アマン東京~大手町/東京~ 開業10周年に心からの「おめでとう」!神々しい天空の隠れ家を祝う。
ホテルへBon Voyage 2025.02.15
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10年前、「この森が無かったらアマンは誕生しなかったかもしれない」とまで言わせた都心の森、プレフォレスト「大手町の森」。都市を再生しながら自然を再生する、という開発コンセプトのもと、「日本一の都市の森」を目指したといいます。こうしてアマンの入るビルの麓、1階を3600㎡の本物の森が覆います。千葉県君津市の山林に約1,300m²(「大手町の森」全体の約3分の1)のスペースを確保し、土の起伏や人工地盤、土壌の成分、樹木の密度や種類などを、計画地同様にし、約3年かけてすべての成長を検証。この結果をもとに、君津から大手町に育成した土壌や植物をそのまま移植した「本物の森」の再現でした。10年が過ぎた今、森は見事に成長し大手町の一角を爽やかな緑に変えています。
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多くの話題を振りまき、2014年12月22日に開業した「アマン東京」は、早くも開業10周年を迎えています。アマン始まって以来の大型都市ホテルとして、パリでもロンドンでもなく、ニューヨークでもなく、初の舞台に極東の大都市「東京」が選ばれ、当時10年前には26軒(現在は38か所、以降4か所開業予定)のリゾートであったアマンが都会にできたことで、絶賛の声も落胆の声もありました。ただ、「アマン東京」の33階に広がるガーデンラウンジを訪れた人々は、和紙で囲まれたそのあまりに美しい巨大な吹き抜け空間に声を失い、驚愕し、誰もが空を見上げるように天井を見回していたのを覚えています。
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あの頃と変らぬ勇壮な富士山もくっきりと遠望でき、変わりゆく大都会を見下ろす眺望に興奮します。アマンを良く知る人々ならば、アマンがその国のその土地の歴史や文化に敬意を払い、寄り添う姿をご存じでしょう。ここ「アマン東京」でも、古くから私たちの祖先が親しんできた日本家屋の"縁側"や"床の間"などを、大切な場所として客室内に設定しています。玄関で靴を脱ぐ習慣も採り入れました。建築デザインを任されたケリー・ヒルは、何度となく日本に通い日本文化を詳しく学んでいます。さらにアマンの目指す高みを深く理解し、これまでにどこにも無かった和洋折衷、シンプルでありながら高級感に満ちた洗練された空間を造り上げました。
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ガーデンレセプションの中央の水場には、開業以来、季節の花や樹木が飾られ、自然から四季を感じる日本人の心に寄り添っています。この33階のレセプションデスクのバックを飾る挾土秀平の作品「11月の蔓」は、飛騨の山中で探した本物の蔓と実を使用したもので、10年後のいま、色合いや雰囲気がしっかりとアマンに馴染んでいます。1階のエントランスロビーの同氏の作品「晩秋の林を歩く」は落ち葉を集めて張られ、さらに34階エレベーターホールの壁「冬の華」は漆喰の造形が飾られ、これらが優れた左官・挾土秀平の鏝を用いた芸術3部作と言われています。見逃してはもったいない、エネルギーを感じる作品です。
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開業当時、日本中で話題となった「ブラック・アフタヌーンティー」についても語りましょう。その時まで、日本のホテルでは「ブラック」という言葉を使うことがありませんでした。"陽"のイメージがないことからホテルでは敬遠していたのですが、「アマン東京」では、あえてブラックを用いて洗練されたファッションようにイメージさせました。その反響は「とにかく凄かった」のです。予約は取れず、このオリジナリティのある、美味しいアフタヌーンティーを求めて若い女性を中心にゲストがひしめきました。そして10周年を記念して「ブラック・アフタヌーンティー復刻版」が期間限定(現在は終了)で提供されました。
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客室は開業以来、変わらずに84室(71㎡~)。館内全体のシンプルな高級感にため息が出ますが、ここ客室内もまた和のシンプルさに最上質のマテリアルが際立っています。バスルームの檜のバスチェア、片手桶、深い日本式の木製浴槽などが設置されています。
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開業当時と大きく違ったことといえば、ホテル内に鮨店舗「武蔵 by アマン」が、同ビル別の階にスイーツやパンの「ラ・パティスリー by アマン東京」ができたこと、そして厳選されたオーダーメイド製品や地元のライフスタイル製品、Aman Essentialsが選べる「ブティック」が生まれていることです。
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とにかく静かに、都会のハイダウェイ(隠れ家)らしく過ごせるホテルとして「アマン東京」は時を刻んでいます。まるで秘密裏のようにファンが増え、静かにホテルの最上質を楽しむ......これがアマンの流儀なのです。ゲストに媚びず、自画自賛もしないホテル道。これこそアマン魂の真髄です。
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アマン東京
東京都千代田区大手町1丁目5-6 大手町タワー
03-5224-3333
https://www.aman.com/ja-jp/
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Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com