500万年の時。美濃の 土を伝える「MINO SOIL」展。

岐阜県の美濃地方でうつわがつくられ始めたのは1300年前のこと。陶磁器の生産量全国1位を誇る地域となり、現在に続いています。

美濃の土の可能性をデザインを通して紹介しようという、全3回のエキシビションが始まります。その第1回となるのは、6月8日より表参道で開催される「MINO SOIL」展。展示タイトルには「Archaeology of Mino(美濃の考古学)」との言葉も。これは気になる企画です。

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Photo: Yurika Kono

「この地の産業が発展してきた背景には、良質の土がありました」。「MINO SOIL」のファウンダーの1社であるエクシィズの代表、笠井政志さんが語ってくれました。

「土によって発展してきた日本の文化を世界に発信していくことを考えた際、タイルや陶器はもちろん、それ以外の可能性もあると思い、改めて美濃地方の原点である、“土”に立ち戻ってみたいと思ったのです」

210607_mino2.jpgphoto: Yurika Kono

「美濃の地面を掘ると、良質の粘土が現われます。500万年前にここ一帯が巨大な湖の底にあったことによって生成された土です。粘土、陶磁器に適した中性の水、火で焼く際の赤松、これら3つの存在によって陶磁器の産業が発達し、食器から建材に至る幅広い製品がつくられてきました」

「身近であっただけに私たちも自然に接してきたのですが、こうした環境が恵まれた状況だということを、いま改めて感じています。奇跡の土であるのだと気づき、大切にしていこうと。また、現在、粘土鉱山は貴重なものともなりつつあります。美濃のこの土に感謝をしたいとも考えています」
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photo: Yurika Kono

陶磁器づくりの原点に還ろうと、土に目を向けることから始まったプロジェクト。

クリエイティブディレターを務めるのは、京都と東京に暮らした後、今春より主にスイスを拠点としているデザインディレクターのダヴィッド・グレットリ。美濃との出合いから3年、多治見のタイルを新しい形で紹介する「TAJIMI CUSTOM TILES」のクリエイティブディレクションにも関わっている人物です。

そして“土”そのものがフォーカスされる第1回の展示にキュレーターとして招かれたのは、インドの建築スタジオ、スタジオ・ムンバイを主宰するビジョイ・ジェインでした。同スタジオでは、多くの職人たちとともにさまざまな素材に向き合い、手の力を活かしたプロジェクトが続けられています。

210607_mino4.jpgカリモク・ニュースタンダードのクリエイティブディレクターを務めているダヴィッド・グレットリ。有田のプロジェクトに関わったこともあり、「TAJIMI CUSTOM TILES」など日本の陶磁器産地との関わりが深い。photo: Kenta Hasegawa

210607_mino5.jpgビジョイ・ジェイン。2016年の来日時にお会いできた際、大地と向き合いながら人間の身体を通して創造していくことの重要性を語ってくれました。彼がいま考えていることも興味深く、美濃のプロジェクトについては別の機会にご紹介したいと思います。photo: Courtesy of Studio Mumbai

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美濃で感じたことを、ダヴィッドが振り返ってくれました。

「土、とひと言で言っても同じではありません。美濃を訪れてそのことに気づき、感動しました。その地の土があったから、人の生活、歴史、文化が生まれてきた。それも500万年前からという、実に長い時間です」

「地面を掘ります。すると長い時間眠っていた粘土が出てきて、太陽の光を受けることになるわけです。鉱山がある場所の違いや層の違いによる異なる土の表情も魅力でした」

「500万年の時を経た土からつくられた陶磁器で、僕たちはコーヒーを飲むことができるということですよね……このプロジェクトの醍醐味をすぐに実感しました。具体的な製品の開発も進めていて、今後2回の展示ではそれらを順に紹介していく予定です」

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photo: Yurika Kono

一方のビジョイ・ジェインは、インドの鉱山に足を運んでは建築スタジオの中庭に粘土を運んでいたりするなど、土に対しても並ならぬ関心を抱いています。

とはいえ、国を越えた自由な移動がままならない現在、ダヴィッドが美濃に足を運ぶ度に携帯電話のカメラで現地の状況を伝えながら、二人三脚でのやりとりとなったそう。ビジョイが美濃を訪れた際には何を感じるのでしょう。そのことも気になります。

「美濃の土はそこにしかありません」とダヴィッド。

「無限にあると思っていた土は有限です。いつまでもあるというのではないことを、考えなくてはなりません」と笠井さん。

私たちの足もとを支え、人を始めすべての誕生の源となってきた土。ふたりのお話を聞きながら、土に生まれ、土に還るという壮大な自然の循環にも思いを巡らせました。

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photo: Yurika Kono

第1回目の展示となる今回は、土と鉱山をテーマに、土そのものを活かしたさまざまなオブジェの展示となります。

フォトグラファーの高野ユリカさんが撮影した写真、藤口亮太さんのサウンドデザインもあわせて会場が構成されます。焼物の原点ともなる美濃の土を、結集したクリエイターたちの視点を通して体感できる場となるはず。これは楽しみです。

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photo: Yurika Kono

「MINO SOIL Archaeology of Mino In Collaboration with Studio Mumbai」
会期:2021年6/8(火)〜 6/13(日)
会場:441(東京都渋谷区神宮前 5-12-1)
開)6/8(火)12時~17時、9(水)12時~20時 
10(木)〜12(土)10時~20時、13(日)10時~17時
https://minosoil.jp/ja 
※要事前予約

text: Noriko Kawakami

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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