イッセイ ミヤケ 『In the Making』展が伝えるメッセージ。

毎年春にミラノで開催されているミラノデザインウィーク。昨年から延期となっていましたが、9月5日から10日まで待望の開催となりました。このデザインウィークにあわせて、ミラノ市内にあるISSEY MIYAKEのフラッグシップストアでは、特別展「In the Making」が開幕。ひき続き9月19日まで行われています。

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ISSEY MIYAKE / MILAN。モンテ・ナポレオーネ通りに隣接するバグッダ通りに建つ19世紀の邸宅を修復して設けられたISSEY MIYAKEのフラグシップ・ストア。空間デザインは吉岡徳仁。photo: Valentina Sommariva, © ISSEY MIYAKE INC.

このフラッグシップストアが誕生したのは2017年春。以来、ミラノデザインウィーク時期には特別展示が行われてきました。

デザインウィークはファッションウィークとは異なり、家具やプロダクトの新作発表や展示が市内各地で行われる一週間です。ISSEY MIYAKE / MILANでもアーティストを招いての展示が行われてきましたが、今回は新ブランドのとり組みを紹介する内容に。関わる皆さんの熱い想いが込められた展示です。

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メンズ・ウィメンズのプロダクト A-POC ABLE ISSEY MIYAKEとメンズプロダクトIM MENの最新コレクションから、映像とともに紹介。photo: Valentina Sommariva, © ISSEY MIYAKE INC.

「In the Making」展について、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEを率いるデザイナー、宮前義之さんにうかがいました。

「ISSEY MIYAKEの服づくりから今年新たに生まれたふたつのブランドを通して、プロダクト開発に近い衣服づくりの紹介をしています。プロダクトとしての衣服、とも表現しているのですが、その考え方やデザイン、開発を知ってもらえる展示となっています」

「In the Making」の言葉は、リサーチも大切にした制作の過程を含みながら、前へと進んでいく活動の様子を表すものだそう。

「生活により添った衣服を実現していく重要性を三宅(一生)のもとで学び、三宅とはひき続きその大切さについて話をしています。イッセイ ミヤケの会社全体が大切にしてきた考えは新しいふたつのブランドでももちろん変わらず、ひとつが、長く着用してもらえる服であること。そのためには、素材に始まり、妥協のない研究、開発を重ねないとなりません。手にとっていただける価格として実現していくことも大切にしています」

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「TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE」 photo: Hiroshi Iwasaki, © ISSEY MIYAKE INC.

宮前さんを中心とするエンジニアリングチームが手がけるA-POC ABLE ISSEY MIYAKEから紹介されているのは、横尾忠則さんの絵画を再構築するプロジェクト「TADANORI YOKOOO ISSEY MIYAKE」。

横尾さんとイッセイ ミヤケの関わりは1970年代に遡ります。1977年からはISSEY MIYAKEのパリコレクションの招待状を横尾さんが手がけてもいました。

さらに今回は、その当時から三宅さん、横尾さんと交友を深めてきたイタリア人のアートディレクター、ファビオ・ベロッティさんの絵画をモチーフとするニットもIM MENから披露されています。ベロッティさんはテキスタイルの会社を営んでおり、ISSEY MIYAKEにプリント生地を提供してきた経緯があります。

210915_IMI-6.jpg「Making with Fabio Bellotti」。ベロッティ氏の絵画「REAL WOMEN」シリーズがモチーフ。IM MENのチームがタッグを組んで完成させたニット。© ISSEY MIYAKE INC.

「ヨーロッパがロックダウンとなった際にファビオさんが描いていたという絵画を見せていただく機会があり、色使いをはじめ、鮮烈な表現に感銘を受けました」と宮前さん。

さらには、ファビオさんの絵画に横尾さんが参加する、というスペシャルな一着も! 横尾さんはコロナ禍において、制作してきた自身の作品に自作マスクを描く「without corona (当初の名は with coronaでした)」シリーズを続けています。その特別版として、ファビオさんの絵画「SAMURAI」をモチーフとしたブルゾンに、なんと横尾マスクが登場しているのです。

210915_IMI-7-.jpgマスクが描かれたIM MENとTADANORI YOKOO ISSEY MIAKEの特別アイテムは左のブルゾン。photo: Valentina Sommariva, © ISSEY MIYAKE INC.

展示ではほかに、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE「TYPE -I」も。新素材トリポーラス™を素材として活かしたプロジェクトです。

トリポーラス™は、ソニーグループ株式会社が、世界中で年間1億トンも破棄されているという米の籾殻を再利用して開発した素材です。トリポーラス™を練りこんだ糸を用いて、衣服のための開発が重ねられた生地は、地球環境に配慮したマテリアルであることに加え、独特の黒も特色。「ジャンルの垣根を超えた出会いには、いつも多くの発見がある」と宮前さん。

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IM MEN。このコレクションでは、砂糖の製造工程で生じるサトウキビの廃糖蜜を原料として開発された植物性由来のポリエステルを配合した素材が活かされています。photo: Valentina Sommariva, © ISSEY MIYAKE INC.

展示とはいつも、この先に目を向けてのメッセージとなるものです。「In the Making」にも、コレクション紹介に留まることなく、多くのメッセージが込められていました。宮前さんの言葉をもう少しご紹介しましょう。

「ものづくりの熱意を継承するようにして、デザイン、開発を続けていくことの重要性を考えています。服づくりには多くの人々が関わっていますから、工場をはじめ製作の場の動きを止めてはいけません。一度止めてしまったら元に戻すことは難しいんです。コロナ禍によって世の中が一変してしまいましたが、デザインの力でポジティブなメッセージを世界に発信していきたいです。」

「なぜその服が生まれたのかといった背景にも関心を持ってくれる方々が増えていて、これはうれしい状況ですよね。きちんと伝えることができる、そうしたものづくりをさらに続けていきたいと考えているところです」

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photo: Valentina Sommariva, © ISSEY MIYAKE INC.

また、「異なるどのような状況も、繋げていけるはず」と宮前さん。

「さまざまな関係をつなぐ過程で多くの輪が生まれ、その輪が広がっていくという状況も思い描いています。前に目を向けて進みながら、喜びを感じていだける服づくりを実現していきたいと思っています」

宮前さんの話を聞きながら、この日もわくわくしてしまいました。
出会いと、対話と、止まることのない動き。関わるチームの思考が織り込まれるように開発された糸に始まり、衣服が人々の手に渡るまで、プロセス全体としてのデザインに満ちるエネルギーが、伝わってきます。

「In the Making」

会期:~2021年9/19(日)
会場:ISSEY MIYAKE / MILAN (Via Bagutta 12, Milano, Italy)
tel : +39-02-781040
営)10時~19時

*ミラノで展示されている衣服の一部は、現在、IM MEN / AOYAMA (東京都港区南青山3-18-11/tel : 03-3423-1407)、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE (東京都港区南青山5-3-10  FROM -1st/tel : 03-3499-6476)でも紹介されています。
 

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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