K5
日本橋/東京都
日本橋に誕生、街の活性化をうたうホテルの新潮流。

中央区兜町の東京証券取引所の静かな裏通りに佇む、ホテルらしからぬ建物に、目立つ看板もないホテルが誕生しました。

ここの正式な地域名は「日本橋兜町」といい、その由来はというと、“平将門の兜を埋めて塚にした場所を兜山と言ったところから”と伝えられています。現在は投資家が集う証券の街であり、どう見てもビジネス地区ですが、ここにイノベーティブな人々や若い投資家、ライフスタイルやアートにこだわりのある、感性の鋭い人々にぴったりの個性的なホテルが生まれました。

2006xx-bon-voyage-01.jpg

重厚感のあるビルの美しさを守り、大きな看板や目印などを付けていない。ホテルの控えめなプレートが目印。

ホテルの建物は、もともと1923年に建てられ、元銀行として使われた兜町第5平和ビルです。ずっしりとした重厚感や、いまでは貴重な当時のハイクオリティで頑強なビル自体を使い、躯体を残したまま耐震構造を加え、館内を全体的にリノベーションしたといいます。高い天井や贅沢な建築資材は、素人目にもわかるほど。当時の技術の粋を極めた建物だったに違いありません。

このホテルを誕生させたのは、それぞれに起業家、クリエイター、キュレーターとして活躍する気鋭の青年3名です。ホテルの企画・開発・運営、そしてブランディングやプロモーションという、それぞれの担当を担っています。そして現場の個性派スタッフがそれを盛り上げている、まさに独立系ブティックホテルの精鋭たちが造りあげた、新しい形のホテルなのです。

2006xx-bon-voyage-02.jpg

1階の入口を入ると小さなレセプションがあり、その左手にはコーヒーショップ、バー、レストランがある。

ビジョンはシンプルですが奥深いもの。「街づくりに貢献する会社へ」とし、日本橋兜町の再活性化を図ろうというプロジェクトです。ホテル名の「K5」は、建物名の「兜町第5平和ビル」から、Kabuto(兜)のK、第5の5を組み合わせて名付けられました。また、ホテルの建物内を複合型とし、新たに「マイクロ・コンプレックス」という考え方を貫きました。2階から4階はホテル「K5」、1階は飲食フロアとして、人気レストラン「カビ(Kabi)」が新店舗「ケイヴマン(Caveman)」を手がけています。ゲストの朝食はここで、宿泊客以外の人もここで食事することができます。また同フロアには、話題のコーヒーショップ「スイッチコーヒー(Switch Coffee)」も造られ、店内には香ばしいコーヒーの香りが漂っています。小さなスペースですが、田中開氏と野村空人氏がプロデュースするバー「アオ(Ao)」も出店しています。

2006xx-bon-voyage-03.jpg

ライブラリーバー「アオ」は、図書館とバーが一体化したサロン。アジアのお茶や漢方をベースにしたカクテルを提供。日中はティーサロンとして営業。

2006xx-bon-voyage-04.jpg

廊下の片面には窓を造り、明るさを重視。

忘れてならないのは、地下1階のビアホールでしょう。ニューヨークのクラフトビールブランド「ブルックリンブルワリー」のフラッグシップ店「ビー(B)」が開業し、店内はまるでニューヨークの一角のようで、兜町にいることを忘れてしまいそうです。

肝心な部屋数はというと、20㎡〜80㎡の客室が全20室揃っています。テーマは「都市における自然との共存」。空間デザインのこだわりは、やはり自然でした。“Returning to the Nature”(自然に返る)とうたう上質な客室内には緑が多く配されており、天井が高く開放感があるのも、都会ではうれしい要素です。

2006xx-bon-voyage-05.jpg

「ジュニアスイート」(43㎡)。K5オリジナル家具や広いバスルームが特徴。

2006xx-bon-voyage-06.jpg

「K5ロフト」(80㎡)は最上級のスイートルームで、天所高は4.5m。K5の世界観が最も表現された客室。

いままでの日本のホテルとは大きく印象の違うデザインは、インテリア・プロダクトデザインともに、ストックホルムを拠点とする3名のデザインユニット「クラーソン・コイヴィスト・ルーネ(Claesson Koivisto Rune)」率いるデザインチームが担当しました。ホテルの概念を超えて自由な発想で造り上げたホテルの誕生に、頼もしさも感じます。さらに、日本文化を意識しながら、若い人々の感性とパワーがホテルを軸に地域活性化に挑む姿は頼もしく、可能なかぎり応援したい気持ちになりました。(K.S)

2006xx-bon-voyage-07.jpg

スイートルームに設えられた、広いバスルームとバスタブ。

2006xx-bon-voyage-08.jpg

エントランスに掲げられた、控え目な案内版。

2006xx-bon-voyage-09.jpg

夜のホテル前景。右端はエントランス、1階には植栽に彩られたコーヒーショップやレストランが望める。

*現在、部分的に営業再開中。火・水曜は全館休業。(客室を通常の50%に限定して予約受付)6月からの営業については公式サイトで告知。

K5
東京都中央区日本橋兜町3-5
tel:03-5962-3485
客室数:全20室
室料の目安:¥47,000~
施設:カフェ、レストラン、ビアホール、ほか
https://k5-tokyo.com

※この記事に記載している価格は、標準税率10%の税込価格です。

※無断転載禁止

photos : K5

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
コスチュームジュエリー
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.