「カレ:思い出のアルバム」
シルクが放つ光と365の物語
デザイン・ジャーナル 2010.12.03
Hermèsの「carré d'artiste(アーティスト・カレ)」の第2弾が誕生。第1弾、Josef Albers(ジョゼフ・アルバース)に続いてエルメスが招いたアーティストは、1938年生まれの世界的なアーティスト、Daniel Buren(ダニエル・ビュレンヌ)でした。
その出会いから生まれたすばらしいカレが「photos-souvenirs au carré----カレ:思い出のアルバム----」。パリの造幣局で今秋催されていた展覧会の様子や今回の「アーティスト・カレ」については、「Figaro.jp」でも大村真理子さんの記事で知ることができます。
エルメスのシルクプリント技術とアーティストの出会い。鮮やかな瞬間。The rights for these images are DR.
ここでは、先日来日されていたエルメス アーティスティック・ディレクター、Pierre-Alexis Dumas(ピエール=アレクシィ・デュマ)の言葉を紹介しましょう。
「子どもの頃、祖父のオフィスを訪ねては、シルクのすばらしさを、色やデザインを通して感じていました。祖父は75歳、私は4歳、祖父が私と遊んでくれていたわけですが、私は床に座ってさまざまな絵を切りとり、それらの絵を配置しながら、自分の『カレ』をつくろうとしていたのです......そのときの光景をとてもよく覚えています」
「美とは私たちが日々追求すべきことがらです。美はともすると私たちの手のなかから逃げてしまうものかもしれませんが、幼い頃の感動に立ち戻ることで、再び美を手に入れることができるのだと思っています」
今回のアーティスト・カレは365枚。ビュレンヌが撮りためた写真から22枚を厳選。同じ写真でも周囲のストライプの色が異なっているなど、すべてが世界に一枚のみという、文字通りのユニークピースです。The rights for these images are DR.
「今回、ビュレンヌに連絡をとると、多数の写真を詰めたバッグを手に訪ねてくれました。彼が1950年代から撮りためていた数十万枚もの写真の一部でした」
「建物の一部のように私たちが普段めにしているような光景があれば、私的なものも含まれていました。それらの写真の断片を彼は、彼自身が『ビジュアル・ツール』と呼ぶフレームで縁どっていったのです。撮りためた写真、日々の記憶を、芸術家の目で改めて見る作業でした」
「シルクに光がすいこまれ、さらに輝く光が発せられる。美はシルクとともに存在します」と、ピエール=アレクシィ・デュマ。1つ前のカレと上のカレには、メキシコ、トナンツィントラでの写真が。The rights for these images are DR.
「なかにはビュレンヌの自宅写真もあります。斜めのストライプで一見して部屋とはわからない抽象的な柄になっています(一番上の写真)。彼がソウルで展覧会を行った際に撮られた写真(下の写真)も含まれています。このように細部に焦点があてられたり、カメラのレンズをズームするように細部が拡大されていたりします」
ビュレンヌ作品として知られる8.7cm幅のストライプが一枚一枚に。他にも、旅先の建物、建物や石畳のディテール、花のディテールなどさまざま......。日本でもエルメス銀座店を始め、一部の直営店舗で購入できます。The rights for these images are DR.
「私はビュレンヌに尋ねました。なぜディテールを探すのですか、と。彼はこう答えてくれました。私が生涯行ってきたことと同様のことをしている、と。それはすなわち、『物ごとの抽象的な美しさ』を表現するということなのです」
「抽象的な表現、そして物語。これらのカレはその二つをあわせた遊び心。同時に二つの出会い......芸術家の感性とエルメスの伝統的な感性の出会いともなるものです」
Hermès
http://www.hermes.com/
「アーティスト・カレ」とは別の話題になりますが、
カレつながりで、もうひとつの話題を添えておきます。
「エルメス "J'aime mon carré(ジェーム・モン・カレ)"」
クリスマスブティック、東京ミッドタウンB1F アトリウムに。
12月26日まで。
http://www.jaimemoncarre.com/
Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami




