まさに都会の隠れ家的な存在
香港のホテル歴史に新風が吹いています。
「The Upper House(ザ・アッパーハウス)」セントラル/香港
ホテルへBon Voyage 2010.02.05
2009年10月2日、香港のセントラル地区'パシフィック・プレイス'に話題のホテルが誕生しました。もともと「JWマリオット」のあるビルを使用し、かたや下層階に、かたやその名の通り上層階にできたのが「The Upper House」です。ホテルのエントランスさえわかりにくい、否、あまりわかられたくないといったほうが当たっているのかも知れない、所謂、香港の本格的「ハイダウェイ」の登場です。
印象的なのは、すでに車寄せに着いたときから始まる、ホテルという別世界へと導かれるようなストーリーが始まることでしょうか。またエントランスから一歩足を踏み入れ、目の前に設置された長いエスカレーターで4階まで上ることが、まるで異空間へのアプローチとでも言わんばかりに、わずかな心構えの時間を与えてくれているのかもしれないのです。実際に私も、「もう、これで私は非日常に居るのだ」という嬉しさと、都会の雑踏から逃れホッとする安堵感に襲われました。
隠れ家的なエントランスだけにライティングも控えめ
どんな空間が待っているのかしらとワクワクしながら4階に上りつめると、誰もが自由にくつろげる広い空間が広がっていました。気鋭のデザイナー、アンドレ・フーが「個人の邸宅のように」と造り上げたホテルだけに贅沢な雰囲気に包まれています。4階からは超高速エレベーターで最上49階まで一気に上りつめます。そこにあるのはスカイブリッジ。そのブリッジを挟んで左に、ラウンジ兼レセプション(ホテルではそう呼んでいませんが)のような空間あり、4mもの書棚や暖炉、大きなソファが置かれ、まるで優雅な個人宅そのものという印象です。ブリッジの右端には、NYで人気を得たシェフ・グレイ・クンツのシグナチャー・レストラン「カフェ・グレイ・デラックス」があり、オーガニック素材で作られるヨーロピアン・インターナショナル・キュイジーヌが楽しめます。
(左)中庭へと続くステップ(右)夕暮れ時の中庭「LAWN(芝生)」、くつろぎもパーティーも自由
(左)「カフェ・グレイ・デラックス」はスターシェフ、グレイ・クンツ氏プロデュースの人気ダイニング・カフェ(右)「ショートリブ・パニーニ」、料理は全体的にプレゼンテーション、味、オーガニック素材共にクオリティが高い
内部は洗練された都会的ムードたっぷり
客室があるのは48階から下の階であり、全117室という香港では小規模型のホテルです。客室内はとても落ち着いた空間で高級感が漂い、むしろ控えめな感じにさえ受けますが、最新鋭の設備が搭載された客室になっています。コンピュータや「i pod」(アイポッド)に不慣れな人はちょっと戸惑うでしょうね。なにしろ情報、連絡、チェックイン・アウトなどすべてに対応するのがアイポッドひとつ。ペーパー情報が部屋の中にはありません。あるのはティッシュペーパー、トイレットペーパー、そして電話のメモ書きのための小さなノートくらいなのです。
アッパースウィートのひとつ、サロンスペース
(左)スタジオ70のひとつ、ハーバービュー(右)ゴージャスなバスルーム
そしてもうひとつ、客室での驚きはバスルームにありました。全体を意識的に落ち着いたトーンにまとめられたホテルですが、バスルームもしかり。イタリア産天然石灰石やトルコ産石灰石の淡い色合いが高級感を演出しています。広さもなんと平均28㎡以上というバスルームです。バスタブ、レインシャワー&ハンドシャワーのほか、硝子壁の中に専用TVが設置され、このテレビは映さないとその存在は壁の中にあって見えないようになっており、スウィッチを入れて初めて「え? この壁にテレビが内臓されていたのか」と分かる仕組みなのです。すべてがスマートでクール。私も、アイポッドひとつで、すべての機能をこなす存在には驚くばかりでした。(K.S)
The Upper House
(ザ・アッパーハウス)
Pacific Place、88 Queensway
Hong Kong, R.O.C
Tel: (+852) 2918-1838 Fax: (+852)3968-1200
www.upperhouse.com
部屋数/117室
料金/(室料)HK$.2.888 (Studio70)~、
日本の連絡先/(予約)プリファード・ホテルズ&リゾーツ
0120-747-755

Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com