まるでインドのお伽噺のような舞台
マハラジャを魅了した狩猟の宮殿をイメージ。
「Amanbagh(アマンバグ)」ジャイプル/インド

 日本からインドまで辿り着くには、直行便、経由便、乗り継ぎ便の方法がありますが、やっぱり直行便で、まずは基地となるニューデリーに入るのが一般的に便利でしょう。 飛行時間は様々ですが、直行便なら約8時間~9時間くらい。ただ時差が「マイナス3時間30分」と珍しい数字ですから、覚えておいた方が良さそうです。

sekine101210_a.jpg小高い山に囲まれた静かなロケーションにあるリゾートの中庭

ここでご紹介する「アマンバグ」は、首都であるニューデリーから南西に約260kmのところにあるジャイプル(日本ではジャイプールともいう)という大きな街の郊外にあります。ジャイプルは「ピンクシティ」とも呼ばれる美しい街で、ラジャスタン州の州都でもあります。ピンク色の建物が多いのは、1876年に英国ヴィクトリア女王の子息、アルバート王子がこの地を訪れた際にマハラジャの家で歓待され、そのときに街の壁を全体的にピンクに塗装。化粧直しをしたと伝えられており、現在では、それが伝統となっているためと言われています。「アマンバグ」が建つのは山に囲まれた静かな土地、かつてアルワル藩王国のマハラジャが狩猟のために訪れた場所であったといいます。

 敷地の周囲は壁に囲まれひっそりと建つ「アマンバグ」は、ムガール帝国時代(1526年~1858年:アフガニスタンから北インドを攻めデリーを攻略、アグラーを納めてデカン高原までも治め最大建国。その後、英国統治により消滅)の壮麗な宮殿を思い起こさせると言われています。メインとなる棟は荘厳な館の趣があり、内装にはグリーンやピンクの大理石がふんだんに使われ、また、多くの彫刻や貴重なアンティークの調度品も置かれています。外壁に使用しているピンク色の石は地元産のピンクサンドストーン。淡い色合いの温もりのある瀟洒な建物はとても印象的です。

「アマンバグ」は小高い山に囲まれているとはいえ、風光明媚な場所にあります。野生動物や鳥なども多く生息し、滞在中には数々の動物とも遭遇しました。また、アクティビティにはラクダや馬、象などのライディング、周辺のアラバリ山地へのツアー、大理石の峡谷でのプライベートなピクニック、壮麗な要塞や城跡めぐり、美しい農村への文化散策ツアー、ラジャスタン市内の散策など、数々の楽しみ方があります。中でも、とっておきの「闇夜の遺跡ディナー」と、驚きの「遺跡の朝食」は忘れ難いものとなりました。

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(上)小さなコートヤードに描かれた砂絵(中)リゾートの敷地内でアクティビティのひとつ「キャメル・ライディング」の準備をする専門スタッフ(下)近くの小さな町で見つけた「コブラ使い」、まるで絵本の中のよう

sekine101210_b.jpgアマンバグのプライベートディナーは少し離れた広大な湖跡'private dinner at a chhatri'で

そのディナーは、リゾートからほど近い広大な野原(雨期には湖と化すchhatri)に出かけ、満天の星の下で、キャンドルの灯りだけで楽しむというロマンティック・ディナーでした。真っ暗な闇の中ですから、車を降りてから野原(湖)の真ん中にある遺跡までは懐中電灯で誘導され、遺跡に辿り着くと、すでにそこで準備を終えていたスタッフに出迎えられるという仕掛けです。ゴザのような敷物の上に座り、一人づつの'お殿様テーブル'とソファが用意され、私達の食座の傍では静かにシタールの生演奏が始まりました。キャンドルの明かりの中で、インド音楽の流れる中での闇夜のディナーは神秘的で幻想的。恐らく人生最初で最後の経験ではないかと思ったほどでした。

sekine101210_j.jpg写真は2枚ともランチでいただいた地元のカレー料理。タンドリーチキンもカレーもスパイシーで素晴らしく美味しい。インドでは朝食にもカレーを食べるがサラッとしたスープやカレーを包んだクレープなど朝食らしくさっぱりとしている

一方、「遺跡での朝食」も凄いものでした。朝7時半頃にロビー集まり、40分近くも車を走らせ、遺跡公園のような寺跡(bhangarh)に行きました。朝食を摂ることになっていたお堂のパティオには、先に着いていたスタッフがすでに朝食の支度を終え、私達はただ座るだけに・・・。ジュース、フルーツ、パン、コーヒー、ヨーグルト。リゾート内にいるかのようなアイテムが並べられた豪華なピクニック朝食でした。周囲には城跡や古寺が点在し、スタッフは、私達の周りにおずおずとやってくる猿やヒヒなどの親子連れや鳩を追い払うのに苦労をしていましたが、贅沢にゆったりと時間が流れる朝、青空の下で、かつてのインドへとタイムスリップしたような朝食タイムを過ごしたのです。

sekine101210_e.jpg庭側から見たプール・パヴィリオン。淡いピンクストーン造り

sekine101210_f.jpgパヴィリオン内部はサロン、ベッドルーム、バスルームに別れ、贅沢なインドらしさとモダニズムが融合され高級感のあるデザイン

sekine101210_d.jpg大きな鏡に見守られるようなベッドルーム。鏡の後ろ部分がバスルームに

アマンリゾートらしさは、メインとなる館を中心に、ここでもリゾート全体がシンメトリー工法によって造られていることです。アマンが頑なに主張する'四角いプール'も健在です。そんな「線」を感じさせる「アマンバグ」ですが、全く対照的に、「R」と言われる丸いドーム型の屋根を持つ客室ヴィラが印象に残ります。プライベートプールが設置された'プール・パヴィリオン'は、特にその優雅な外観に見とれてしまうほどです。

sekine101210_g.jpg長いコリドール(通路)に囲まれたメインプールと、奥に見えるのがレセプション、レストランのあるメイン棟

sekine101210_c.jpg(左)スパのレセプションエリア。(右)インド本場のアーユルヴェーダが可能なトリートメントルーム

「遠ければ遠いほど、不便なら不便なほど、リゾートは素晴らしい」という私の常套句が、ここでも脳裏をかすめました。まさに別世界、かつてのマハラジャの遊んだ世界を、優しく温かく迎えてくれるスタッフ達とともに経験してみてはいかがでしょう。リゾートというものの観念でさえ、きっと、変わってしまうことでしょう。(K.S)



sekine101210_i.jpg Amanbagh
(アマンバグ)

Ajabgarh, Alwar 301027 Rajasthan India
Tel/+91-1465-223-333 Fax/+91-1465-223-335
www.amanresorts.com

客室数/40室(Haveli + Pavillion)
料金/( 2011年4月30日まで)
ハベリ・スィート US$.700~900,
プール・パヴィリオンUS$.1250,
(2011年5月1日以降)
ハベリ・スィートUS$.550~750, 
プール・パヴィリオン US$.1150
施設/レストラン、テラスダイニング、ルーフテラス、ライブラリィ、プール、
スパ、ラウンジバー、オーガニックガーデン、コートヤード、他、
車の送迎/(ニューデリーからラジャスタン、約120km)デリー空港〜アマンバグまで4時間半、350US$
デリーからアマンバグへは、ジャープールまで空路1時間、ジャイプールから陸路で約2時間半となる。デリーから車で直接向かうこともできる。その場合の所要時間は約4時間半から5時間半程度。
予約先/フリーダイアル KDDI:(001)010-800-255-2626

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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