SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA ~軽井沢/長野県~ 軽井沢の夏、進化する森のホテルで過ごす休暇。

文/せきねきょうこ

2019年2月、極寒の軽井沢に「SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA」が誕生しました。とりわけ寒さの厳しい軽井沢ですが、このユニークで美しい流線型のホテルは、建物のデザインや建築資材、作り手の多くのストーリーを込めてゲストを迎え入れ、メディアにも数えきれないほど登場したのを覚えています。テーマは「ソーシャル・ホスピタリティ」でした。

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軽井沢の森に溶け込むように造られた優しい曲線の木造建築。坂茂氏は「建築にはあなたを幸せにする力がる」という。

それから時を経た今年、2022年、軽井沢が最も輝き賑わいを見せる緑の美しい6月に、このホテルに初めて向かいました。世界的な建築家であり、サステナブル建築の第一人者でもある坂茂氏が設計したホテルは、噂通りシンプルでモダン、個性あふれる小規模ブティック型のリトリートでした。ホテル名の謂れはいつも最初に知りたいと思う興味のひとつ。「ししいわハウス」の“ししいわ”と言う珍しい名は、ホテルの前を通る道路「ししいわストリート」の名前から付けられたといいます。

ホテルの設計デザインを担当した坂茂氏は、建築界の権威ある賞“プリツカー賞”を受賞した気鋭の建築家。これまでにも数々のユニークな建築物を世に送り出し、とりわけ環境に負荷をかけないサステナブルなコンセプトを持つ建築で世界的に知られています。

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この日滞在したのは木造パネル工法を採用した建物の2階、「No.1」と呼ばれる最初のホテル棟の2階でした。実はこのホテル、HDH キャピタル・マネージメントが出資する企業、HDHP GK社が開発したリゾート施設であり、同社のブティック・ホテル・コレクション第1号として誕生しましたが、現在、すでに隣接して、森に囲まれたよりダイナミックな印象の「ししいわハウス軽井沢No.2」がオープンしているのです。

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ドアを開け放ち自然光に満ちた空間は滞在者全員が自由に過ごせるコミュナルス・ペース(社交のスペース)。写真はホテル中心部の「グランド・ルーム」。

そしてこの当日、シンガポールから来日していたHDHP GKのディレクターであるHuyさんが専門的な構造に関する説明をしてくれました。「「No.1」の建物は木造パネル工法(PHPパネル)と、木材の「Aフレーム」37個の構造フレームをまずは工場で作り、それを現場で組み立てて施工した」と言うのです。そしてR型の優しい流線型の建物が出来上がり、3つのクラスターから成る10室の客室が誕生しました。客室はそれぞれにプライベート感が漂い、窓の外に迫る緑を眺めながら静かに過ごせる造りですが、3つのヴィラにはそれぞれに滞在者が自由に集えるリビングのような共有スペース「コミュナル・スペース」が造られています。それに、坂氏ならではの紙管の家具がベッドのヘッドボードやテーブルの脚部などに見られ、客室内は温かみのあるムードが漂っています。またプラスチックを使わない、アメニティのエコブランドなど環境配慮もしっかり怠りません。

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2階の客室のひとつ。特注の白いベッドリネンやタオル類は最高級ブランドの「Ploh(プロー)」を使用。坂茂氏のシグネチャーである紙素材が多く生かされ、椅子、特注ベッドの紙管ヘッドボードなど、随所に使われている。

隣接の「ししいわハウス軽井沢No.2」はドラマチックな印象の木造建築物です。 同じ坂茂氏のデザインにより造られ、より年齢層の若いカジュアルな雰囲気での利用を推進。1階に客室が12室造られました。2階は滞在者と、予約をすれば外部の人も楽しめる大きなテラス付きレストランがあります。レストランのフロアは開口12mで奥行き25mの柱の無い空間であり、ガラス戸を全面開いて外部との一体感を肌で楽しめるゴージャスな造りです。また、建物には階段の他に、2階へと続く緩やかなスロープも造られ、建物をぐるりと半周しながら2階のレストランへと向かうのも、森の中の空中散歩を楽しむようです。No.2の客室は20㎡、同じように木造ですが、ヒノキのバスタブが客室内に置かれているのが斬新です。

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2階客室のプライベート・バルコニー。緑を眺めながら森林浴もできそうな快適なスペース。

No.1はしっとりと静かなプライベート休暇を、No.2は若いジェネレーションが楽しめるよう、そして今、「ししいわハウス」はNo.3を、建築家、西沢立衛のもとに建築中です。日本伝統の本格的数寄屋造りというから楽しみはさらに大きくなるばかりです。

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「ししいわハウス軽井沢No.2」の建物。2階はレストラン、1階が客室12室。レストランへは建物に沿ったスロープが造られ森の空中散歩のよう。

SHISHI-IWA-HOUSE

長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147−768
https://www.shishiiwahouse.jp/

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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