フィランドデザイン進行形。
「HIRAMEKI Design × Finland」
デザイン・ジャーナル 2010.11.04
「東京は夏みたい。プールで泳げるよね!」。この時期来日する北欧のデザイナーたちと話をしているといつもそんな話題になるのですが、急に冷え込んだ先週、今年はさすがにプール話にはなりませんでした。冷えたドラフトビールよりホットワインの気分。
先週から都内各地で行われているデザイン展やイベントの数々。11月3日で終了してしまう企画が多いものの、ひき続き週末まで、嬉しいことにもっと長く開催される企画もあります。10月の記事でも触れた「HIRAMEKI Design × Finland」は11月7日まで。
3階のOZONEプラザには1960年代にデザインされたVuokko(ヴオッコ)の服が象徴的に。Secto Design(セクト・デザイン)のランプ、ジュエリーブランド、Chao & Eero Jewel(チャオ&エーロ・ジュエル)の品も。会場横のザ・コンランショップ カフェは会期中「イッタラ・カフェ」に。Photo: Daisuke Ohki
アトリウム、ホワイエ、ホール、ギャラリーなど、リビングデザインセンター OZONE内の7つのスペースで同時開催されている「HIRAMEKI Design × Finland」。デザインを国家プロジェクトの中心に置くフィンランドから、企業、グループ、デザイナーが合計なんと64も参加しています。
その規模にもうかがえる通り、会場にはこの国の現在、この国の「ひらめき」がさまざまに。その一つひとつは会場でゆっくり見ていただきたいので、本日は概要といくつかの写真の紹介としましょう。
展覧会のキュレーターを務めたのは、プロダクトデザイナーとして活躍中のHarri Koskinen(ハッリ・コスキネン)とIlkka Suppanen(イルッカ・スッパネン)。彼らが日本に滞在していたオープニングからの数日間、キュレータートークが連日行われるという熱の入れようです。先週末にも覧会の趣旨や出展作品を2人が紹介する「Meet the Curators(ミート・ザ・キュレーターズ)」が行われました。
イルッカ(右)とハッリ(左)。イルッカに取材した何年も前、「休暇は友人とヨットでアーキベラゴ巡り」と言っていたその姿が印象的で、会うたびいつも海をイメージしてしまいます。そして私が長く愛用している腕時計のデザイナーでもあるハッリ。定期的に情報交換をしている大切なデザイナーのひとり。Photo: Noriko Kawakami(次写真も)
キュレーターの2人と会場を巡っていくツアーで、Marita Huurinainen(マリタ・フーリナイネン)の解説をイルッカが。写真の右側に立っているすてきな女性がマリタ。
一瞬、展示作品の多さに圧倒されてしまうかもしれませんが、一点一点を目にしていくと実によく考えられた品々ばかり。いろんな「HIRAMEKI」がぎっしりと......。まずは、小物から家具、テキスタイル、ファッションまで、多種多彩な品々が紹介されている、OZONE3階、パークタワーホールの展示風景写真から4枚を。
木を曲げてつくられる、軽やかで足にフィットするマリタのサンダル。バッグも美しい。2006年にフィンランドの大学を卒業後、日本の美術大学にも在籍していた彼女、レディス、メンズの服も手がけます。Photos: Daisuke Ohki(続く7枚も)
手前のカラフルな品々はAnu Penttinen(アヌ・ペンッティネン)のアートガラス。左に見えるTuukka Halonen(トゥーッカ・ハロネン)の木のペンダントランプはフィンランドの伝統的な屋根板の技術を生かしてつくられています。会場でぜひご覧ください。
うっかり写真を撮り忘れてしまったのですが、マノロ・ブラニク賞を2度も受賞しているシューズデザイナー、Julia Lundsten(ユーリア・ルンドステーン)の作品も同じ会場に。構築的なフォルムと美しい色づかいで、彼女ももちろん将来が期待されるひとり。
