん、コーヒーや紅茶、ジュース類なども丁寧に作っているのがわかったことです。
屋上プールはインフィニティプール。暑いシンガポールでは、一日中ゲストが絶えない場所。
全体的にホテルのクオリティには、独創性と上質感がありました。リーズナブルな料金をはるかに上回る価値を感じ、シンガポールでもうひとつの魅力に出合ったような印象でした。(K.S)
86 East Coast Road, Singapore 428788
tel:+65-6-7237001
客室数:131室
料金:ワンベッド237.50シンガポールドル~、ツインベッドシンガポールドル~(2月ベストレート参考価格)
施設:レストラン&バー、ラウンジ、会議用スペース、フィットネスジム、屋上スイミングプール、ほか
アクセス:チャンギ国際空港から11km(約15分)
www.ihg.com/hotels/jp/ja/singapore/sinki/hoteldetail
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Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com