界 由布院 ~由布市湯布院町/大分県~ 美しい棚田と手つかずの自然......原風景への憧れを楽しむ温泉。
ホテルへBon Voyage 2023.03.23
絵葉書のような美しい風景が湯布院町の町はずれ、「界 由布院」の周囲に広がっています。山々に囲まれた丘陵地に手入れの行き届いた棚田が広がり、四季が織り成す自然の彩や香りを宿に運んでくれます。秋には稲田の実りが黄金色に輝き、冬には時が止まったような静けさの中で、葉を落とした木々や静かな棚田に雪が降り……。私が訪れた初春の湯布院はまだ肌寒く、新緑も未だ遠慮がちでした。ここを訪れる人々は日本の原風景を想い、こうして季節の移り変わりを肌で感じながら、五感が癒され、心穏やかな時を過ごしています。星野リゾートが昨年夏、2022年8月3日に新たに開業したばかりの温泉旅館「界 由布院」が、コンセプトとして掲げる“棚田暦で憩う宿”とは、この自然環境を指しているのです。
勇壮な由布岳の麓に広がる老舗の人気温泉地、由布院温泉。その温泉地の中心からわずかな距離に、美しい棚田の情景が残る丘陵地があります。眠っていた棚田を整地し美しく元のように蘇らせた情景が、「界 由布院」の敷地の中央に広がっているのです。
元々大分県の大分とは「大いなる田」から由来し、田んぼや棚田にゆかりがあると伝わります。田植え前の輝く水鏡、新緑の季節の田植え、夏の稲穂の躍動感、そして前述のように秋から冬へと四季の彩が目の前に広がります。こんなにプリミティブな風景の中で名湯の温泉三昧ができるなんて、これ以上の贅沢はありません。由布院は温泉湧出量、源泉数ともに全国2位を誇っているといわれます。宿では由布岳を見ながら湯浴みができるよう、源泉掛け流しの「あつ湯」と「ぬる湯」のふたつの浴槽が造られ、露天風呂には寝湯も用意されています。泉質は化粧水と同様のメタ珪酸が多く含まれる柔らかな温泉ということで、心身をリラックスさせ癒しの効果が期待されています。
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「界 由布院」の建築デザインを手掛けたのは、「界 別府」に続き隈研吾氏。外壁色がチャコールグレーであることも、森に馴染むようにとの配慮からと言います。竹が多く使われており、細いものと太いものが組み合わされているのも印象的です。客室は「蛍かごの間」として、蛍かごを模した螺旋状の照明が寝室に飾られています。材質は七島藺(しちとうい)が使用され、柔らかな螺旋状のかごの中には、まるで蛍が光を放っているかのように小さな明りが点滅し、とても情緒的で心休まる照明です。大分産出のマダケや七島藺製の伝統工芸品に触れるのも“ご当地部屋”ならではの風情。日本の伝統や文化をあらためて知る機会にもなります。
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食事は、大分県の特産品である竹や小鹿田焼の器で提供される“季節の会席”の他に、とてもユニークな特別会席が用意されています。“野山の恵みを堪能する”として、大分県名産かぼすドレッシングのサラダや、滋味あふれるメイン「山のももんじ鍋」が特徴的です。すっぽんの濃厚な甘みのある出汁に、牛肉、鹿肉、イノシシ肉、アナグマ肉などジビエとの4種を、それぞれに合わせた4種のタレでいただく鍋料理です。さらに、界の「ご当地朝食」も印象的でした。山の恵みを感じる焼野菜を中心とした和食膳と、洋食膳の選択があり、いずれもボリュームたっぷりの贅沢な食事。2泊した私は、2回の朝に和洋の両方を楽しむことができました。
界 由布院
大分県由布市湯布院町川上398
Tel:050-3134-8092(界予約センター)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiyufuin/