「ルレ・エ・シャトー」の冠が華を添える
伝統と新しさの中に光る日本のもてなし
「べにや 無何有」加賀・山代温泉/石川県
ホテルへBon Voyage 2010.03.12
「来て頂けるお客様に元気になって帰っていただけたら」と、女将は口癖のようにおっしゃっています。春日山麓の清々しい空気、すっきりとスタイリッシュな館内、細やかなもてなし、心にまで染み入るような上質の温泉、そして心のこもった加賀素材の料理。山代温泉「べにや無何有」は、泊まって寛いで美味しい料理を食べることで体が元気になるようにと'浄化再生'を願っています。
旅館の玄関へと続く緑溢れるアプローチ
また、シンプルでモダンな館内は、'何にもないところにこそ光が満ちる'というコンセプトを基本に、ロビーにも客室にも余計な飾りはありません。また、洗練された空間のロビーに佇んでいると、大きなガラス窓からは庭に生える樹齢300年以上という赤松の巨木や広葉樹の木々が見渡せ、まるで林の中に居るような一体感に包まれます。このロビーが快適なのは、森林浴でもしているような'気'の流れを感じるからなのでしょう。
(左)広々と快適なロビーからは庭の緑が見渡せる(右)庭に面するライブラリィ
「べにや無何有」には、温泉のほかに、心を鎮め、体を癒す空間「スパ・円庭施術院」があります。入り口には'円泉'に水が湛えられ、静かな雰囲気をかもし出しています。スパではオリジナルのトリートメントメニューが用意され、一人一人の体調や状況に合わせて薬草マトリックス「補捨流調」を用いるカウンセリングから始められます。カスタマイズされる薬草玉、漢方クリームを用いる'薬師山ボディトリートメント'は、「リラクゼーショントリートメント」と「浄化と再生のトリートメント」が選べ、どちらも薬草成分がたっぷりと体内に吸収されると評判です。また、スパに隣接してあるのが、なにもない空間に柱が林立する「方林」。心を解放し休ませる空間といい、朝はヨガのレッスンに、瞑想に、時には静かに座って過ごすだけの空間として滞在者が利用できるヒーリング・プレイスが作られています。
スパ「円庭」に隣接した空間、アクティビティとしてヨガのレッスンを提供
(左)スパ・薬草や木の実などトリートメント用素材(右)トリートメント
春爛漫の庭を見る客室、「若紫」
(左)客室「若紫」の室内(右)人気の洋室
源泉掛け流しの温泉
苔生す庭の一角にひっそりと経つのが「茶室永楽庵」です。ここでは宿の主や支配人がお客に点前を披露してくれています。こうしたひとつひとつのサービスが、日本ならでは魅力文化の披露であり、海外からのゲストはもちろんのこと、私たち日本人でさえ本物に触れる歓びは時に感動的でさえあるのです。日本旅館の果たす役割というのは、本当に奥深いもの。ただ温泉に入るだけでなく、ただ美味しいものを食べるだけでないことが、こうした上質な宿に泊まるだけではっきりと分かります。四季折々の自然に溢れることのできる環境はそれだけで人を癒す力がありますが、山海の幸豊富なここ加賀での絶品の料理も、宿を訪れる大きな理由なのかもしれませんね。(K.S)
(左)ひと部屋ごとに炊いてくれる朝ごはん(右)北陸ならではの新鮮なご馳走
山代温泉 べにや無何有
石川県加賀市山代温泉55-1-3
☏ 0761-77-1340 Fax 0761-76-1340
www.mukayu.com/
客室数:全16室(和室8、洋室2、和洋室6、全室露天風呂付き)
料金:平日/1名利用47400円~、2名利用1名料金31650円~、
休日前/2名利用1名料金40050円~、(すべて1泊2食税サ込み)
施設:大浴場、ラウンジ スパ円庭、方林、ショップ、
茶室永楽庵、ライブラリィ、
アクセス: JR北陸本線「加賀温泉駅」から車で10分、
小松空港から車で約20分(旅館手配の有料送迎要予約)

Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com