「伝統的な品々より現状の紹介を、著名な作品の代わりに現代のクリエーションを選択しています」とイルッカ。「若いデザイナーや新しい企業を紹介することで、フィンランドに対する皆のイメージを一新したいという思いもあった」とハッリ。デザイナーの二人、明日の生活にしっかりと目を向けていて、その視点がキュレーションにも込められています。
「純度の高いミネラルとダイヤモンドの組み合わせや、美しくサステナブルな天然木材のパッケージを用いることなど、真の意味でのエコロジーとラグジュアリーの出会いがKIDEシリーズのコンセプトです」。これはミシーク・コスメティックスの説明から。 「美しさには環境や生活を豊かにする、真の価値があります。しかしその前に、機能的であること。これらふたつのクオリティをあわせもつことが、良い製品であるための条件だと思います」。木の美しいサンダルとバッグを見せてくれたデザイナー、マリタの言葉の一部です。 フィンランドに旅して現地のデザイン見本市を訪ねたような楽しさと発見も多数あります。都市暮らしの家庭菜園愛好家のための現代的なガーデニングキット、100%土に還る天然の堆肥繊維を用いた椅子、ハッリがデザインに関わった表面がテキスタイルのスタイリッシュな火災報知機も。騒音を出さず、野生生物に危害を与えぬ風力タービンの紹介なども。 Artek(アルテック)やmarimekko(マリメッコ)、iittala(イッタラ)を好きな読者にとっては(私も大好きです!)、さらに若い企業、今まさに活動が注目される現地のデザイナーを知るチャンス。時代を超えて愛され続ける北欧デザインも本当にすてきですが、この国の"今"から生まれるデザインの息吹に目を向けることも、どうぞ忘れずに。 なるほどなるほどと刺激を受けながら、ほっとできる空気があったり、さまざまな魅力に包まれたデザインの数々。週末、11月6〜7日には「Meet the Designers」が予定されていて、フィンランドの最優秀若手デザイナー賞に輝いた2名もプレゼンテーションに参加。彼らの「HIRAMEKI」に触れながら、「フィンランドデザイン」のイメージの、アップデートを。 サテライト・イベントとして「フィンランド映画祭2010」デザイナーが飼い犬のダックスフントをモティーフにした「モーリス・テーブル」。ベニヤ天板にオーク無垢材の脚。自由に組み合わせられる色がポイント。Original Habitek Works(オリジナル・ハビテック・ワークス)。
パリのギャラリー・ラファイエットで購入できるMSCHIC(ミシーク)コスメティックス。天然ミネラルにこだわった「KIDE(キデ)ミシーク」はダイヤモンドパウダーを含むハイライターやファンデーション。白樺材ケースは薄紙が巻かれ、赤い紐で留められて店頭に。
こちらは1階、ギャラリー1の展示風景。手前の白い椅子と白い棚は段ボールの新素材応用実験から生まれた素材リボードを使用。デザインはJarvi & Ruoho(ヤルヴィ & ルオホ)
ギャラリー1から。フェルトを素材とする浦田愛香さんの品々も紹介。11月6日の17:00〜17:20、浦田さんのプレゼンテーションが3FのOZONEプラザで。
ギャラリー1、Magi & Co(マギ・アンド・コー)の「みんな農園のオーナー」。
素材の無駄づかいをせずに効果的な会場をどう構成するか、時に議論も戦わせたという二人。キーとして白いバルーンを選択。スマートな方法です。「スノーボールのようにも見える?」とハッリ、ちょっと得意気(?)でした! Photos: Noriko Kawakami
「HIRAMEKI DESIGN × FINLAND」
11月7日(日)まで、リビングデザインセンター OZONE
http://www.hiramekidesign.com/japan
Harri Koskinen
http://www.harrikoskinen.com/
Ilukka suppanen
http://www.suppanen.com/
(http://www.eiga.ne.jp/finland-film-festival)や
「フィンランドの民族音楽」(http://www.mplant.com)も。

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami