【ソレルホテル・ザンクト・ペーター/スイス・チューリヒ】賑わう大都会の中心地にひっそり佇む、実力の隠れ家ホテル。
ホテルへBon Voyage 2025.11.23

チューリヒの旧市街の様子、ホテル「St.Peter」があるのはこの聖ペーター教会「Kirche St. Peter」の塔の真下。街の中心地でありながら静かな環境が特徴。
観光国家であるスイスの中で、近年とりわけ人気沸騰中の都会チューリヒは、世界中からの観光客で街中に活気が溢れ、レストランもカフェもまるで日本の京都のように賑わっている様子がうかがえました。世界のあちこちで気候変動による災害や紛争の起こる中、スイスは安心、安全、清潔な国とされ、この国に最初に到着する都会チューリヒですから当然かもしれません。周囲から聞こえてくる言葉は実にさまざまであり、さすがにインターナショナルな雰囲気は昔以上のような印象でした。

ホテルのエントランスとロビーの様子。観葉植物が多く、緑に包まれる雰囲気が好評。大きな窓からは、人気レストランのテラスが見える。
これだけ観光で盛り上がるチューリヒですから、ホテルも世界の要人やセレブリティを迎える最高級クラスの老舗ホテルや、斬新なデザインホテル、世界的な高級ホテルチェーンなど選択肢が多くあり、いざ自分で選ぶとなると決めるのもひと苦労です。今回、滞在したホテルは、利便性も良く、街の中心地にありながら全く静かな環境の"隠れ家ホテル"であり、ハイセンスな4つ星「ソレルホテル・ザンクト・ペーター」でした。3泊の滞在でしたが、このデザイン&ライフスタイルホテルの揺るぎない実力を肌で感じ、人気の理由がわかりました。

ロビーの一画に併設されたライブラリー兼ロビーラウンジ。ここでティータイムやカクテルタイムも。仕事をするゲストもいる。
ソレルホテル自体は現在スイス中に15軒あり、都会でも大自然の中のカントリーサイドでも、いずれも異なるタイプの個性派として上質な小規模ブティックホテルを展開し、その土地の特徴的な魅力を随所に発揮しているのです。ここチューリヒの「セント・ピーター」は、チューリヒがそうであるように、未来志向を強く押し出し、持続可能なアイデアとスタッフの実行力で他のホテルとの違いを鮮明に感じさせてくれました。目には見えませんが、ホテルのバックエリアでの環境活動にも力を入れています。大きな違いは、大都会によくあるクールでビジネスライクな緊張感がなく、スタッフの細やかなサービスや大きな笑顔、親切な対応、スピード感のあるサービスなど賢明さが際立っています。宿泊経験者の間では"ソレル体験"という言葉があるほど、何度も訪れるリピーターが増えているとききますが、当然でしょう。
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このホテルは、中央駅からまっすぐチューリヒ湖まで伸びる街のメインストリートからほんのわずか横道にそれて徒歩3分、街の中心地に立つ"聖ペーター教会"の塔の真下に位置しています。チューリヒ観光には欠かせないリマト川を挟み、両側の河畔に広がる旧市街の閑静な地域にあり、チューリヒ市内ではベストのエリアと言えるでしょう。ホテルの向かいには、狭い石畳を挟んで常に賑わう人気のレストランがあり、ホテルのロビーの窓越しに、美味しそうな料理を食べる人々の幸せそうな様子が見て取れるのも、狭い道路が縦横に走る旧市街らしい光景です。

エグゼクティブスイート(57㎡)、チューリヒの旧市街の景色を望む。プライベートテラス、ツインベッド、簡易キッチンがあり長期滞在にも。

他のエグゼクティブスイートのバルコニー。隣に見える教会の塔が「Kirche St. Peter」。建物に囲まれているせいもあり騒音とは無縁の客室。
ホテル内には都心とは思えない静かな中庭もあります。ホテル創業は2020年6月、客室は全45室、そのうち30室がスイート仕様です。客室内はフローリング仕上げの床であり、それぞれ寄木細工が使われ高級感が漂います。客室の広さの平均が50㎡あることで、大都会チューリヒのホテルとしては広さにも恵まれた環境です。オープン当初は世界的にコロナ禍の只中、集客にも苦労をしたと言いますが、総支配人はこう話してくれました。「コロナの影響で、最初は8名だけのゲストの日もあり、頭を抱えました。それも過去のストーリーとなりました。いまは、お陰様でいつもホテルは賑わっていますよ」と笑顔で振り返りました。

グランドデラックスルーム(38㎡)、簡易キッチン、ソファ付きのリビングも備わり家族連れにも人気。

ペットの小型犬と泊まれる部屋が用意されている。便利な犬用排泄物用袋、散歩の後の柔らかなバスタオル、犬用ブラシ、高品質な犬用シャンプーも提供。
客室内にグリーン系の色が多く使われているのは、環境問題への配慮や取り組みを表し、さらに緑色は窓の外に見える木々との一体感を持たせているとのこと。中庭をはじめ、館内のここそこに植物が置かれ、緑の観葉植物から放たれる寛ぎのパワーが、都会の雑踏からホテルに戻ったゲストを優しく包み込んでいます。長期滞在を希望するなら、キッチン付きの客室や広めのスイートでの快適さも約束され、愛犬が寛げるドックルームも用意されていました。

敷地内にある広い中庭(パティオ)にも植物が多い。周囲は客室、左に見える壁は教会「Kirche St. Peter」。
国際都市であるチューリヒの懐の深さ、街の伝統の継承、未来への躍進など様々なバランスがとれた洗練された都会らしく、そこに静かに実力を発揮するライフスタイルホテルの優しさ溢れる気取らぬサービスに改めて魅了されました。「衣・食・住・遊」の詰まった玉手箱のような"ホテル"からは、ライフスタイルのすべてが透けて見えてきます。世界のどこよりもチューリヒでは、ホテルもサービス業もサステナブルな哲学や精神で若者が未来を見据えて地道に活躍していました。

ホテルの朝食は、栄養価やバランスが良く美味しい。チューリヒの有名ベーカリー「ユング」のパン、自家製ジャム、スイスチーズ類、フルーツ類、チューリヒで焙煎された「ストール」のコーヒーも好評。食材は可能な限り地元産にこだわる。グルテンフリーや他の代替食などこだわりの食事も提供。
ソレルホテル・ザンクト・ペーター
In Gassen 10, 8001 Zürich, Switzerland
+41 44 521 03 03 |
stpeter@sorellhotels.com
https://www.sorellhotels.com/en/hotels/st-peter-zurich

Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com





