子供の価値観作りは、自分の価値観のアップデートから。

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先日、娘達のサッカーの先生の奥さんと久しぶりにお会いしました。しばらくお会いしないうちにお腹が大きくなっていて、「いつご出産ですか? 男の子か女の子かもうわかっているの?」と聞いたら「出産は来月なんだけど、今度は女の子なの」。
彼女には、すでに6歳の男の子がいて、サッカーで一緒になることがありますが、とても心優しい男の子。
私は、ぐりとぐらの娘達との生活で「あー、女の子って楽しい。女同士って楽しい〜」と毎日のように思う瞬間があるので、「女の子、楽しいよー!」とさほど気にも留めずに言ったのですが、先生の奥さんは、「女の子でがっかりよ」と言うのです。私はびっくりして、「どうして?!」と聞かずにはいられませんでした。
彼女が言うことには「女の子は、ヒラヒラ、プリンセスみたいなものばかりを要求するから、彼女自身のスタイルと合わずに面倒。その点、男の子は着るものもおもちゃもシンプルだから」と言うことなのです。

私は驚きのあまり言葉も出ませんでした。
私はその時、ぐりとぐらと一緒にいました。ヒラヒラ&プリンセスが大好きなぐりはヒラヒラスカート、ブルーが大好きなぐらはブルーのTシャツにブルーのショートパンツ。
「でもね、女の子もみんな好みがそれぞれなんだよ。」とふたりに視線をやりながら言うと、「そうね、ぐらみたいな子は良いわね」

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前置きは長くなりましたが、そんなやりとりがあって、彼女は完璧に「よく見かける女の子=女の子のモデル像」としてイメージを植えつけてしまっているのではないか、だから「女の子=ヒラヒラになるもの」と図式ができてしまっているのではないか思いました。
目の前のぐらは、そのモデルから全く外れていると言うのに、「女の子もそれぞれだよ」と言う現実に気がつかないのですから。

彼女のような例は極端なのかもしれませんが、もしかして日常の中で多かれ少なかれ、自分自身もそういうことをしていないだろう……と考えました。

例えば洋服を選ぶ時の色であったり、おもちゃの図柄であったり、そのような自分のいつものチョイスが、彼女たちの「当然の選択肢」としてすりかわってしまっていないか。お話するときの文頭で「女の子なんだから……」と付けてしまっていないか。パパは食事の支度が整ったら席につくもの、パパのお茶はママンが淹れるものとか、そう言ったノンヴァーバル(非言語)の行動も、情報として娘たちに吸収されて、彼女たちの「常識」が作られていくのではないか。

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これまでも洋服を選ぶ時にも、男の子用のサロペットやシャツを選んだり、見た目が可愛ければ、性別関係なく選んできたつもりです。それでも、プレスクールの他の女の子の影響などでプリンセスブームはやってくる。このブームによって、私が「可愛い!」と思っていても、全く着なくなってしまった洋服も数知れず(涙)。だから最近では、インターネットでショッピングをするときには、購入ボタンを押す前に「どう?これ好き?」と必ず本人確認をして、残念なサプライズがないようにしています。

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彼女たちにやって来たプリンセスブームによって「女の子」というラベルを後押しするようなことはなるべく避けたいと思い、自分で意識のある部分は気をつけてはいます。でも、自分の潜在意識やバックグラウンドから起きている行動までは、無意識下にあるものです。

先日も、大きく反省したことがありました。子どもたちの学習おもちゃを書店に探しに行って、めぼしいものをマーキングした後、数日後に子どもたちを連れて、一緒に買いに行きました。その時に全く同じ機能のおもちゃが2種類、ひとつは動物の絵、もうひとつはディズニープリンセスの絵がありました。ディズニープリンセス好きの娘たちは、当然そのプリンセスのキラキラ感溢れるものを選ぶと思って、私は「これ?」と指を差したら、なんと隣に置いてあった動物の方を選んだのです。ものを選択する時には、プリンセスかどうかが関係ないこともあるのだと知って驚きましたが(笑)、私が先入観で決めてはいけないと改めて感じました。ちゃんと選ぶ基準が子どもなりに色々とあるのです。

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しかし買い物ではとくに、売り手が提供するステレオタイプな選択肢をどのようにすり抜けるかと言うことも考えたりもします。また、私たち親がそうしなくても、先生や周りの大人が持っている「女の子」像の枠に、娘たちが当てはまらないことで注意を受けることがあるのかもしれません。しかもそこに私自身が必ずしも居合わせることができないかもしれません。

でももしかしたら、そんなことを今から考える必要もないのかもしれません。

ただ今のすごいスピードで価値観が変化していく社会を目の当たりにし、ジェンダーや人種問題についても、これまでまるで影のように扱われてきたことがどんどん自然に議論されるようになって、これからの「未来の社会を生き抜ける子ども」として必須のスキルとしては、誰かが決めた「属性」に自分は属さなくても良いということ知ること。そして自分が良いと思うことを自分で信じて、自分なりの理由を持ってディフェンスできることではないかと思うのです。さらには世界の価値観が変わるように、自分の価値観や思考も変わって良いのだと言うこと。

それを考えると、子どもたちが私たちに与える課題の大きさがすごくないですか!?

