世間を驚かせたジャン・ヌーベルのホテルも
10年目。貫禄ある大人になりました!
「The Hotel(ザ・ホテル)」ルツェルン/スイス

 スイス中央部、観光都市として有名なルツェルンは、中世の建て物が織りなす美しい古都として知られています。町の中心を流れるロイス川に架かる屋根付の木造橋「カペル橋」は、2度の火災に遭いながらも修復され、旧市街と国鉄駅側の新市街とを結ぶこの橋は湖とともにルツェルンのシンボルにもなっています。

sekine010514_a.jpgホテルの夜景

 国鉄のルツェルン駅から、旧市街とは反対方向にわずか徒歩で5分ほどの場所にあるのが、デザインホテルとして知られた「ザ・ホテル」です。オープンは 2000年4月10日でした。当時、そのホテルらしからぬ発想と奇抜なデザイン、世界から多くのジャーナリストが訪れ競うように記事にしたものです。私もいち早く取材に訪れ、記事をとある雑誌にスクープした者の一人でした。

sekine010514_b.jpg(左)ミニマリズムの代表格、レセプション(右)ラウンジバー

 何がそれほど強烈な印象だったかと言えば、ホテルのデザインにありました。デザイナーは、当時、気鋭のフランス人インテリアデザイナーとしてカリスマ的存在だったジャン・ヌーベル氏の作品であったこと、'落ち着き'や'安らぎ'を売るはずの全客室の天井に、映画のワンシーンである写真が飾られていたことにありました。つまり、ベッドに寝ると、映画のシーンのが目に飛び込んでくる訳です。しかも、最も驚いたのは、その25部屋の中の2部屋が、日本の映画監督 '大島渚'監督のヒット作「戦場のメリークリスマス」と「愛のコリーダ」のシーンを描いたものでした。きっと、ジャン・ヌーベル氏は大島監督のファンだったのでしょう。

sekine010514_c.jpg客室(左写真)の天井は大島渚監督の「愛のコリーダ」

 他には、デビッド・リンチ「ロスト・ハイウェイ」、パトリシア・ロゼマ「When Night is Falling」、ベルナルド・ベルトリッチ「ザ・シェルタリング・スカイ」、ステファン・フレアズ「危険な関係」など、25室25本の映画シーンというわけです。

sekine010514_d.jpgタイプの違う客室と天井の写真

 当時、ホテルは全世界的にスタイリッシュやミニマリズムというコンセプトの全盛期でしたから、「ザ・ホテル」もその例にもれてはいませんでした。ただし、ここはホテル大国、スイスです。いくらミニマリズムとはいえ、居心地や高級感に問題はなく、アメニティも高級感溢れるブランド揃いです。バスアメニティは「FACE STOCKHOLM」というNYブランドが用意されています。

sekine010514_f.jpgレストラン「バンブー」はアジア&インターナショナル・キュイジーヌ

印象的だったのは客室ばかりではありません。メインダイニングには、当時、まだスイスでは日本料理ブームなどもありませんでしたが、スイス初のアジアン創作料理レストランとして、いち早くアジアに特化したレストラン「バンブー」を提案し人気を博していました。オープン当初から、ランチタイムなど近隣のオフィスからビジネスマンやOLが押しかけ、華やいだムードが漂っていました。その人気は今も変わっていませんが、そればかりか、創業10年を迎え人気は定着し、実力派ホテルの仲間入りを果たしています。古都ルツェルンを訪れるチャンスがあれば、是非、10年を経ても斬新なこのホテルに滞在してみてはどうでしょう? (K.S)

The Hotel
(ザ・ホテル)

Sempacherstraße 14
6002 Luzern,Switzerland
the-hotel.ch
tel (+41)41 226 86 86 fax (+41)41 226 86 90
mail:info@the-hotel.ch
部屋数:25室
料金:特別料金(迄5月31日)2泊/CHF.465、
バンブーでの夕食付き1泊/CHF.455
施設:レストラン、ラウンジバー、他
連絡先:直接現地ホテルか、各旅行代理店。

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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