3月11日、バーバリーは2022年秋冬コレクションをロンドンで発表した。オーディエンスを招いてライブで行うランウェイショーは実に2年ぶりだ。
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「どこかに所属する意味、自分のルーツがアイデンティティに与える影響、またコミュニティや人々が協力し合って生み出す力が世界にどのような意義をもたらすかを考えることは、私にとってとても大切でした」とチーフ・クリエイティブ・オフィサーのリカルド・ティッシは語る。
「それを踏まえ、今回のコレクションは人々が集まることだけではなく、いま私たちがともに居るここロンドンを称えたいと思ったのです。
ロンドンはバーバリーが生まれ育ち、ファミリーを築いてきた場所です。私自身にとっては憧れの地であり、受け継がれてきた伝統のうえに成り立っているイギリスの首都であり、さまざまなコミュニティーと古い価値観を打破しようとする心意気が織りなす場所であり、限りない可能性を追求できる街でもあります。
このコレクションは、過去に蓄積されてきたさまざまな美に敬意を示しながら、感謝と希望、愛情とともに未来に目を向けるという、これまで形にされることのなかった英国らしさのエッセンスを具象化したものとなりました」
会場となったのは、市内中心部にある歴史的建造物のセントラル・ホール・ウエストミンスター。各国ファッション誌の名物エディターから、ケイト・モスやアダム・ドライバーら多くのセレブも駆けつけて、スタート前からロビーはパンデミックで失われた時間を取り戻したような華やかさで包まれた。
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ショーはその建物内でもひときわ美しいドーム型天井を備える劇場で行われた。しかし時間となって中に入っても照明は落とされて真っ暗なまま。かろうじてディナーセットが美しく並べられたダイニングテーブルがフロア内にいくつかあるのが分かる程度だ。椅子も置かれておらずスタンディングのまま待ち構えていると、まばゆいスポットライトとともにモデルたちが登場した。
左:ルック004、右:007
メンズコレクションに引き続いてのレディースのショーでは、モデルたちはステージを降り、観客たちの間を闊歩し、ダイニングテーブルへ上ってポーズをとる。流れる調べはロンドン・コンテンポラリー・オーケストラによる生演奏。これまで見たことのない演出に人々は驚きながらも、間近に歩くモデルたちを凝視する。
ティッシの言葉にある通り、数々の英国らしさを新解釈を持ってひねりを加え、フレッシュに仕上げられていたのが印象的だった。
おなじみのトレンチコートは、チェーンを飾ったディテールや、トロンプルイユ柄、プリーツなどを施して新しい表情をプラス。キルティングやコーデュロイのフィールドジャケットは、英国のカントリーライフを彷彿とさせながらも、大きなジッププルで遊び心を加え都会的で洗練されたスタイルへ。
ボクシーシルエットのテーラリングジャケットにたっぷりとした膝丈プリーツスカートを合わせたエレガントなスタイルや、パンクを思わせるモヘアニットのトップにチェックのスカートのコーディネートは、限りなく英国的でありながらも現代のテイストに合わせて昇華されている。
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馬上の騎士デザインのリバイバルも目を引いた。かつておなじみだったブランドアイコンが復活し、プリントやクリスタルビーズの刺繍で型どられてニットウエアやシャツ、ジャガード織りのジャケットなどを飾る。
左:ルック010、右:012
左:ルック020、右:024
ドラマチックなイブニングウエアも見逃せない。トレンチコートの新解釈となった、象徴的なディテールを合わせて彫刻的なラインで仕上げたストラップレスドレス、たっぷりしたオーガンザにフェザーのトリムをつけたロマンティックなロングガウン、さらには黒いベルベットシャツにタキシードジャケットとワイドパンツを合わせたマスキュリンなスタイルも。
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左:ルック026、右:030
左:ルック036、右:045
左:ルック046、右:047
左:ルック050、右:054
左:ルック055、右:056
気になるアクセサリーも目白押しだ。ブランドロゴを施したフロントポケットが目を引く新登場の「キャサリンバッグ」を始め、ドロップペンダントをあしらった大きなリボン型イヤリング、ヘッドバンドのついたベースボールキャップなど、個性あふれるラインナップだ。
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斬新、豪華、美しさで満たされたショーは、パンデミックの間に忘れていた高揚感を再び喚起させてくれた。またブランドのDNAを色濃く打ち出すことは自分への誇りであると同時に、他者のルーツへの敬意の提示でもあり、ダイバーシティへの祝福と受け止めた。厳しい時代のいま、これらのメッセージを発信することで、ファッションの持つパワーを再び思い起こさせてくれた力強さに満ちたコレクションだった。
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photography: © Courtesy of Burberry, text: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。