界 ポロト ~白老町/北海道~ ピュアな静寂感にうっとり! 北海道、ポロト湖の湖畔に佇む宿。
ホテルへBon Voyage 2024.07.27
「界 ポロト」の建つ白老町は北海道の南西部に位置し、南には壮大な太平洋を望み、北は支笏洞爺国立公園の一角を形成する雄大な山々に抱かれる、まさに北海道らしいダイナミックな自然に包まれています。面積の約75%を森林が占めるといいますから、空気は澄み、静寂を楽しむにはもってこいの場所なのです。 近年では多文化共生の町として広く知られ、ウポポイ(民族共生象徴空間)のお陰で観光客や修学旅行生の訪問先でも賑わうようになりました。
「界 ポロト」(ポロトの意味はアイヌ語で"大きい")はそのウポポイ施設に隣接し、前面にはポロト湖が広がり、風光明媚なロケーションにあります。「界」は星野リゾートが運営する温泉旅館ブランドであり、ここ白老は界ブランドの19番目の施設となりました。開業は2022年1月14日。北海道初の界となった界 ポロトには、世界的にも珍しい植物由来の有機物を含む"モール温泉"が湧出し、紅茶色の温泉が肌をすべすべにしてくれます。遥か太古の時代、モール温泉の出る各地は葦などの植物が自生していたといいます。それらの植物が長い時間をかけて堆積し、できあがった亜炭層を通り植物性の有機物を多く含む"モール温泉"となって湧き出ているのです。
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「モール」とは、亜炭(泥炭)を意味するドイツ語に由来しています。そのモール温泉は、一般的な鉱物性温泉に比べて世界でも希少な泉質と言われる資源であり、腐植物(フミン酸)やコンディショニング作用のあるフルボ酸も含まれ、それから「美肌の湯」と言われているのです。そして2004年、この貴重な泉質からモール温泉は北海道遺産としても選定されています。
さて界 ポロトの特徴は、前述のロケーションやモール温泉の他に、旅館の建築設計にもありました。アイヌ文化を尊重し、宿泊者が多民族共生を体験できるよう建築家の中村拓志(ひろし)氏に依頼。敷地内にポロト湖を引き込み、施設のどこにいてもポロト湖を感じられるようしました。さらにポロトコタン(アイヌ民族集落)から着想を得て、アイヌ文化の建築の特徴である丸太組の三脚構造「ケトゥンニ」を基本とした湯小屋も建てられました。界 ポロト開業にあたり、事前の2018年6月、白老町とのパートナーシップ協定も締結されたといいます。
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こうして特別なロケーションに佇む温泉旅館ではありますが、客室に座りポロト湖眺めながら、本当に何も聞こえないピュアな静寂に酔いしれました。たまたま小鳥の鳴き声も止まり、無風状態で、車も通らない夕暮れ時、この静寂に感動し満足感に浸った時間でした。居心地のいい客室はすべてアイヌ民族の暮らすチセ(アイヌ民族の家)から着想を得たといいます。全室にしつらえてあるのが、チセでも必ずあったという四角い炉をイメージしたテーブルで、その炉には火を焚いているかのようにオレンジの光が灯され、炉を囲んで団らんをと願っています。他にも室内の壁には木彫りのオールが飾られ、壁紙やクッションなどにアイヌ文様が施されています。
そして北海道であることから期待感の高まる食事は、道産食材で作られる会席料理です。夕食には名産のジャガイモのすりながしにイクラとキャビアを乗せた先付に始まり、アイヌ民族が使っていたという丸木舟をモチーフにした舟形の器で供される「宝楽盛り」など、新鮮で豪華な北海道を最後まで堪能できました。北海道に旅する時間は、豪華な食事からも実感できたのです。
界 ポロト
北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
Tel:050-3134-8092(界予約センター)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com