KEIRIN HOTEL 10 ~玉野市/岡山~ 「競輪」のイメージを変える、スタジアム隣接のホテル誕生!

文/せきねきょうこ

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スイートルームから見えるスタジアムのバンクと瀬戸内海。photo:温故知新

風光明媚な瀬戸内の岡山県玉野市にある宇野港は、瀬戸内に浮かぶ島々への玄関口にもなっている港。3年に一度開催される「海の復権」をテーマにした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」は、100万人も訪れる人気の祭典でもあります。その玉野市には、72年の歴史を持つ「玉野競輪場」があります。

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日本初の競輪場に生まれたホテル「KEIRIN HOTEL 10」の全景。photo:温故知新

この競輪場に隣接し、プロスポーツの熱気を浴びながら、さらなるエンターテイメントが味わえるスタイリッシュなホテルがオープンしました。日本で初となる「競輪スタジアム内のホテル」として、玉野市から競輪場運営を受託するチャリ・ロト(東京)が整備したプロジェクトであり、ホテルプロデュースを手がける「温故知新」が運営をしています。地上8階建てのホテルは選手の宿舎の役割もあり、客室から迫力のあるレースを間近に観戦できる日本で唯一の「泊まれる競輪場」の誕生です。

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ホテルエントランスの壁に掲げてあるのは「あなたが10番目の選手」という歓迎のホテルコンセプトワード。椅子も競技場で実際に使われていたもの。photo:温故知新

ホテルのコンセプトは、「YOU ARE THE 10TH RACER」と掲げられました。スピード競技である競輪は走者9名で競うことから、ゲストを10番目の仲間に見立てています。エントランスにも館内にもこのコンセプトが掲示され、ゲストはプロの競輪選手が闘う姿を間近に観ながら、競技スポーツの迫力に圧倒されます。訪れた日にレースはありませんでしたが、本気で練習をするレーサーの息遣いまで聞こえ、鳥肌が立つほど感動的でした。

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初めて見る競輪のバンク(選手が走行するコース)は楕円形で、落車防止やカーブでスピードを落とさず曲がるための「カント」が造られている。カントの傾斜は、一般人では立っているのも難しい25度~35度もある。photo:温故知新

競艇や競馬に比べ、競輪はいまだ若い女性やファミリー層に浸透していないのが現実。今回、このホテルに滞在したことで競輪について学びました。速ければ勝てるわけではないと謳う競輪。「バンク(競走路)の上を自転車で走り、誰が最初にゴールするかを競う競技で、単純にスピードを競うだけでなく、相手との駆け引きの要素が強いところが競輪の奥深さ」(KEIRIN GUIDEより抜粋)。売上金の一部は様々なスポーツやモノづくり、社会福祉などに役立てられています。また競輪場リニューアルで出た廃材や資材なども、一部は資源を未来へと繋ぐ役割を果たし再利用されています。

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老朽化で捨てられるはずの前スタジアム廃材、調度品などを再利用。アンティークなイメージがより新鮮に映る。photo:温故知新

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細部まで自転車を感じるロビーエリア。ガラス張りなのでここからもスタジアムが見える。photo:温故知新

確かにこれまでの印象は、男性主体の賭け事としてのイメージが主流でしたが、プロジェクトチームはここに着目し、スタイリッシュなホテル開業により、新たなスポーツ・エンターテイメントとしての発展を願い、女性にも、ファミリー層にもスタジアムに足を運んでもらえるように……とスタートしたのです。

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最上8階、2部屋だけの「オーシャンパンクビュー 半露天スイート・テラス付き」の明るい客室。通常は波の穏やかな瀬戸内海を見渡せ、静かで快適なリゾート。レース開催時は客室内から特等席として観戦できる。photo:温故知新

ホテルの客室は全149室。そのうち126室はバンクビュー(競争路側)であり、5階以上は全室テラス付きで外でスタジアムを眺められ快適そのもの。最上8階には2室限定の露天風呂付スイートルームが造られ、鮮やかな内装はロッカールームがイメージされています。この競輪場リニューアルには、「デザイン×サステナブル×地方創生」が基本となり、宿泊者以外も利用できる2階のガラス張りスタジアムレストランからは、間直にレース観戦が楽しめます。

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レストラン「FORQ」の夜の店内。ここで使われている椅子も、リサイクルで美しく蘇った以前の観覧席。photo:温故知新

館内のレストラン「STADIUM RESTAURAN FORQ」では、スタジアムやその奥に美しい借景となる瀬戸内海を眺めながら、スパイス料理や瀬戸内のレモンを使ったドリンクなどカジュアルな料理が提供されます。

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個性的なカレー、グラタン、スペアリブ、酒場的なメニューなどおつまみからメインディッシュまで岡山、瀬戸内の食材をメインにカジュアルに楽しめる。photo:温故知新

オリジナルグッズ販売のショップも有り、他に、競輪の魅力を発信するためのギャラリーや、サウナ、大小浴場も完備し、むしろリゾートホテルとしても十分にロングステイができる環境にあります。

KEIRIN HOTEL 10
岡山県玉野市築港5丁目18-3
TEL:0863-31-0555
https://keirin-hotel10.com/

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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