「大々的なショーを開催することができないので、何かほかに策がないかと感じていました」と語る、シャネルのアーティスティック ディレクター、ヴィルジニー・ヴィアール。現在も新型コロナウイルスの蔓延を受け、夜間の外出制限や大手デパートの休業など、厳しい状況が続いているパリでオートクチュール コレクションが開催された。シャネルはグラン・パレで撮影したフィルムを去る1月26日に公開。このフィルムは、オランダのフォトグラファーであり、映画監督、そしてグラフィックデザイナーとしても活躍するアントン・コービンがディレクションを務めている。
グラン・パレでのショーフィルムもアントン・コービンがディレクションを手がけた。こちらはダイジェストバージョン。©CHANEL
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Discover about Spring-Summer 2021 Haute Couture Collection
以前のようにゲストが大勢集まる、華やかで賑やかなショーの開催が困難ないま、ヴィルジニーがたどり着いた先は、穏やかなムードが流れる優しい時間に包まれた素敵なショーだった。「少人数が列を成してグラン・パレの階段を降り、花のアーチをくぐるアイデアを思いつきました。家族が集うセレブレーション、たとえば結婚式のように」。そして時を同じくして、カンボン通り31番地のオートクチュール・サロンもリニューアル。それも相まって、メゾンにとって今シーズンは祝福ムードにあふれたものに。


Look 01、06 ©CHANEL


Look 28、32 ©CHANEL
ジャック・グランジが内装を手がけた新しいサロンは、ガブリエル・シャネルがコロマンデル屏風やゴッサンスによる麦の穂のデザインのテーブルを飾っていた当時のサロンのフェミニンな魅力が着想源になっている。そこにある、あの鏡張りの階段の下で「モデルたちを集めて、フォトアルバムで見るような家族写真を撮りたいと考えました」とヴィルジニー。
伝統的な技巧と磨き抜かれた職人技に多彩に彩られた素晴らしきオートクチュールの世界。今春夏も、シャネルはその唯一無二のクリエイションを心ゆくまで堪能させてくれた。グラン・パレの階段を下り、花のアーチをくぐって登場したファーストルックは、カフスに花の刺繍を飾ったレースのアンサンブル。さらにラッフルをあしらったレースやブラウス、オーガンザとシフォンをレイヤードしたフリルが主役のスカートなど、メゾンが誇るメティエダールの技がルックの存在感を引き立てる。
フィナーレも暖かな雰囲気に満ちて。 ©CHANEL
フィナーレでは、馬に乗り、ウエディングドレスを纏った花嫁が登場。エクリュのサテンクレープで仕立てたドレスの刺繍はルサージュによるもの。ラインストーンやコスチュームパールで象った蝶の刺繍が印象的だ。ヴィルジニーは、「私は家族が大勢集まる場所が大好きです。さまざまな世代が一同に集うことで、とても温かな気持ちになります。いまのシャネルにも同じスピリットがあります。シャネルもまた、ひとつの家族のようなものだからです」とコメントした。


貴重なフィッティングの写真も到着。たびたびシャネルのためにビジュアルを手がけてきたレイラ・スマラが撮影。photos : LEILA SMARA ©CHANEL
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家族のポートレートのように、アンバサダーを撮影。
202年春夏 オートクチュール コレクションの会場に等間隔で並ぶ椅子。そこに優雅に腰掛け、ショーを楽しんだのは、ブランドのアンバサダーであるペネロペ・クルスやマリオン・コティヤール、ヴァネッサ・パラディ、そしてリリー=ローズ・デップなど豪華な顔ぶれのセレブリティたち。
シャネルのオートクチュール サロンにて、アントン・コービンがシャネルのアンバサダーたちを写真と動画でとらえた。 ©CHANEL
ショーの後には、大きなテーブルを囲み、それぞれのショーの感想を語り合う動画も撮影された。さらには、カンボン通り31番地のオートクチュールサロンでの彼女たちの姿を、まるで家族のポートレートのようなスタイルで撮影した写真も公開。撮影は、ショーのムービーと同じく、アントン・コービンが担当している。
アントン・コービンが撮り下ろした、シャネルの2021 年春夏 オートクチュール コレクションのビジュアル。photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
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マリオン・コティヤールは、2019/20年秋冬 オートクチュール コレクションから、ネイビーのサテンクレープ素材のドレスを纏って。 photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
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ペネロペ・クルスは、2020年春夏 オートクチュール コレクションから、ネイビーのシルク素材のビスチェ ドレスをチョイス。 photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
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ヴァネッサ・パラディは、2020/21年秋冬 オートクチュール コレクションから、エンブロイダリーが施されたブラックツイードのジャケットとパンツを着用。 photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
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リリー=ローズ・デップは、2019/20年秋冬 オートクチュール コレクションから、エンブロイダリーが施されたマルチカラーのボレロと、2019年春夏 プレタポルテ コレクションから、シルク素材のブラックのトップスとシャネルのシューズを着用。「1.5 1 カメリア モチーフ. 5 アリュール」ネックレス、「コメット コレクション」イヤリング、「ココ クラッシュ」イヤリングを合わせて。 photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
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メゾンに近しいセレブリティであるフランスのシンガー/女優のイジア・イジュラン(左)やシャネルのアンバサダーである女優アルマ・ホドロフスキー(右)の姿も。まるで家族のポートレートのような親密な雰囲気が写し取られている。 photo : ANTON CORBIJN ©CHANEL
texte : TOMOKO KAWAKAMI, graphisme du titre : SANKAKUSHA