何をもって女性と言うのか、男性というのか、その定義さえも変わっている世の中です。親が小さな自分の世界のルールに縛られている場合ではない(笑)。

ある男性にこう言われたことがありました。「女性は専業主婦という選択肢があっていいですね。僕も本当は専業主夫になりたいんですよ」。その言葉から、私たちは女性からの目線でしか見ていないけれど、男は一家の暮らしの生計を立てなくてはいけない、というプレッシャーを背負うストレスを「当たり前」とする社会に疑問を感じる男性もいるのだな、と気づかせてもらいました。女性が稼ぎ頭だって全然良いじゃないですか?(ちなみにフランスでは、妻の稼ぎが自分よりも良いことを自慢している男性も少なくありません)

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これからの社会は、私たちもまだ未経験の社会です。まずは、私たちがもう一度、自分がどうありたいか、どうなりたいか。子どもたちにどうなってほしいか。またなぜそう思うのか。本当にそう思っているのか。それが整理できたら、きっと既存の属性に属すことがそれほど重要ではなくなる気がするのです。また「女の子なんだから!」「男の子なんだから!」とつい言ってしまうその理由の背景と、その重要性の真偽が見えてくる気がします。これは、親である私たちも子どもたちと未来を一緒に行きていくためにもらった「ギフト」の宿題だと思って、まずは自分が学習していきたいと思っています。

ぐりの好きな色はピンクと茶色(ピンクと比較してなぜかとても地味な色)。ぐらは青とネイビーブルー、と青づくし。私は彼女たちがどんな色を好きでも全然構いませんが、「こだわり」がある方が何だか楽しいような気がしています。

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なぜかというと、色がもたらす「ときめき」感に陶酔している様子が、すごく良い刺激のような気がするからです。とくに、寝ても覚めても「プリンセスドレス!」のぐりは、「自分でかわいいと思うもの」へのこだわりに一切妥協がない代わり、「かわいい!」と思った時のときめいている様子は、見ていて本当にこちらが幸せになる程です。

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全く同じように育てても、ファッションとティーセットが大好きなぐり(しかも彼女は近所のお姉さんが、髪を巻いただけでヘアスタイルを褒めるくらい美容にも目ざとい。)、そしてパズルとアルファベットに夢中なぐら。

出産して間もない頃に、女の子を育てる準備として「ジェンダー」に対して自分なりに知識をつけたいと思って探して出会った、堀越英美さんの著書『女の子は本当にピンクが好きなのか』(Pヴァイン刊)では、社会の中の女の子や女性のあり方(比較して男の子と男性のあり方)が歴史を紐解きながら書いてあるのですが、とても興味深く参考になったので、このトピックに何かしらの「思い」を持っていらっしゃる方にとてもおすすめです!

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また、この書籍の中で紹介されている、女子向けのエンジニアリングトイ、Goldie Bloxは、娘たちがもう少し大きくなってから、絶対に与えたいと思っているおもちゃです。女子は文系、男子は理系、なんて認識はすでに過去のこと。世界では女性のサイエンティストがこんなにも増えているというのに!本書では、このトイを作った女性は、女の子が遊ぶオモチャのチョイスといえば、昔はドールやハウス、バービーの職業も限られていた。クリエティブなものが合ったとしても、化学、物理を遊びながら学べるものはなかった。子どもの時からこの分野を遊びの中から親しんでいったら、もっと自分はもっと本質的に理系に強くなれたかもしれないのに!という、エンジニアであるご自身の悔しいキャリア経験から生み出されたそうです。そのうち、理系、文系と分けることさえも、ナンセンスな時代が来るのかも知れない。

 

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SHIGETA主宰、ホリスティックビューティーコンサルタント。美しい肌と体を育むためには心身のバランスこそが不可欠と考え、長年フランスおよび日本にてビューティーメソッドを探求。その経験と実績をもとにバイタリティー・コーチング®を考案。現在は、パリのセレブリティやアーティストのためのパーソナルコーチとして活動するほか、大手化粧品会社や美容機器会社のコンサルティング及びブランドスポークスマンとしても活躍中。近著に『「リセットジュース」を始めよう~パリ美人のダイエット』(講談社刊)など、著書多数。ナチュラルでホリスティックなライフスタイルウェブマガジンSpring Stepの編集長も務める。

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