PEN デザイン特集号で
エルメスの家具、ベアールなどなど
デザイン・ジャーナル 2011.06.13
ここのところ、21_21 DESIGN SIGHTのこれからの展覧会の準備や、6月24日開幕の「WA:現代日本のデザインと調和の精神」展(武蔵野美術大学 美術館・図書館)の準備にご一緒していました。ミラノデザインウィーク(ミラノサローネ2011)やデザインのいくつかのテーマについての座談会などにも参加したり。
あわただしくも刺激の多い日々を過ごしていたら、ああ、コラム前回からもう1カ月が(準備中の記事はいくつもあるというのに、です)......! 失礼いたしました。
さて、今日の話題は『PEN』のデザイン特集号です。一般書店では明日(6/14)までの販売ですが、デザイン好きのフィガロの読者にも、ぜひお伝えしたくて......。
『PEN』ただいま書店に並んでいる最新号。表紙はJaime Hayón(ハイメ・アジョン)の空間です。6月15日以降もバックナンバーとして購入可能です。
まずはエルメスのホーム・コレクション。すばらしい家具やファブリックばかりで、情熱と技の双方をもって丁寧に、誠実に、ものづくりに向かう姿勢が伝わってきます。
デザインを手がけたのは「デザイン・ジャーナル」でも以前にご紹介したEnzo Mari(エンツォ・マーリ)とAntonio Citterio(アントニオ・チッテリオ)、Denis Montel(ドゥニ・モンテル)とÉric Benqué(エリック・バンケ)......。
エンツォ・マーリがデザインした家具から。しっとりと重厚なカナレットウォール材の、みがきあげ。ほかに脚に皮革を用いたテーブルなど、さすがエルメス、縫製そのものも美しい品々ばかり。感動しました。写真はミラノサローネ2011の会場より。
アントニオ・チッテリオがデザインした優雅な家具。「X」のかたちの脚が特色です。『PEN』ではこの巨匠ふたりのほか、エルメス、メゾン部門ジェネラル・マネージャー、Hélène Dubrule(エレーヌ・デュブリュール)さんも取材、エルメスのホーム・コレクションの背景についてお教えいただきました。エルメスの皆さんもすてきな方ばかり。
皮革ばりのソファはもちろん、ライ麦藁の寄木細工を活かした家具など、これらの家具のクオリティがまず、私の心に響いてくるものばかりでした。現代のアルチザンスピリットその醍醐味を改めて強く感じます。
関わった人々の情熱がそのクオリティに結実しています。世界的な展開は今秋からだそうですが、日本でコレクションを目にできる日を、心待ちにしているところです。
ジャン=ミッシェル・フランクの家具から。サイドテーブルに活かされているのは、今では貴重となってしまったライ麦藁の寄木細工。美しい光が放たれているようです。
最近のプロジェクトでは、ハーマンミラーの「SAYL(セイル)チェア」がすでに話題ですね。アメリカ、ジョウボーンのスピーカー「JAMBOX」も日本で購入できる品のひとつ。他にもプーマの新パッケージ、ISSEY MIYAKEの腕時計、などなど。
「セイルチェア」。日本でも発売になったばかりのワークチェアで、「つり橋」構造の原理に着想を得たという支柱に特色です。フレームのない背ですが、全体で体を支える工夫が。¥56,700〜¥85,050 http://hermanmiller.co.jp/ 来週23日、ハーマンミラーストア(丸の内)でオークションが。ベアールの品も出品されるそう。http://www.hermanmiller.co.jp/aboutus/hmnews110606.html
スピーカーとしてのクオリティやプロダクトとしての堅牢さを求める工夫と構造が、プロダクトの強い個性につながっている。うーん、よく考えられています。ある企業の「パートナー」として、じっくり時間をかけてデザイン開発に向かうのがベアール流。
ジョウボーン「JAMBOX」。わあ楽しい! 「モノの感情に面を向けた」とベアール。¥19,800(実勢価格)http://www.trinity.jp
環境を考慮したプロダクトデザインの実現にも、積極的にとり組んでいます。『PEN』にも書きましたが、「現代のデザイナーはかつてなく多くの役割を担っている」と彼。今後にも多いに期待しましょう。
『PEN』掲載の写真から。ミラノデザインウィーク中、ジョウボーンの会場でお会いしました。リンゴを手に颯爽と登場したベアール。気になるかたはどうぞ、『PEN』誌面でじっくりご覧ください。Photo: Frankie Vaughan, Courtesy of PEN
私が取材させていただいた記事以外にも、掲載されたプロジェクトは重要なものばかり。見に行きたいと思っているオランダ、グローニンゲル美術館のリノベーションについて、気になるAesop(イソップ)のプロジェクトについて、そして、そして......。
「発想に注目したいクリエイター」にはほかにミラノ、ロッサーナ・オルランディでも紹介されている長坂 常さん、要チェックのMartino Gamper(マルティノ・ガンパー)、Alejandro Aravena(アレハンドロ・アラヴェナ)らのお姿も。ちなみに長坂さんにとって「デザインは、"知の更新"」だそうです。やはり気になりますね。
さまざまな課題を抱える時代のなかで、より幅広く、柔軟に、しっかりと未来に向けられた目。たとえ大変な時代であったとしても、前向きに進んでいく道筋をつくっていける。未来につながる発想の数々に、私自身、いくつものヒントをもらいました。

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami